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再編の針と失われた縁  作者: 神田長十郎
第三章 変化の兆し
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第六十一話 噂の”男”

「それで……何が知りたいんかな?

レオンが騎士学校でやらかした話?

それとも社交界でやらかした話?」


「今はそんなふざけた話をしている場合じゃない!」

ネロが苛立った声で遮る。


「あ~はいはい、冗談ですやん。わかっとりますよ、

喪服の男の情報やろ?」

ラオフは肩をすくめた。


(まだ何も言ってないに……なんで“喪服の男”を探してるってわかったんだ……?)


紡が驚いた表情を見せたのがうれしかったのか

ラオフは得意げに鼻を鳴らした。


「なんやアマノ君、そんな驚いた顔して、

新鮮な反応でうれしいわぁ」


ラオフのはしゃぐ様子に、レオンは小さく舌打ちした。

「…………相変わらず、うす気味悪い奴だ」


「はいはい、それも誉め言葉として受け取っときます。

んで?おたくら、急いでるようやから説明は省きますけど……


今は喪服の男の情報はないで」


その言葉を聞いた瞬間、レオンはラオフの襟を掴みかかった。

「……いつまでもふざけたこと言ってんじゃねーぞ……」

「ふざけてへんわ。てめぇこそ舐めた態度とってんちゃうぞ。

自分の立場、わかってへんとちゃいます?」


レオンはギリギリと歯を食いしばり、

悔しそうにしながらも、ゆっくりとラオフの襟から手を離した。


ラオフは着崩れた襟を軽く整え、

大きなため息をついた。


「……ほんま、グウェンさんに『落ち着いて行動しろ』って言われたこと、

なんも身についてへんやん……どないなっとんねん。ったく」


その一言に、レオンはわなわなと震えた。

その表情はまさに――

“なんでお前がそれを知ってるんだ” と言っているようだった。


最悪な空気を断ち切るように、

鈴木がおずおずと口を開いた。


「あ、あの……喪服の男の情報は今はないって……どういうことですか?」


ラオフは鈴木に顔を向け、にっこりと笑った。

「そのまんまの意味や。

喪服の男については今、家のもんに調べさせてるけど……

怖いほど情報が全くない。()()、な?」


その笑顔の下に、紡は一瞬だけ“ただならぬ気配”を感じた。

だがそれはすぐに霧散し、いつものへらへらした笑顔に戻った。


「まぁでも? 君らが本当に欲しいのは、

グウェンさんが無事かどうかと、その行方に関する情報やろ?」


その問いに、フィーロがいち早く反応した。

「ラオフさん……何か知ってるの?」


「うんうん! フィーロちゃんにならお兄さん何でも教えたるで?

まず――路地で起きた事件の被害者は、グウェンさんとちゃうで」


「な!?被害者が判明してるのか!」

ネロが驚きの声を上げる。


「ポンゾ・リンデル。

最近この街に出入りしとった新参の商売人や。

裏であくどいことしてたって噂の、小悪党やな」


ラオフの声が低くなる。


「死体は街外れで見つかったんやけど……

首元はズタズタ、内臓もいくつか無くなってた。

死因は失血死。死体には血がほとんど残ってへんかったらしいで」


「血が……残っていない?」


「せや。

見つかった場所は草や土の多いところやったけど、

周囲に血痕は一切なし。処理した形跡もない。

つまり――別の場所で殺され、血を抜かれた状態で運ばれた可能性が高い」


鈴木が青ざめる。

ラオフが説明を続ける。


「せやけど、ポンゾは今日の朝、街中で姿を確認されとる。

最後の目撃から死体発見まで、ほとんど時間が経ってへん。

つまり、街の中で殺されたのは間違いない。

でも大量の血と内臓はどこにもない。

今も行方不明や」


「最後の目撃証言って、いつ頃だったんですか……?」


「死体が発見されたのは正午前。

ポンゾが最後に確認されたのは……その約2時間前やったかな……」


「そんな……短時間で……?」


「そう。

そんな短時間で殺人、血と内臓の処理、死体の移動……

普通の人間には無理や。

できるとしたら魔獣…

――もしくは、精霊使いや」


レオンが息を呑む。


ラオフは肩をすくめた。

「まぁとにかく、この件は衛兵が調査しとる。

グウェンさんは被害者とちゃうし。

もうこの件には関わらん方がええと思うけどなぁ?」


「……それで、グウェン様は今どこに?」

ネロが消え入りそうな声で問う。


ラオフはにやりと笑った。


「もう一つ、面白い情報を提供したるわ。

おたくら、事件とは別に“変な男”の噂があるのは知っとるか?」


「それなら聞いた。

街を歩き慣れていない男と、薄着で川に入っていた男の噂だろ」」

レオンが言うと、ラオフはわざとらしく驚いた。


「なんや知っとったんか!

さすが四人で探し回ってただけありますな?」


(……あれ? 今めちゃくちゃ嫌味言われてる?)

紡はラオフの言い方に引っかかり、ムッと顔をしかめた。

その様子を見て、一瞬満足げな顔をしたラオフは続けた。


「あ~でも残念。

まだ別の“不審な男”の噂があるんやけど……

そっちは知らんみたいやな?」


「変な噂……?」

フィーロが首をかしげると、ラオフは得意げな顔で言った。

「商業区域の大通りにある“古樽の酒場(アルト・カスク)”の店主が、

“不審な男”を拾ったって話や」


ネロが身を乗り出す。

「不審な男……って……まさか?!」


「まぁ、詳しいことは店で聞き。

僕から言えるのはここまでや」


ラオフの意味深な言葉に、レオンは表情を変えた。


「……情報、感謝する」


レオンは深く頭を下げ、足早に出口へ向かった。

ネロとフィーロも続く。


紡と鈴木も慌てて後を追った。


その背中に、ラオフの軽い声が飛んだ。

「ほなな~。“不審な男”さんによろしゅう伝えといてや~」


閲覧いただきありがとうございます。


ついに5月に入りましたね!

GWなんて存在しないので何の特別感はありませんが……

次回はついにあの男が登場予定です。


ぜひまた見ていただければ幸いです。

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