第10話 魔族たち
話が決まったので、彼は自分の仲間である魔族たちを紹介してくれた。
「みんな、待たせてゴメン。この子は前世俺の妹がお世話になった人だから、連れて行くことにする。バルティス王国まで連れて行って、その後希望通りの場所に送るから。しばらくかかるけど、それまで仲良くしてくれ。くれぐれも殺さないでくれよ」
「ふぅん、知り合いだったんだ」
「俺は面識がなかったけどな。あってもわかんないか。転生してるし」
「とにかくしばらくはアタシたちと一緒な訳ネ。わかったわ、アタシはビアンカ。よろしくネ」
白髪長身のオネエなお兄さんはどうやらフレンドリーな質らしく、にこやかに私に自己紹介をした。
「レナです。どうぞよろしくお願いします」
「先に言っておくけど、ユウはアタシたちのものだから。手を出したらダメヨ」
そ、それって夢の魔族ハーレム♂ってことですかぁ?
ヤダぁ、よだれが出そう。いやさっきの話から考えても、自分の話題を作品にしたら怒りそうだ。心の中の癒しにしておこう。
「わたしにユーダイ様はもったいないお方ですから。全く気にしないでください」
「ならいいのヨン」
どうやら魔族の中でも序列があるようだ。たぶんビアンカさんが一番上なんだろう。彼の言葉でコケティッシュな金髪美少年もめんどくさそうに自己紹介を始めた。
「ぼくはフィレス。フィーでいい。ぼくらの邪魔しないように」
「わかりました」
「我はエディ」
黒髪の寡黙な青年は名乗っただけだが、とりあえずは受け入れてくれたようだ。
「俺はユーダイ。さっき俺の本名を口にしていたけど、君も本名は誰にも教えないことだ。名を使って支配するものもいるからね」
わたしはハッとした。思いっきり人前で言ってしまったよ。
「ごめんなさい。気を付けます」
「あれくらいなら大丈夫だ。俺はイギリス人のハーフでミドルネームが複数ある。これは前世の家族しか知らないんだ。だから簡単に支配されたりしない。でもそういう意図で使われるのも癪だろ?」
「それならわたしもレナって名前、使わない方がいいですか?」
「うーん、そうだな。気になるならそうしてもいいと思うけど。例えば名前を操るヤツがよく使うのが呼び出しの魔法だ。でもレナってかなりありふれた名前だろ。君の場合はさっきの村の名前を付ければ特定されるかな」
「村にはレナって名前の人、他にもいますよ。それで父さんの名前で見分けていました」
「なるほど、じゃあ村と親父さんの名前を口にしないことだ。それでレナは使える。あんまり偽名は使わない方がいい。バルティス王国には真贋を見極めるスキル持ちが確実にいるから。ただ素通りする冒険者ならともかく、定住を考えるならなおさらだ」
そっか、自衛のための嘘が信用問題に引っかかるんだ。今のところバルティス王国での定住まではまだ考えられないけど、その可能性はゼロではない。気をつけなくちゃ。
「……そろそろ帰りたい」
無口なエディさんがボソッと言う。結構長話で待たせたものね。
「そうだな、そろそろ行こう。ひと気が無くなったらみんな小さくなってくれ」
小さくなる?
ユーダイ様たちはそのままスタスタと歩き始めたので、わたしは慌ててついて行った。しばらく歩いているとビアンカさん、フィーさん、エディさんの姿が変わっていた。全員女性になっていたのだ。
「ええっ! なんで?」
元々典雅なヒトだとは思っていたけれど、ビアンカさんは存在がまさに女王だった。侵しがたい風格と共にたおやかさを感じる。彼女が王ならばかなりの賢王だっただろう。
フィーさんはコケティッシュでスレンダーな美少女で前世の世界ならメスがき属性で人気を博しただろう。しかも金髪で青い目だったのが銀髪に紫色の瞳に変わっている。その色の方がずっと蠱惑的だ。だけど彼女にわからせは相当難しいと思う。
何より一番大きな変化だったのがエディさんで男性だった時の寡黙で潔癖そうな印象から、振るいつきたくなるような妖艶な美女に変化していたのだ。その優美なボディラインは女のわたしですら引き付けられた。
みんな美しすぎる! BLハーレムじゃなくなったけど、これはこれでイケる! わたしは美しいものに弱いのだ。
「ナンでって、女の体は華奢になるからネ」
小さくなるってそういうことか。
「じゃあ男性になるのは?」
「モチロン体格のイイ方が、戦闘力が上がるからよ」
ビアンカさんの言葉にユーダイ様が補足してくれた。
「ほら、背が高い方がリーチは長いし、筋肉量が多い方が力を強く出せるだろ。上位魔族はね、その場の状況や好みで自由に性を着替えるんだ」
「いやでも最強の女魔王とかいるじゃないですか」
本の中でしか、会ったことないけどね。
「もちろん女体だからって、彼らが弱くなる訳じゃない。だけどたった数センチの差の攻撃が入るかで勝敗は決まることもあるだろ。あの偽勇者たちの中に転生・転移者が混じっていたら、時々とんでもないチート野郎がいるからね」
「ユーダイ様みたいな?」
「俺は勇者チートを使ってないんだ。元の世界から持っているスキルと魔法だけでなんとかなるから」
「それって元の世界から魔法が使えたんですか?」
あるわけないよねと思って笑ったら、ニコッとされた。
まさかそんなことが本当にあるの?
お読みいただきありがとうございます。




