激動の1日
翌日から王女たちへの王太子妃教育が始まった。その時間は各国王女に付けられた王子や同じ年頃の準皇族らは執行部へ籠もり、スケジュールの調整などを行っている。
『うちの王女は完璧だよ。流石は王女の貫禄で、暇さえあれば読書をし、執事の私と解釈を論じる才女であるよ。』
(うちの王女は、暇さえあれば地図みて他人の恋路をかたってるさ‥)
『うちの王女は、完璧なまでの淑女だよ。空いた時間には刺繍を刺しているよ。』
(うちの王女はチェスの駒をデコってるさ‥)
『うちの王女はさ、いかにも王女って雰囲気は全くないのだけど、ふわふわとしてて天使のようさ。最高に癒やされるわぁ。』
口々な自分の付いた王女について話す王子たちを横目に離れたソファに座って聞いているエドワード。
『‥俺だけがハズレかよ。』
『エド』
紅茶を片手に横に腰を下ろしたのはエドワードの従兄弟でもあるラインハルト。
『どうした?そんな浮かない顔をして。そういえばお前の所はヴェルヴァス王国だったよね?あそこの姫は滅多に社交の場に出てこないとかで、期待が膨らんでいたけど、期待通りの美女であったな。みんな口を揃えて言ってたぞ。』
『ふん、代われるものなら代わってやるさ』
睨み付けるエドワードに
『何か問題でもあったのか?』
『むしろ問題しかないっての!』
髪をかきあげ頭を掻きむしるエドワード。
昨夜の殿下への面会の話しをすると
『クックックッ!笑っちゃ駄目だけど笑えるな。パスか(笑)』
楽しそうに笑うラインハルトを睨み付ける。
『まあまあ、その姫がお前で良かったよ。ほらみてみろ?みんな必死だろ?自分の姫が王太子妃になれば執事を努めた自分も恩恵に預かる事が出来る訳だ。今後の出世にも響くだろうさ。その点お前は、既に安泰だろ?』
そう、この国には8人の王子がいるが正妃の産んだ王子は第一王子のフリードリヒと第三王子のエドワードだけであった。
『それならお前ももっと必死になれよ。』
『私?私は公爵令息だからゆくゆくは公爵を継ぐことなる。日常業務がこの3ヶ月は王女のお守りとなっただけさ。』
気楽に答えるラインハルトに大きな溜息をついた時、第五王子が慌ててソファに座り込んだ。
『エド!お前こんな所に居て大丈夫?お前の所の王女、既に部屋に戻って行ったぞ!』
驚き顔を合わせるエドワードとラインハルト。
『に、逃げたのか?』
恐る恐る尋ねる。
『逃げたというか、終わったとか言って‥って逃げたのかな?』
エドワードは、第五王子が話し終える前に席を立ち、王女の部屋に向かった。
『王女!』
ノックもせず入ってきたエドワードにルリネットは
『まあ、ノックも』
ルリネットの言葉を待つことなく
『貴女は何をしておいでなのですか!』
興奮し声を上げるエドワードとはうらはらに
『何って、お茶を頂いてますのよ?』首を傾げるルリネット。
『貴女は今、試験中ですよ。まるっと2時間はあの問題に皆さん全力で挑まれている。そんな中貴女は‥他の王女がやってる事を貴女がしなくてもいい理由はどこにあるのですか?』
息を切らしながら問うエドワードに
『だって終わった者から帰って良いと聞いたわよ?』
すかさずエドワードは
『貴女の終わったとは、出来る問題だけを解き、後の問題には解く努力もせずに終わったと言っているだけではないか!一国の王女であれば、出来る出来ないではなく、最後までやり切る姿勢が大切なのでは?』
小さく溜息を漏らすルリネットを睨み付け、エドワードは煩く扉を閉め出て行った。




