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再編の針と失われた縁  作者: 神田長十郎
第二章 覚悟
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第四十話 心配

黒い馬車を見送った後、

再編の針の前には、不思議な静けさが残った。


鈴木が軽く息をつき、ヨハンと冒険者たちに向き直る。

「さて、ヨハンさん。それに冒険者の皆さん。

お手伝いいただきありがとうございました」


ヨハンはにこりと笑い、手を振った。

「いえ、お気になさらず。では私たちはここで失礼しますね。

天野さん、また遊びにいらしてくださいね」

そう言って、ヨハンたちは去っていった。


鈴木が紡の肩を軽く叩く。

「じゃあ、研修の続きしようか。ロビーに戻ろう」

「……はい」

紡は返事をしながらも、

誰もいなくなった道路をぼんやりと見つめていた。


鈴木が心配そうに覗き込む。

「どうしたの?」


紡はゆっくりと口を開く。

「あの……魔術連邦の使者って人たち……

なんか、感じ悪い人ばかりでしたね。やっぱり……」


(ネロたちは大丈夫だろうか……)


胸の奥がざわつく。

鈴木は苦笑しながらも、どこか真剣な声で答える。

「まぁ……魔術連邦の人たちは、ああいう雰囲気の人が多いね。

でも今回は特にピリピリしてた気がするよ」


紡は、さっきの男の鼻で笑う顔を思い出し、

胸の奥がざわざわと落ち着かない。


拳を握りしめる紡に、鈴木が優しく声をかけた。

「天野君、気にしすぎると疲れちゃうよ。

まずは中に戻ろう」

「……はい」

二人は再編の針の中へ戻った。


ロビーに戻ると、

リリアがミミルを連れて応接室から出てきたところだった。


ミミルは目元が少し赤いものの、

さっきよりはずっと落ち着いた表情をしている。

「あ、アマノさん……」

ミミルは紡に気づき、

少しだけ申し訳なさそうに微笑んだ。


「ミミルさん、大丈夫ですか?」

紡が声をかけると、

ミミルは胸の前で手をぎゅっと握りしめ、にっこりと笑った。

「……はい! もう大丈夫です!

リリアさんがずっとそばにいてくれたので、落ち着きました!」


リリアは優しく微笑む。

「ミミルちゃんの役に立てて、私も嬉しいわ」

「えへへ……」

ミミルは照れくさそうに笑った。


鈴木が二人に声をかける。

「でも今日はもう休んで大丈夫ですよ。リリアさんも」

リリアはぱぁっと顔を明るくした。

「いいんですか! やった!

ミミルちゃん、食堂で甘いもの食べよう!」


「えっ、あ、うん!」

リリアはミミルの手を引き、元気よく走っていく。

「走らないでくださいよー!」

鈴木が苦笑しながら声をかけ、

その元気な背中を見て安心したように微笑んだ。


「じゃあ天野君。僕たちは研修の続きだね」

「はい」

紡もその後に続いた。


―――


仕事が終わり。紡は自室に戻り制服を脱ぎ

ベッドに腰を下ろした。


ようやく落ち着くことができ、ふーッとため息をつきながら

窓の外の暗い空をぼんやり眺める。


(……大丈夫かな、ネロたち)

鈴木には心配しすぎるなと言われたが、

どうしても魔術連邦の使者たちの、あの刺々しい空気。

特に――ミミルを侮辱したあの男の顔が、どうしても頭から離れない。


(グウェンさんも……無事に帰ってきてくれるよな)


そんな不安が胸の奥で渦を巻いていた。


すると――

「また難しい顔してるねぇ」


ふわりと空気が揺れ、

ケットシーが紡のベッドの上に現れた。

「うわっ……お前、いつの間に……」

「君がぼーっとしてる間だよ。

で? 魔術連邦がどうしたって?」


紡は少し迷ったが、素直に口を開いた。

「……あの人たち、なんか気になって……

グウェンさん達、大丈夫かなって」


ケットシーはハハッと笑った。

「心配性だねぇ。グウェンなら、あんくらいの小物じゃ何も思わないさ」

「小物……」

「むしろ心配するべきは君のほうでしょ」


「え?」

ケットシーは尻尾を揺らしながら、面白そうに言う。


「グウェンが魔術連邦に行ってる間、

どうせ君、なんか起こすでしょ」


「……嫌なこと言うなよ。大人しくしてるさ」

紡はそっぽを向く。


ケットシーはくすりと笑い、

わざとらしく肩をすくめた。

「まぁ、君がどうしても寂しいなら、

僕がお守りしてやってもいいけどね」


「お、お前! 子供扱いするな!

俺はとっくに成人してるんだ!」

紡は顔を赤くしながら言い返す。


「ったく、皆んなしてからかいやがって…

特にグウェンさんなんか……

たまに俺の頭撫でたりして……

あれ、恥ずかしいからやめてほしいんだよな……」

照れ隠しのように不満を漏らすと、

ケットシーはフンと鼻で笑った。

「まぁ、あれは君に限らず、

グウェンは誰にでもやってるよ」


「……へ?」

間抜けな声が出る。

ケットシーは尻尾を揺らしながら続けた。

「グウェンは昔から“人の頭を撫でる癖”があるんだよ。

あいつのことだから、グスターボっていう大男にもやるよ」

「う、嘘だろ……」

紡は目を丸くする。


そして、ふと思い出したようにケットシーを見る。

「そうだ、お前……

グウェンさんの昔を知ってるんだよな?

どんな人だったんだ?」

興味津々で身を乗り出す紡。


だがケットシーは、ぷいっとそっぽを向いた。

「教えないよ。

聞きたきゃグウェンに直接聞けばいいだろ。

めんどくさい」


「えぇ……」

紡は肩を落とす。


ケットシーはそんな紡を見て、

くすくすと笑った。

「まぁ、君が聞いたところで、

グウェンは照れて誤魔化すだろうけどね」

その言葉に、紡は少しだけ笑った。


夜の静けさの中、

不安はまだ胸に残っていたけれど――

ケットシーの存在が、ほんの少しだけ心を軽くしてくれた。


本日もご覧いただきありがとうございます。


ケットシーが立派なフラグをお立ち上げ遊ばせたので

まぁ何も起こらないわけがないですが…


明日もぜひ閲覧いただければ幸いです



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