第六十六話 引き寄せられるトラブル
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「……と、まぁ? そんなこんなで
俺はどこに行っても慕われてしまう、
隠せないカリスマ性にあふれているというか……」
グウェンが胸を張って語り終えた瞬間――
沈黙。
ぽかん、と口を開けたまま固まる紡と鈴木。
フィーロは無表情のまま瞬きすらしない。
ネロはこめかみを押さえて震えていた。
最初に声を発したのは紡だった。
「……いや、はい……グウェンさんがすごいってのは
わかりました。色々と……」
「なんだよ、なんか煮え切らない言い方するな」
思っていた反応と違ったのか、グウェンは不服そうな顔をした。
「いや……いつものグウェンさんと、雰囲気違いすぎて……
正直どう反応するのが正解なのかよくわかんない、というか……」
遠慮がちにと答える紡に、賛同するように鈴木も頷く。
「まぁ……確かに。僕もまさか、あの噂の出所がどちらもグウェンさん本人だとは、
思いもしませんでした……普段のグウェンさんだと考えられないというか……」
「おい、それどういう意味だ?褒めてんのか?貶してんのか?」
「グウェン様……」
ネロは深く深くため息をついた。
「なんだよネロ。お前は感動したか?」
「してません!!」
ネロの怒号が店内に響き渡る。
「今の話にどこに感動する要素があったんですか!?
さっきから黙って聞いていれば…
…好き勝手やりすぎです……!!」
「本当に悪かったって!反省してる」
悪びれる様子もなく間髪入れずに謝罪をするグウェンに、
ネロは頭を抱えた。
「そのお言葉、今までに何度もお聞きしてますが……
その反省を今後に生かしてほしいです……」
ネロはさらに続けた
「それと……川に入るな、という忠告
……あれは何ですか?」
「なんだ、って……
俺はただ優しく忠告しただけだろ?」
「優しく……?脅しとかではなくて?」
「いやいや、どこが脅しなんだよ。考えすぎだろ。
俺はただ事実を伝えただけだぞ?
ほら、俺、実際に入ったし。昼間だったけど」
「入らないでください!!」
紡はそのやり取りを見ながら、
心の中でそっとつぶやいた。
(……この人、ほんとに“あの”グウェンさんなのか……?
ギャップがすごすぎる……)
その時、ずっと黙って聞いていたレオンが、
真剣な声で口を開いた。
「あぁ……グウェン。
楽しそうなところ悪いんだが……」
恐る恐る確認するように尋ねる
「その……大丈夫……なのか?お前…」
「……何がだ?」
グウェンは首を傾げる。
レオンは言い淀みながら続けた。
「いや…………さっきの話…まさか、使ってないよな?
精霊術を……」
グウェンは一瞬だけ目を細めた。
「……俺が精霊術を使ったら……ダメだとでもいうのか?」
「当たり前だろ!そんな状態で精霊術を使ったら…!」
「アハハハハハハハハハハッ!!!」
突然、グウェンは大声で笑い出した。
ひとしきり笑うと、涙を拭いながら、楽しげに言う。
「あ~ごめんごめん。大丈夫だ、レオン。
使ってないよ……」
安心させるように笑顔を向ける。
その笑顔は――いつものグウェンの笑顔と同じだった。
「……俺は、”視えた”結果を伝えただけだ………」
まるで自分に言い聞かせるように。最後にそう呟いた
「そんな事より、レオン。俺のコートはどうした?
お前が持ってんだろ?」
空気を切り替えるように言うと、手を差し出す。
「……へ?」
レオンは差し出された手を見つめたまま固まった。
沈黙
レオンの困惑する顔を見て、
グウェンの表情に焦りが浮かぶ。
「……おいおい、どうした?」
「……いや、俺はネロが持ってきてるとばかり……」
レオンはネロを見る。
ネロも困惑したように言った。
「何言ってる。レオン、
お前があの盗人を尋問してからずっと持ってただろう」
「え・・・?」
「は・・・?」
全員かその場で固まった。
その時気づく。
――誰も、グウェンのコートを持っていない。
「ん?レオン?嘘だよな?まさか……」
グウェンが覗き込むと、
レオンの額には大量の汗が浮かんでいた。
震える声で呟く。
「……どこかに置いてきた……」
――
―
「馬鹿お前!!どこに置いてきたんだよ!
俺の財布と指輪とコート!!!」
「レオン!貴様!どこまでは持ってたんだ?!思い出せ!」
グウェンとネロがレオンに詰め寄る。
「え、と。確か……路地に入って……冒険者ギルドに行くまでは持ってたはず……」
「じゃ、じゃあ冒険者ギルドにあるのか?!」
「いや…………その前から持ってたか……正直自信がない」
思い出そうとするほど、レオンの声は小さくなっていく。
「はぁぁ?!お、お前。失くしたのか?!俺のコート!」
「も、元はと言えばグウェン!お前が最初に無くしたんだろ?!」
「はぁぁ?!それとこれとは話が別だろ??!」
鈴木が冷静に提案する。
ネロはレオンを指さしながら言い放った。
「そうだ!レオン今すぐ走って見てこい!
アマノ、念のためお前も行け」
「え?!なんで俺?!」
「俺とフィーロはグウェン様のそばを離れられん。
鈴木は体力的に無理だ。消去法でお前しかいない」
「全然納得できないんですが!」
「いいから、さっさと行け」
ネロは二人を追い出すように階段へ押し込み、
転がるように降りていった。
騒がしい空気の中――
一人、グウェンは口元を押さえながら
ぶつぶつと何かを呟いていた。
「……俺は”視たんだ"……確実に
……また変わった……運命が…」
そして、何かの結論に至ったように、
絶望とも興奮ともつかない不気味な笑みを浮かべた。
「ハハッ……そうか…やはりあの子が……
フフ……ようやく……」
「みつけた」
閲覧いただきありがとうございます。
皆さんGWはいかがでしたか。
私は仕事でした。
ハハ
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