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再編の針と失われた縁  作者: 神田長十郎
第二章 覚悟
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第三十七話 買い出し

午後。

買い出しのため、紡とミミルは街へ出ていた。


以前は――

「グウェンのお気に入り」という妙な噂が広まり、

護衛なしで外出することすらできなかった。


だが冒険者ギルドでの一件以来、

噂は一気に変わった。

「ラオフとグウェンの両方から借金してるヤバいやつ」

そんな不名誉なレッテルが貼られた。


もし紡にちょっかいを出したもんなら、

冒険者ギルド、”再編の針(リ・ウィーヴ)”両方のトップを敵に回すようなものだ。


実際には、今はグウェンからしか借金していないし、

冒険者ギルドは関係ないのだが――

そんな真実は噂の前では意味をなさない。


結果として、紡に手を出す者はいなくなった。


(……なんか、嬉しいような、悲しいような)


不本意ではあるが、外出は自由になった。

けれど、街の人々の“関わりたくない”という空気は、

紡の胸に少しだけ重くのしかかっていた。


(まぁ、外に出られるようになったんだし……結果オーライって思うようにしよう)


そんなことを考えていると、

隣を歩くミミルが楽しそうに声を上げた。

「アマノさんのおかげで倉庫整理が思ったより早く片付きました!

これならちょっと寄り道しても怒られませんね!」


ミミルはきょろきょろと街を見回しながら歩いている。

「ミミルさんは、よく買い物に来るんですか?」

「はい! いつもはリリアと一緒に!

楽しすぎて、つい買いすぎちゃうんですけどね……」

えへへ、と頬を赤らめる。


(……なんか、想像できるな)

紡は思わず笑ってしまった。


その笑顔を見て、ミミルがふと優しい目を向ける。

「アマノさん。よく笑うようになりましたよね」

「え? そうですかね。自分じゃよくわからないですが……

たしかに、最近は少し心が楽になった気がします」


紡は胸に手を当てる。

(そういえば……人と関わるのも、前より怖くなくなったな)

以前は、

“自分のせいで誰かを傷つけてしまうのではないか”

そんな恐怖が常にあった。

けれど、グウェンたち再編の針の人たちと過ごすうちに、

その考えは少しずつ変わっていった。


ミミルは柔らかく微笑む。

「良かったです」


―――

――


買い出しも終わり、ミミルの個人的な買い物も満足したようで――

「じゃあ買い出しも終わりましたし! そろそろ戻りましょうか!」

ミミルは少し先まで走り、くるっと振り返る。


「ミミルさん! 前見て歩かないと危ないですよ!」

紡が慌てて声をかけた、その瞬間――


路地から出てきた男と、ミミルがぶつかった。

「わっ! す、すみません!」

ミミルが咄嗟に頭を下げる。


「ッ危ないな……? その耳。お前……獣人か」

男は四十代ほど。

上品なローブをまとい、いかにも“貴族”といった風貌だった。


「あ、あの……すみません。お怪我はありませんでしたか?」

ミミルが心配して近づこうとすると――


「近寄るな! 穢らわしい!」

男はミミルの手を強く払い、

鼻を鳴らして鋭く睨みつける。

「この国は本当に前時代的で嫌だ。

獣人なんぞが大通りを歩いているなど……」


吐き捨てるように言うと、

ミミルの顔はみるみる青ざめていった。

「ヒっ……ご、ごめんなさい……」

完全に委縮し、震える声で謝るミミル。


男は最後にもう一度睨みつけ、そのまま去っていった。


紡は一瞬固まってしまったが、

はっと我に返り、急いでミミルに駆け寄る。

「ミミルさん、大丈夫ですか?」

ミミルは小さく首を振る。

「私は大丈夫です……驚かせてしまって、すみません」

だが、その顔は青ざめ、肩は震えていた。


周囲の人々が心配そうに集まってきた。

「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」

「なんだあいつ……女の子にぶつかっておいて、あの言いようはないだろ」


ミミルは慌てて手を振る。

「わ、私が前を見ないで歩いたから……!」

「それでも、あんな言い方するなんておかしいよ」


街の人たちの優しさに触れ、

ミミルの表情は少しずつ落ち着いていった。


そのとき、近くの店主がぽつりと呟く。

「あの男、きっと“マルクシオン魔術連邦”から来た人だよ」

「マルクシオン……?」

紡が聞き返すと、

店主はゆっくりと説明を始めた。


「マルクシオン魔術連邦は、魔術を中心に発展した国でね。

あそこじゃ“魔術を使える人間こそ優れている”って価値観が根強いんだ。

逆に、魔術を使わない種族――獣人や精霊術師なんかは、

未だに下に見られることが多い」

ミミルの肩がびくっと震える。


店主は続ける。

「もちろん、全員がそうってわけじゃないよ。

でも……ああいう態度のやつは珍しくない」


紡はミミルの横顔を見る。

彼女は笑おうとしているのに、目が笑っていなかった。

「……そうか。教えていただきありがとうございます」

紡は店主に頭を下げ、ミミルの隣にそっと立つ。

「ミミルさん、戻りましょう」

ミミルは小さく頷いた。


―――

――



ミミルを支えながら再編の針(リ・ウィーヴ)に戻る。


受付にいたリリアがいつもの笑顔で

「おかえりなさい」と迎えてくれたが――

ミミルの様子にすぐに気づき、駆け寄ってくる。


「ミミルちゃん・・・?どうしたの」

ミミルは一瞬だけ笑おうとした。

「……っ」

けれど、その笑顔はすぐに崩れた。


「ミミルちゃん、何かあったの?」

その優しい声を聞いた瞬間、

ミミルの中で張りつめていたものがぷつんと切れた。


「……っ、ひ……っ……!」

堪えていた涙が一気に溢れ出す。

「ご、ごめんなさい……!わたし……わたし」

リリアは黙って震えるミミルを抱きしめた。


「大丈夫、ミミル。ここに怖いものはないわ」

ミミルはリリアの胸に顔を埋め、

子どものように泣きじゃくった。


「アマノ君。何があったの」

困惑するリリアが紡に説明を求める。

ミミルは涙でぐしゃぐしゃの顔で紡を見上げた。

「……アマノさん……」

その目には、怯えと悲しみが混ざっていた。


紡が「その……」と言いかけたところで、

騒ぎを聞きつけたナディアが駆けつけてきた。

「何が……とりあえず、ここでは騒ぎになります。

中へ移動しましょう」




いつも閲覧いただきありがとうございます。

徐々に閲覧数も伸びておりちょっとそわそわしてますw

如何せん、自分の妄想を人様に見せるのは初めての経験なので……


引き続き私の妄想を形にしていく所存なので

よろしければ引き続きお付き合いいただければ幸いです

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