第二十八話 狂騒
エイラの力もあって、ラオフからのお使いは驚くほどスムーズに終わった。
冒険者ギルドへ戻り、紡はラオフに報告する。
「終わりました」
戻ってきた紡に気づくとラオフは嬉しそうにする
「いやぁ、思ったより早かったなぁ。
さすが“再編の針”のメンバーさんは優秀やなぁ」
ラオフはへらへら笑いながら、手元の紙束をペラペラとめくり始めた。
「じゃあ次は〜……」
「次って……まだあるんですか?」
紡が思わず聞くと、ラオフは笑顔のまま――
目だけが笑っていなかった。
「当たり前やろ。
アマノ君、自分がいくら借金背負ってるか自覚ないんか?」
背筋がぞくりとした。
「まだまだ働いてもらうで。ほら、次これ」
紙を渡され、紡は青ざめる。
(……これは想像以上に大変なことになったぞ……)
その後も、カティアとエイラの助けを借りながら、
紡たちはラオフの雑用を次々とこなしていった。
荷物運び、書類整理、依頼の配達、ギルド内の掃除――
気づけば夕暮れになっており、
さすがのカティアとエイラも疲れた様子を見せ始めていた。
「さぁて、次は〜……」
また紙束をめくり始めるラオフ。
(まだあるのか……)
紡は絶望しかけた。
そのとき――
バァン!!
冒険者ギルドの扉が勢いよく開く音が響いた。
「……っ!?」
紡たちは驚いて部屋を飛び出し、ロビーへ向かう。
そこには――
息も絶え絶えで、汗だくのレオンが立っていた。
顔は怒りと疲労で歪み、
まるで獣のような形相だ。
レオンはラオフを見つけると、
ずかずかと近づき、袋を突きつけた。
ラオフはそれを受け取り、中身を確認する。
「さすがレオン君!Bランクモンスターを単独で討伐してきたんか?
……すごいなぁ、感心するわぁ流石戦闘部門の副隊長さんや」
へらへら笑いながら言うラオフ。
「じゃあ次、これ行ってきて」
紙をひらひらと渡す。
レオンは紙を受け取り、内容を確認した瞬間――
わなわなと震え始めた。
そして紙を握りつぶし、
「ふざけんじゃねぇぞクソ野郎!!」
冒険者ギルド中に怒号が響く。
一瞬の静寂。
そして冒険者達が次々と怒り出す!
「なんだてめぇ!調子乗ってんじゃねーぞ!」
「精霊術士だからって偉そうにすんじゃねぇ!」
「ギルマスに借金してるくせによ!」
「お前らには関係ないだろ!引っ込んでろ!」
とレオンが冒険者達にも喧嘩を売り出す。
「へぇ……言うねぇレオン。
後悔しても知らんよ」
ラオフがそう言うと、
周りの冒険者たちがぞろぞろとレオンを囲み始めた。
(ま、まずい!!止めないと……!)
「レ、レオンさん!落ち着いてください!」
紡は咄嗟にレオンの腕を掴むが、
すぐに振り払われる。
「アマノ君は危ないから下がってろ」
その目は、完全に怒りで染まっていた。
(だめだ……完全に頭に血が上ってる……
このままじゃ、本当に誰かが怪我する……!)
紡の顔から血の気が引いていく。
そんな紡を見て、ラオフはにやりと笑った。
「ほら〜レオン君が怒るから、アマノ君が怖がってもうたやん」
「……っ!」
レオンの顔が、今まで見たことのないほど険しくなる。
「てめぇ……!」
ラオフにつかみかかろうとした、その瞬間――
コン、コン。
上品なノックの音が、ギルドの扉から響いた。
怒号と緊張で張りつめた空気を切り裂くように静かで――
逆に不気味なほどだった。
ギルド中の視線が、一斉に扉へ向けられる。
明日も7時投稿です。
よろしければ閲覧いただければ幸いです
後実は別作品になりますが短編を作ったのでもしお時間があればそちらも楽しんでいただけると嬉しいです




