第五十話 崩壊
紡はさっきまでそこにいた“異質な存在”を思い返す。
(なんだったんだ……あの人たち……
それに”再編の針”を信用するなって……どういうことだ)
「ちょっとちょっと!!天野君!」
鈴木がすごい形相で詰め寄ってきた。
「えっはい。なんでしょうか」
「なんでしょうかじゃないですよ!!なんですか!
あんな得体の知らない人と簡単に友達とかになって!」
「いや……それはそうなんですけど、あの場では仕方なく……!」
「仕方ないって……はぁ。グウェンさんに聞いてはいましたが、
ほんとに天野さんは”縁”を引き寄せやすいんですね……」
鈴木は深くため息をつくと、眼鏡をかけ直すと真剣な表情で告げた。
「いいですか。天野さん。あなたは”縁”を引き寄せやすいだけで、
実際”縁”を結ぶかどうかは天野さんの行動しだいなんですよ?」
「は、はぁ……」
「天野さん見てるとほんと心配になります。こう……
誰でも構わずついていきそうというか……」
「い、いやさすがにそんなことはない……
って俺のことなんだと思ってるんですか!?」
紡は慌てて否定する。
「まぁ……天野さんもいい大人ですから……僕はこれ以上言いませんが―」
鈴木が言いかけたその時――
魔法具が震え、緊急通信が飛び込んできた。
『各地で精霊術師の暴走が連続発生!
対応していた職員から救援要請が殺到中―』
「なっ……!?」
鈴木の顔がみるみる青ざめる。
『暴走者の数が多数報告されます
避難誘導班も足りません!現場は商業地区の大通り
近くにいる職員は至急応援を――!』
通信が次々と重なり、
悲鳴と怒号が混ざった音声が流れ込んでくる。
ミミルとリリアは一瞬だけ顔を見合わせ、
すぐに表情を引き締めた。
「私たち、応援に向かいます!」
「アマノさんと鈴木さんは避難誘導をお願い!
ここは私たちが食い止めます!」
ミミルとリリアの二人は駆け出していった。
残った紡と鈴木は顔を見合わせる。
鈴木が何か考えたかと思うと、決意したように頷き落ち着いて声で言う。
「天野さん。僕たちはせめて避難誘導をしましょう」
「はい!」
紡の返事を聞くと、現場に向かって走り出した。
――
―
現場に着くと、そこは瓦礫が散乱し、
いたるところから煙が出ており、負傷者も出ているようだった。
あまりの光景に紡は頭が真っ白になってしまった。
(これ……全部さっきのセラフってやつが引き起こしたのか……)
「……のくん……あ……のくん……天野君!!」
鈴木の呼びかけではっと我に返る。
「天野君、いいですか。危険だと思ったらすぐにここから離れます。
ですがそれまでは負傷者の救助と、避難誘導をします!いいですね?」
「……はい!わかりました」
そういうと紡は地面に倒れる負傷者に声をかけながら
動ける人には大きな声で誘導する。
「こちらへ! 走ってください!」
「落ち着いて! こっちの通りは安全です!」
だが――
その途中。
「た、助けて……! 誰か……!」
ヨハンの店で会ったおばあさんが、
震える手で紡たちにすがりついてきた。
「お願いだよ……孫を……孫を助けておくれ……!」
紡は息を呑む。
おばあさんが指さす先には
おばあさんの孫――
精霊術師の少年が、
通りの真ん中で暴走していた。
目は焦点が合わず、
魔力が暴風のように吹き荒れている。
「……あれは……!」
「紡さん、危険です! 下がって!」
だが紡は一歩前に出た。
(……あの子……苦しんでる……!)
少年が叫び声を上げ、
周囲に熱を帯びた衝撃波を放つ。
「くっ……!」
鈴木が紡を庇いながら後退する。
「天野さん、近づいちゃダメです!
あの状態は……もう自分じゃ止められない!」
少年は腕を振り上げ、
炎のような精霊術を暴発させる。
建物の壁が砕け、
地面がえぐれた。
紡は震えながらも、
少年を見つめる。
すると突然、少年の胸の周りがぐにゃりと歪み
以前、グウェンの執務室で見た時のような
黒い糸が見えた。
(あれは……グウェンさんが見せてくれたのに似てる……あれは”縁”……?
なんで急に見えるように……)
突然の事象に、困惑していると、
紡は、少年と目があった。
すると少年が紡の方へゆらりと向きを変え、
手を伸ばす。
”逃げろ”
紡の胸が痛む。
精霊術を放たれそうになった瞬間――
「天野さん、伏せて!!」
鈴木が紡を押し倒し、
魔力の奔流が頭上をかすめていく。
振り返ると、先ほどまでたっていた場所は
パチパチと音を立てながら火の粉が舞い、
黒く焦げあがっていた。
そして、少年はまたゆらりと向きをかけると
鈴木と紡を目掛けて精霊術を放つ
その時、
ミミルが飛び込んできた。
「させない!!」
ミミルは少年の放った炎の精霊術
足技で魔力の流れを断ち切るように蹴りを入れる。
「リリアちゃん!」
「はいっ! 《拘束陣》!」
リリアの魔術が少年の足元に展開し、
暴走した少年を拘束する。
少年抵抗を見せていたが、やがて地面に倒れ込み、
ようやく動きを止めた。
紡は胸を押さえながら駆け寄る。
「大丈夫……?しっかり……!」
おばあさんが泣きながら孫の手を握る。
「ありがとう……ありがとう……!」
だが――
周囲から聞こえてくる声は、
感謝ではなかった。
「また精霊術師かよ……!」
「危険すぎるだろ……!」
「巻き込まれるところだったんだぞ!」
「なんであんな奴らが街にいるんだ!」
怒号が飛び交い、
暴走した少年を指差す者もいる。
紡は胸が締めつけられた。
(……違う……
この子は悪くない……
悪いのは……あの薬をばらまいた……)
だが、
市民の恐怖と怒りは止まらない。
ミミルが紡の肩に手を置く。
「紡くん……今は気にしないで。
避難を優先しよう」
紡は唇を噛みしめ、
うなずいた。
街は――
完全に地獄と化していた。
昨日は予約投稿失敗してしまいすみませんでした……
今日はしっかり確認しているので問題なく7時に上がっている。と!思います。
引き続き足もよろしくお願いいたします




