第四十二話 謎の気配
鈴木がナディアへの報告を終え、
ヨハンの警護役として、カティアとエイラが派遣されることとなった。
「すみません……このようなことに巻き込んでしまい」
ヨハンは深く頭を下げる。
「お気になさらず! 異世界人をサポートするのが私たちの役目ですから」
カティアは胸を張って笑う。
エイラも静かに頷いた。
「ヨハンさんの警護、私たちにお任せください」
「……はい! よろしくお願いいたします」
鈴木が続ける。
「念のため店内の様子を確認しておきたいので、僕と天野君も同行させてもらうよ」
「はい。鈴木さん、天野さん。よろしくお願いいたします」
――
―
ヨハンの店は以前と変わらず、
扉を開けると薬草とアルコールの混ざった香りがふわりと漂った。
紡は棚の隙間、カウンター裏、倉庫の扉などを確認して回る。
(……特に変わったところはない、か)
鈴木も店内を一周し、
カティアとエイラは外周を警戒しながら見回っていた。
「今日は……特に異常は見当たりませんね」
鈴木がそう言うと、ヨハンは胸を撫で下ろした。
「よかった……でも、やっぱり何かがおかしい気がして……」
そのとき――
カラン、と扉のベルが鳴った。
「こんにちは、ヨハンちゃん」
常連のおばあさんが、ゆっくりと杖をつきながら入ってきた。
「あっ、いらっしゃいませ。今日はどうされました?」
「いつもの関節痛のお薬をねぇ。最近また冷えるから」
「わかりました。すぐにご用意いたしますね」
ヨハンが手際よく薬を用意していると、
おばあさんはふと思い出したように言った。
「そういえばヨハンちゃんも聞いたかしら……
最近この辺で、“ドッペルゲンガーを見た”って騒ぐ人が増えてるんだよ」
紡と鈴木が同時に顔を上げる。
「ドッペルゲンガー……?」
おばあさんは続ける。
「ほら、自分とそっくりな姿の何かを見たら死ぬっていう、あれさ。
この通りでもねぇ、
“同じ人を同じ時間に別の場所で見た”って話がちらほらあってねぇ」
ヨハンの手がぴたりと止まった。
「……そ、それは本当ですか?」
「本当だよぉ。怖いねぇ。
ヨハンちゃんも気をつけなよ?
あんた、最近疲れてるみたいだし」
ヨハンは苦笑しながら薬を渡す。
「ありがとうございます……気をつけますね」
おばあさんが帰っていくと、
店内に静けさが戻った。
だが――
その静けさは、さっきよりも重かった。
鈴木が腕を組む。
「……ドッペルゲンガー…ね。
グウェンさんが出立してから、
変な噂や事件が増えたという報告は聞いていたんだけど、
ドッペルゲンガーは初耳だな……」
紡も不安そうに眉を寄せる。
「同じ人を、同じ時間に別の場所で見た……ってことですよね?」
「そういうことになるね。
ただの見間違いならいいんだけど……
一応、帰ったらほかにそう言った噂を聞いた人がいないか
確認しておこう」
エイラが外から戻ってきて報告する。
「周囲に怪しい人物はいませんでした」
鈴木がナディアへの報告を終え、
ヨハンの警護役として、カティアとエイラが派遣されることとなった。
「すみません……このようなことに巻き込んでしまい」
ヨハンは深く頭を下げる。
「お気になさらず! 異世界人をサポートするのが私たちの役目ですから」
カティアは胸を張って笑う。
エイラも静かに頷いた。
「ヨハンさんの警護、私たちにお任せください」
「……はい! よろしくお願いいたします」
鈴木が続ける。
「念のため店内の様子を確認しておきたいので、僕と天野君も同行させてもらうよ」
「はい。鈴木さん、天野さん。よろしくお願いいたします」
――
―
ヨハンの店は以前と変わらず、
扉を開けると薬草とアルコールの混ざった香りがふわりと漂った。
紡は棚の隙間、カウンター裏、倉庫の扉などを確認して回る。
(……特に変わったところはない、か)
鈴木も店内を一周し、
カティアとエイラは外周を警戒しながら見回っていた。
「今日は……特に異常は見当たりませんね」
鈴木がそう言うと、ヨハンは胸を撫で下ろした。
「よかった……でも、やっぱり何かがおかしい気がして……」
そのとき――
カラン、と扉のベルが鳴った。
「こんにちはぉ、ヨハンちゃん」
常連のおばあさんが、ゆっくりと杖をつきながら入ってきた。
「あっ、いらっしゃいませ。今日はどうされました?」
「いつもの関節痛のお薬をねぇ。最近また冷えるから」
「わかりました。すぐにご用意いたしますね」
ヨハンが手際よく薬を用意していると、
おばあさんはふと思い出したように言った。
「そういえばヨハンちゃんも聞いたかしら……
最近この辺で、“ドッペルゲンガーを見た”って騒ぐ人が増えてるんだよ」
紡と鈴木が同時に顔を上げる。
「ドッペルゲンガー……?」
おばあさんは続ける。
「ほら、自分とそっくりな姿の何かを見たら死ぬっていう、あれさ。
この通りでもねぇ、
“同じ人を同じ時間に別の場所で見た”って話がちらほらあってねぇ」
ヨハンの手がぴたりと止まった。
「……そ、それは本当ですか?」
「本当だよぉ。怖いねぇ。
ヨハンちゃんも気をつけなよ?
あんた、最近疲れてるみたいだし」
ヨハンは苦笑しながら薬を渡す。
「ありがとうございます……気をつけますね」
おばあさんが帰っていくと、
店内に静けさが戻った。
だが――
その静けさは、さっきよりも重かった。
鈴木が腕を組む。
「……ドッペルゲンガー…ね。
グウェンさんが出立してから、
変な噂や事件が増えたという報告は聞いていたんだけど、
ドッペルゲンガーは初耳だな……」
紡も不安そうに眉を寄せる。
「同じ人を、同じ時間に別の場所で見た……ってことですよね?」
「そういうことになるね。
ただの見間違いならいいんだけど……
一応、帰ったらほかにそう言った噂を聞いた人がいないか
確認しておこう」
エイラが外から戻ってきて報告する。
「周囲に怪しい人物はいませんでした」
ヨハンはほっとしたように息をつくも、顔色は悪い。
紡はヨハンの横顔を見つめる。
(ヨハンさん……本当に怯えてる……
これはただの噂じゃないのかもしれない)
鈴木が落ち着いた声で言う。
「今日は僕たちも閉店までここにいます。
ヨハンさん、何かあったらすぐに言ってください」
「……はい。ありがとうございます」
そのとき――
店の奥の棚が、かすかに“カタリ”と揺れた。
全員が一瞬でそちらを向く。
カティアは反射的に槍を構え、
エイラは短剣の柄に手をかけた。
「……今の、聞こえましたか?」
ヨハンは不安そうに手を胸に当てる。
紡も息を呑む。
(誰か……いる?)
カティアが慎重に棚へ近づき確認するも
薬草の束と瓶が整然と並んでいるだけだった。
カティアはエイラと目を合わせ、
手だけで合図を送る。
エイラはすぐに動き、
裏口、倉庫、調合室などを素早く確認していく。
しばらくして戻ってきた。
「……誰もいません。
窓も扉も、すべて内側から閉まっています」
カティアが槍を下ろしながら言う。
「風もないのに棚が揺れるなんて……
ちょっと気味が悪いわね」
ヨハンは小さく震えながら呟いた。
「……やっぱり、誰かが……
僕の店の中に“いる”ような気がするんです……
姿は見えないのに……」
紡はその言葉に背筋が冷たくなる。
(……“見えない誰か”……
ドッペルゲンガーの噂……)
鈴木が静かに言った。
「今日は閉店したら、僕たちも一緒に帰りましょう。
ヨハンさんを一人にするのは危険です」
ヨハンは不安げに頷いた。
「……はい……」
そのとき――
店の外で、誰かが歩く足音がした。
カティアとエイラが同時に振り向く。
「……誰か来た?」
紡はそっと外を覗いた。
だが、通りには誰もいない。
風も吹いていないのに、
店の看板だけが、ゆらりと揺れていた。
(……なんだ……これ……
本当に……“何か”が近くにいる……)
ヨハンは震える声で言った。
「……あの……
今日は……早めに閉店してもいいですか……?」
鈴木は即座に頷いた。
「もちろんです。
安全第一ですから」
カティアとエイラも武器を構えたまま、
店の外へと視線を向け続けていた。
静かな店内に、
見えない“何か”の気配だけが、じわりと満ちていく。
本日も閲覧いただきありがとうございます。
もしかしたらちょっとだけ投稿ペースが落ちるかもしれません……
特に問題なければ明日もいつも通り投稿できるように頑張ります




