第四十三話 計画
ヨハンの店を後にして、
再編の針に戻ると、ヨハンを部屋に案内した。
顔色の悪いヨハンを見て、鈴木は急いでフィーロを呼びに行く。
「ヨハンさん……ここにいれば安全ですから」
カティアがやさしく声をかけると
ヨハンは何も言わず、ただ小さくうなずいた。
すぐにフィーロとともに鈴木が戻ってきた
フィーロはヨハンの手を握り、目を閉じて集中する。
しばらくの沈黙のあと――
「……うん。問題なさそう」
そう微笑むと、鈴木は安堵の息をついた。
「フィーロさん。僕たちはナディアさんへ報告に行ってきます。
しばらくヨハンさんをお願いできますか?」
「うん。任せて」
フィーロは力強く頷いた。
その後、ヨハンの部屋を後にし、
鈴木・天野・カティア・エイラの4人はナディアの元へ向かった。
――
―
4人からの報告を聞き
ナディアは静かに頷く。
「そうですか……」
資料を閉じ、4人へ向き直る。
「実はこの後、施設内の精霊契約者を集めて会議を行う予定でした。
皆さんも参加していただけますか?」
(精霊契約者だけ……?)
紡は疑問を覚えつつも、他の3人と目を合わせて頷いた。
「わかりました」
――
―
再編の針・会議室。
すでに数名の精霊契約者が席についていた。
空気は重く、誰も口を開かない。
ナディアは前方に立ち、資料を整えてから口を開いた。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」
その声は落ち着いていたが、
その奥に緊張が滲んでいた。
「今日、皆様契約者の方を集めたのには、
ここ最近、街であらゆる不審な情報が報告が上がってきていますが、
その中の一つである【契約者暴走事件】について、皆様に情報共有をするためです」
その言葉に、会議室がざわつく。
ナディアは続けた。
「まず、暴走した契約者たちにはいくつかの“共通点”がありました」
「一つ目。
暴走した契約者は、全員が“最近、体調不良を訴えていた”こと」
「二つ目。
事件現場付近に“薬品と思われる瓶”が落ちていたこと」
提示された瓶の絵を見て、紡は息を呑む
(これ……ヨハンさんの“魔力増幅剤”の瓶に似てる……)
鈴木も同じことに気づいたようで、驚いた表情をしていた。
そして――
「三つ目。
暴走した精霊契約者たちは、事件の数日前に“ある人物”と接触していたという目撃証言があること」
ナディアはもう一枚の絵を提示した。
提示した絵には――
ヨハンが描かれていた。
会議室がざわつく。
鈴木が手を挙げる。
「目撃証言というのは、具体的にどういったものだったのでしょうか?」
ナディアは資料を一枚渡した。
鈴木は目を走らせ、息を呑む。
「……これ、
“ヨハンさんの店の近く”での報告が多い…?」
「そうです。
直接店に入った記録はありませんが、
ほぼ全員が“店の周辺”で目撃されています」
ナディアはさらに続ける。
「そして……暴走者の一人、ロイ・アルフィンさん。
彼は事件の前日、
“Greenveil・Elixir”の前でヨハンさんと話していた”という証言があります」
紡は思わず手を挙げた。
「ナディアさん!それは――」
言いかけたところで、ナディアが手で制す。
「ですが、本日鈴木さんとアマノさんが確認した内容から、
“誰かがヨハンさんのふりをしている可能性”が出てきました。
鈴木さん、皆さんにも説明をお願いします」
鈴木は頷き、
おばあさんの証言や店での出来事を説明した。
ナディアは静かに頷く。
「現在確認されている目撃証言は“ヨハンさんではない誰か”
街で噂になっている”ドッペルゲンガー”というのが関係している可能性も考えらえれます」
空気が凍りつく。
ナディアは資料を閉じ、深く息を吐いた。
「暴走事件の共通点は……
“ヨハンさんに見えた誰か”と接触していること」
鈴木は震える声で呟く。
「ヨハンさんに罪を擦り付けようとしているのか?」
ナディアは静かに頷いた。
「そしてその人物は、
薬の知識があり、
鍵を開けられ、
ヨハンさんの癖まで再現できる……
でも証拠がない」
(このままだと……ヨハンさんが一番の容疑者になる……)
ナディアは最後に告げた。
「この事件……偶然ではありません。
誰かが意図的に“精霊契約者を暴走させている”。
皆さんも狙われる可能性があります。
……しばらく警戒をお願いします」
続けるように
「現在ヨハンさんはこの”再編の針”内保護をしております。
念のため監視をつけますが……
証拠がない今。こちらも警戒をお願いいたします」
会議室の空気は重く沈んだ。
ヨハンを疑いたくはないが、証拠がないというナディアの意見を
真っ向から反対することはできなかった。
そして、ナディアは声を落として続けた
「また、この話は、非精霊契約者には内密にお願いします」
紡は驚き、思わず声を上げた。
「なぜですか?
情報は共有した方が……」
ナディアは首を振る。
「今はあくまで“共通点”でしかありません。
根拠のない段階で広めれば、
ヨハンさんに迷惑がかかる可能性がある。
そして――精霊契約者への偏見が広がる危険もあります」
会議室の空気が重く沈む中――
バンッ!
勢いよく扉が開き、
受付のミミルとリリアが駆け込んできた。
「ミミル、リリア……どうされたんですか?」
ナディアが驚いて声を上げる。
「ミミル、リリア…いったいどうされたんですか?」
ミミルは肩で息をしながら報告した。
「い、今……衛兵が来て……!」
会議室がざわつく。
会議室の視線が一斉に二人へ向く。
「精霊契約者暴走事件の“容疑者”として……
ヨハンさんを拘束すると言って……!」
会議室がざわめきに包まれる。
ナディアの表情が一瞬で強張った。
「……なんですって?」
リリアが続ける。
「“被害者にヨハンさんが薬のようなものを無理やり飲ませた”
という情報提供があったそうで……
その直後に暴走が始まった、と……」
紡は立ち上がった。
「そんな……!
ヨハンさんがそんなことするわけ……!」
鈴木も信じられないという顔で首を振る。
「ありえません……!
ヨハンさんはそんな人じゃ……」
ナディアはすぐに状況を整理しようと、
深く息を吸い、冷静に問いかける。
「今ヨハンさんは?」
「受付で足止めしていますが……
衛兵は正式な拘束命令書を持っています。
……止めるのは難しいかと」
ナディアは驚愕する。
「拘束命令書!?
目撃証言が出たのはごく最近……
いくらなんでも早すぎます……
なぜグウェン様が不在の時に――」
そこでナディアは何かに気づいた。
「まさか……全部仕組まれて……」
すぐに判断を下す。
「会議は一旦中断します。
状況が急変しました」
空気が張り詰める。
「ヨハンさんは今もっとも“危険な立場”にあります。
このままでは――
事件の“犯人”として処理されかねません」
鈴木が拳を握る。
「ナディアさん……
僕たちでヨハンさんを助けないと……!」
「もちろんです。
私はこれから衛兵隊と会い、状況を確認してきます」
そして全員を見渡す。
「これはグウェン様が不在の時期を狙って計画された可能性があります。
……十分警戒を強めてください」
(全部計画されてた……?一体誰が……)
“誰か”の正体はまだ掴めない。
だが、背中に冷たいものが走った。
胸のざわつきは、
もう誤魔化せないほど大きくなっていた。
本日も閲覧いただきありがとうございます。
話数のストックがなくなる中、
ある血で血を洗う1週間の争いが始まってしまったので……
すみません……義務なんです…肉を集めなければいけないんです…
頑張りますが、更新がなかったら……察してください……
不甲斐ない人間ですみません。肉集めは義務教育なんで……




