おまけ 寡黙な掃除人
おまけです
ウィリーが川で亡くなったという知らせが街に広まった夜。
街の空気は、昼間よりもさらに重く沈んでいた。
人々は早々に家へ戻り、
通りには灯りがぽつぽつと残るだけ。
そんな静まり返った路地裏を、
ひとりの男が歩いていた。
――喪服の男。
黒い布のような衣が風に揺れ、
足音はほとんど響かない。
まるで影そのものが歩いているようだった。
男は川沿いの道に立ち止まり、
ゆっくりと水面を覗き込んだ。
川の流れは穏やかで、
昼間の騒ぎが嘘のように静かだった。
男はしばらく動かなかった。
ただ、じっと水面を見つめていた。
やがて――
男は小さく息を吐いた。
「……相変わらず……手がかかる奴だ…こんなとこまで汚しやがって」
その声は驚くほど静かで、
しかしどこか“諦め”のような響きを含んでいた。
男はしゃがみ込み、
川辺の石をひとつ拾い上げる。
その石には、
乾きかけた泥と……
ほんのわずかな、赤黒い染みがついていた。
男はそれを指先でなぞり、
目を細めた。
「……………もう…あまり時間がない……
アイツよりも…俺が先に…手に入れる……どんな手を使っても」
風が吹き、喪服の裾が揺れる。
「まずは、見極める……あいつが何を選んだのか、
何を“呼び寄せた”のかも」
男は持っていた石を川に放り込んだ。
ぽちゃんという音がして、川の底に沈んでいった。
そのまま、川の向こう――街の中心部を見つめた。
その視線の先には、
この国で有名な精霊術士がいるスクルディガー家の屋敷がある。
喪服の男は小さく舌打ちを鳴らした。
「……ッチ、忌々しい家だ。
今すぐ消してやりたい……」
男はそう呟くと、
ゆっくりと踵を返した。
歩き出した瞬間、
その姿は闇に溶けるように薄れていき――
次の瞬間には、
もうどこにもいなかった。
ただ、冷たい風だけが
川辺に残されていた。
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