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再編の針と失われた縁  作者: 神田長十郎
第三章 変化の兆し
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第六十ハ話 お願い

「さて……長い休憩になってしまいましたね。

そろそろ戻りましょうか」


すっかり元通りになったグウェンは、

そのまま階段のほうへ歩いていく。


(どちらにしてもマイペースなのは変わらないんだな)


先ほどまでのグウェンは自由奔放というか、破天荒。

こちらはこちらで、つかみどころがなく、

何を考えているのかいまいち掴みづらい。


階段の壁に手をかけ、一歩降りかけた時、

「あっ」と何かに気づいたように振り返る。


「そうだ。ここで見たことは……あまり口外しないでほしい。

お願いできるかな?」

「あ…はい、わかりました」


照れくさそうに笑うグウェンに、紡も思わず顔がほころんだ。

(グウェンさんでも恥ずかしいんだな)


精霊術の代償。とは言っていたが、

記憶がないといった様子はない点から、

人格というより“性格”が変わってしまっているだけのようだった。


(感覚的には、若気の至り。みたいな感じなのだろうか……)


だが、紡の胸には小さな違和感が残っていた。

(……でも、それだけでネロとレオンが焦る理由ってなんだ……?

貴族。しかも公爵の人だから、……まぁいろいろあるのだろうな。

……やっぱり世界が違うんだな)


階段を下りながら、ネロが心配そうに声をかけた。

「……グウェン様。お戻りなるのはよいのですが……

今日はもうお休みになられたほうが良いのではないですか?」


「フフ……本当にネロは心配性だね。

平気ですよ。もう落ち着きましたし。

それに……これから“やらねばならないこと”も増えてしまいましたので」

「やらねばならないこと、ですか?」

「えぇ。なるべく早めに対策を――」


「おう!兄ちゃん。もう話はまとまったのか?」


最後の階段を降り切ったところで、

店主がカウンター奥から声をかけた。


「えぇ。おかげさまで。

本日は色々と、ご迷惑をおかけしてしまいましたね」


その瞬間、酒場の空気がシン……と静まり返った。


店主が眉をひそめる。

「ど、どうしたんだ兄ちゃん。だいぶ、その……雰囲気が変わったな」

「あぁ……どうぞお気になさらず」

「いや、無茶言わんでくれ」


(確かに、気にするなと言われても無理な話だよな)

紡も思わず店主側の気持ちになって頷いてしまった。


そうこうしているうちに、今度は常連客達に囲まれ

次々と声をかけられた。

「ホント…どういうことだ……こりゃあ」

「まさか……兄ちゃん……お貴族様だったのか?!」

「はは、すげぇな。一瞬気づかなかったぜ」

「帰る前にもう一杯だけ付き合ってくれよ!」


そしてあっという間にグウェンはカウンターに座らされ、

その後も店主や常連客から質問攻めにあっていた。


どの質問にも笑顔でのらりくらりとはぐらかしていたが、

やがて小さくため息をつくと、後ろのネロに目線で合図を送った。


するとネロはつかつかとカウンターに近づき、

ドシャリと重みのある袋を置いた。


「……なんだ?これは」


「本日は、僕のせいで皆さんにご迷惑をおかけしてしまいましたからね。

あなた方への感謝の気持ちと…迷惑料を少しばかりですが。

どうぞ、お受け取りください」


それを聞くと、店主の中身を確認し、

みるみる顔を青ざめさせた。慌てて袋を突き返す。


「こ、こんな、こんな大金受け取れねぇよ!」

「いえいえ、どうぞお受け取りください」

「で、でもよ――」


店主がなおも躊躇う。

グウェンは静かに目を伏せ――

そして、ゆっくりと顔を上げた。


「……でも受け取ってもらわないと……困るんですよね」


グウェンの空気が、はっきりと変わった


「それとも……これでは足りませんか?


――あなたたちの“記憶”を買うには」


その一言で、酒場は凍りついた。


優しい声色なのに、

背筋が凍るような“壁”があった。


「……できれば、これで納得していただけませんか?

僕としても、せっかく仲良くしていただいたのに……

これ以上、面倒ごとには巻き込みたくはないんですよ。ね?」


遠回しの脅し。

そして、これは迷惑料ではなく――口止め料だ。


「わ、わかった……」


店主の返事に、グウェンは満足げに微笑んだ。

ゆっくりと立ち上がり、出口へ向かう途中で

一人の男の前で立ち止まった。


「え……?」


目の下に濃い隈を作った男が怯えたように顔を上げる。


「あなたには面白いお話をたくさん聞かせていただきました。

お名前をお聞きしてもいいですか?」


「あっ……俺は……ウィリー。ウィリー・ペリドットだ」


「ウィリー。なるほど。ありがとうございます。

ではウィリー。これは僕からの“最後のアドバイス”です」


グウェンは男の耳元に顔を寄せ、

小さく何かを囁いた。


ウィリーの顔が、みるみる青ざめていく。

グウェンは目を細め、微笑んだ。


その目はほんの一瞬だけ赤く揺らめいた


「では……皆さん。これで僕は失礼しますね」


そう言うと、振り返ることなく出口へ向かい、

あっさりと去っていった。


その背中は、

もう誰にも触れられないほど“遠かった”。


紡も後について店を出るとき、最後にちらりと店内を見た。

店主も常連客もどこか寂しげな顔をしていた。


そんな紡も、理由のわからない寂しさだけが、胸に残った。

グウェンは公爵家で金には全然困ってないので、

なるべく話し合い(金)で解決しようとする傾向にあります。


実はこういうところは変わらないのかもしれないですね。


~~

投稿が遅くなってしまいました。


というのも世間ではGWおわって、

やっと自分の休みになったので

ため込んでた動画やらゲームやらしながら

楽しんでたら眼精疲労で何もできなくなりました‥‥


皆様も大事な大事な目ん玉を、十分休ませてあげてください。


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