第六十五話 噂になるまでの経緯③
しばらくすると、
昼間から酒を求めてやってきた常連客たちが
ぽつぽつと店に入ってきた。
そのうち、ガタイのいい男の集団が、
カウンターに座っているグウェンを見ると、
薄笑いを見せながら近づいてきた。
「おい、見ろよ。
こいつさっきの川の奴じゃねぇか!」
「ん?」
グウェンが声をかけらた方に顔を向けるも
見知らぬ男が立ってた
「誰だ?お前?」
「俺達、さっきお前が川に入っているのをたまたま見たんだよ。
馬鹿な奴がいるなぁってな!」
男たちは下品に笑い声をあげる。
「なぁ?川に入って何してたんだ?」
「その歳で川遊びでもしてたのかな?ん?」
グウェンはそんな男たちを一瞥し、
興味がなさそうに、カップに口をつけた。
それでもしつこく絡んでくる男たちに
見かねた店主は、追い払うように手を払った
「おい、いい加減にしろてめぇら、
酔って絡みてぇだけなら余所行きな」
「なんだよ、心配してやっただけだろ?
なぁ?どうだったんだよ。この時期に入る川は。
感想聞かせてくれよ?」
不躾に近づいてきた男に対して、
グウェンはフッと笑う。
その男の方へ向き直ると、
へらへらとした笑顔を向けた。
「いや、本当に!この時期に川に入るもんじゃないな!
寒くて死ぬかと思ったよ。
お前らも、気を付けたほうがいいぞ?
特にお前」
グウェンは絡んできた集団の中にいた、
目の下に濃い隈がある男を指さす。
「最近、女に告白してこっぴどく振られたみたいだな。
……お前も、川に入るのはやめた方がいいな。
特に夜には。寒いぞ?死ぬほど」
そう言った瞬間、ざわりと店の雰囲気が変わった。
グウェンに指摘された男は、
驚くほど顔色を悪くなり、口を震わせていた。
「おい、なんでこいつが告白したことを知ってるんだよ」
「いや、知らねぇよ?
そういう風に”視えた”だけだ」
もう一度、見極めるように、
グウェンは目を細めながらその男を見つめると、
一瞬だけその目が赤く光を帯びた。
「……実際に川に入った俺のアドバイスだ。
ありがたく受け取っておいた方が身のためだぞ?」
周りの男たちは「何言ってんだ?」という顔だったが、
指摘された男だけは、
グウェンの言葉の“本当の意味”に気づいたようだった。
「……ありがとよ。
確かに、兄ちゃんの言う通りだ。
川に入るのは…………やめるよ」
男は憑き物が落ちたように笑うと、
その顔に、ようやく血色が戻った。
「……そうか。
それは賢明な判断だ」
グウェンは目を閉じ、再び前に向き直ると
お茶をすすった。
「兄ちゃんのおかげで、なんか吹っ切れた気がするわ。
良かったら一緒に上で飲まねぇか?」
グウェンは悪戯な笑みを浮かべる
「……いいのか?
俺、今金持ってないから奢られるしかないんだけど」
男とたちは顔を見合わせると、豪快に笑い、
グウェンの肩を叩いた。
「構わねぇよ!
今日は俺がおごってやる!」
「へぇ、気前がいいねぇ。
いいぜ? 付き合ってやるよ。
どうせ服が乾くまで暇だしな」
グウェンが荒っぽく笑うと、
男たちもつられて笑い出した。
そのまま自然と肩を組まれ、
二階へ引きずられるように階段を上がっていく。
気づけばグウェンは、
男たちの輪の中心にいた。
「でよぉ! こいつが昨日告白したんだよ!
そん時ほんと酷い振られ方してよ!」
「ほんと、こっちの肝が冷えるくらいのな!」
「うるせぇ!
なぁ兄ちゃん聞いてくれよ!
俺のどこが悪かったのか聞いたらよぉ!」
「はいはい、話してみろよ。
特別に俺が恋愛指南してやってもいい」
「兄ちゃん頼もしすぎるぜ!!」
酒場の空気は一気に明るくなり、
グウェンは完全に“場の中心”になっていた。
店主はカウンター越しにその様子を見て、
小さく笑った。
「……兄ちゃん、ほんと不思議な奴だな」
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もう少しだけ3章は続きます・・・
当た明日もよければお付き合いください。




