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What‘sawonderful another world ! ~なんて素敵な異世界なんだ!~  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第2章

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第118話 使用料契約


 まさか錬金窯をゲットできるとは思っていなかったが、話している間に気になったことがあった。


「良い買い物をさせていただいてありがとうございました。

 お話の中で俺が正式な勇者と仰っていましたが、そうでない勇者もいるんですか?」


「何だ、知らなかったのか? 転生者ってめんどくさいヤツらを」


「転生者ですか? それは……前世の記憶があるってことですよね?」


 カリンのことは知っていたが、どうもギルマスの口調から転生者を嫌っている節があるので知らないふりをして聞いてみた。


「そうだ。自分にはチートがあるから仕事をさせろと、君のように錬金術を使いたがった」


「スキルがないのにできるチートですか? そう言うのがあるんですね」


「すぐ習得するからとジョブが勇者なだけに断れなくてな。当然のことながら失敗して魔法が発動しなかったし、スキルも出来なかった」


「そうですか……。

 でも向き不向きもありますし、勇者なのだから戦闘向きだったんでしょう」


「いやどうも戦闘のほうも空回りしていたようだ。

 俺はまだ本気を出していないだけだとぬかしていたが、ウチだけでなく他のギルドでもやらかしていてね。ただその時は知らなかったので、どうしてもというから錬金布を売ってやったら例の詐欺事件でヒトが死んだ。本当に最悪だったぞ」


 その事件はギルマスの若い頃でかれこれ30年ほど前になるが、今でも転生者のめんどくさい話はちょいちょい聞くらしい。


「聖女だと言い張るヤツも多いそうだ。大体は治癒能力があるんだが、みんながみんな王子を紹介しろと言い出す。自分は王妃になるのだからなんてほざくんだ」


 何だそれ? まさか乙女ゲームと勘違いしているのか?


 でもその程度の治癒術士ならそれなりにいるので、聖女として認定できなかったそうだ。聖女認定にはいくつかの定めがあって、その1つに聖属性の攻撃魔法が出来ることが挙げられている。エリザも『ホーリーアロー』と「ホーリーランス」の2つが使えた。俺の『聖焔』の方が効果が高いから基本的に俺が攻撃していたけど。



「でも俺は冒険者ギルドでそんな話はされませんでしたが」


「それは君がカイブライト王国で正式に叙勲された勇者だからだ。聖剣も借与されているだろう?」


「ええ、いつか自分の聖剣を見つけて、返却したいと思っています。錬金術で作ってみるのも一興ですよね」


 するとギルマスは食いついてきた。


「何っ! 聖剣を錬金するのか?」


「原理としては出来ないわけではないですよね? 問題は素材ですが。どんなものが必要なのか見当もつきません」


「そうだな、神の力がこもった剣など簡単にできる訳ないか」


 そうやって座り直す。抜け目なさそうなおじさんではなく、ただの錬金術マニアのようだ。


「君だったら何がいいと思う?」


「さぁ? ドラゴンの鱗とか、フェニックスの羽とか、ユニコーンの鬣とかですかね?」


 じじいの国の魔法使い(フィクション)が通う学校の杖に仕込みそうな何かを言ってみた。


「ふむ、しかしユニコーンは数少ないが、処女であれば捕らえることが出来るのでそこまで貴重かね?」


「問題は相性です。女性勇者ならよくありませんか?」


「なるほどなるほど」



 ギルマスは錬金術の話になるとどうやらご機嫌になるようで、聖剣には最低でもミスリルを使うのがよいと言われた。まぁ俺もそれくらいは思っていたが、見当もつかないって言った手前笑って聞いておいた。この国にいる間に少しでも味方がいる方がいいからな。


 その後、水あめのレシピと現物を納品して、今後こちらで作ってもらいたい旨を話す。


「良かったら、まずは試食を。蜂蜜を食べるようなつもりでお召し上がりください」


 俺が小皿に乗せた自作のクラッカーの上に水あめをスプーンにすくって渡すとギルマスは貴族なので少し躊躇していたが、アイリーンは躊躇なく食べた。どうやらそのくらいは信頼してもらえているようだ。


「甘いです! これ、おいしい! 素晴らしいです! ユーダイ様」


「ありがとう。この世界には甘みが少ないから作ってみたんです。よかったら他の職員の方にも分けてあげてください。」


 果物や蜂蜜以外に強い甘みを持つ者はないため、ギルド中が大興奮に陥った。


「このクラッカーもさっくりしていておいしいですね」


「ああ、自作の膨らし粉を入れています」


 重曹のことだ。重曹は別名『炭酸水素ナトリウム』である。確か海水と石灰から電気分解して作れると聞いたことがあったのだ。分量や手順はわからなかったが最終的な出来上がりはしっかりイメージできるので、これも錬金布で錬成した。


「こっちにはこんな膨らし粉はないんですか?」


「はい、ありません。初めて食べる触感です」


 そうか……探すのが面倒だったので自作しただけだったんだが、これも登録しよう。


 そんなわけで俺は膨らし粉のレシピも登録した。



「2つも新規レシピが出来るなんてすばらしい。やっぱり当代勇者は違う!」


 そう言ってギルマスに両手を握られるぐらい感謝された。


「今回登録したものはそのままでも販売できますが、これは材料と考えています。それでレシピ買取ではなく、売れた分だけ1割の使用料を俺に振り込まれる形でいかがですか? 2つとも身近な材料でできるものですし、それほど高額にしなくてもいいと思うのですが……」


 使用料にしたのは安売りするつもりがないからだ。

 この世でないモノを作ってもどのように売れるかわからず、金額が安く見積もられてしまう。だから売り切りではなく、使用料にしたのだ。

 まぁカリンに言われるまで、普通に売るつもりだったけどな。


「いや膨らし粉はともかく、甘みはとんでもない注文が来る可能性があります。ある程度の値段にしましょう」


「あと飢饉などで原材料が手に入りにくい時は減産してもらって構いません。甘みより人命の方が重大ですから」


「こちらは構いません。むしろそれでよろしいんですか?」


「ええ、それに最初に一番たくさん買うのは俺ですから。いちいち自作するのが面倒だったんです」


 俺がいくつかのお菓子を作ると話すとそれも納品して欲しそうだったが、こちらは商業ギルドに卸すというとガッカリしていた。サンプルぐらいなら持って来ると言うと、皆が俄然張り切ってくれたので、好感度が上がっているようで嬉しい。


 そうして無事1割の使用料を貰うことになった。

お読みいただきありがとうございます。

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