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再編の針と失われた縁  作者: 神田長十郎
第一章 再編の針
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第二十四話 決意

翌朝。

紡は目を覚ますと、まだ少し重い身体を起こし、一人で食堂へ向かった。


食堂にはすでに数人が集まって各々食事をとっていた。

そんな中でレオン、カティア、エイラ――そして鈴木が手を振ってくる。


「おはよう、天野さん。よかったらこっちで一緒に食事しよう」

と紡を食事に誘う。


「あぁ、じゃあせっかくなので」

紡は席に着き、みんなと一緒に朝食をとった。

昨日の疲れがまだ残っていたが、温かい食事に少しだけ心が落ち着く。


食事が終わると、紡は鈴木に声をかけた。

「鈴木さん……昨日の話なんですが。

やっぱり俺、自立したいです」

突然の自立宣言に鈴木は目を丸くした。


「えっ……一日で決めたの?

もっとゆっくり考えても大丈夫だよ?」

まさか昨日話したばかりで今日結論を言われるとは思っていなかったのか、

鈴木は慌てた様子を見せる。


紡は震える手をぎゅっと握りしめ、苦しそうに言葉を続けた。

「いえ……昨日グウェンさんとも話して……

一人で考える時間ももらえて……

やっぱり俺は、誰かの迷惑になりながら……流されるまま過ごすのは嫌なんです」


その様子を見て、鈴木は少し考えたあと、ふっと表情を和らげた。

「……わかった。昨日も言ったけど、君が決めたことは全力でサポートするよ」

頼もしい笑顔だった。


「ありがとうございます。

あの……それで自立するにあたって、まずはこの街のことを知っておきたいので、

今日は外に出てみたいんですが」


そう言うと、レオン・カティア・エイラの三人が同時に渋い顔をした。


鈴木が申し訳なさそうに口を開く。

「あーっと……自立したいって言ってるところ悪いんだけど……

天野さんを一人で外に出るのは難しいんだよね」


他の3人も苦笑いをしている。


「……何かあるんですか?」

紡が不安そうに聞くと、レオンが肩を落としながら説明を始めた。

「実は……最近、街でアマノのことが噂になってるんだ。

“グウェンのお気に入りの異世界人”って」


「お気に入り……? どういうことですか?」


レオンは少し言いにくそうに続ける。

「前に、この世界には魔術と精霊術、武技があるって話を聞いだろ?」


紡は顎に手をつき、思い出そうとする。

(正直……昨日もいろいろありすぎてあんまり覚えてない……)


レオンは苦笑しながら説明を続けた。

「魔術はマナを使って事象を改変する力。

魔術式さえ知っていれば誰でも使える。

精霊術は精霊と契約して奇跡に近い魔法を使う力。

ただし“代償”が必要になる。

そして武技。

これは経験や訓練から身につく技術だ」

レオンは指を三本立てて見せる。


「だけど例外として、実はもう一つだけ……

別の世界から来た者だけが使える力がある」


紡は息を呑む。

「それが――固有能力(チート)だ」

レオンは真剣な表情で言った。


固有能力(チート)は代償なしに精霊術を超える力を使える。

能力によっては色んなやつらに目をつけられることもある。

あまりに強い固有能力持ちは、国の保護対象として王城で暮らすこともあるくらいだ」


「でも……俺、自分の能力とか知りませんよ?」

「固有能力は特殊だから調べる方法がない。

過ごしているうちに自覚するケースが多いんだ。

でも強力な固有能力(チート)を持つ可能性のある卵はそれだけでも狙われやすいんだ」


レオンが続ける

「それに自覚したとしても、その能力を公にすると狙われるリスクが高くなる

だからここでは固有能力(チート)を詮索することは禁止事項になってる。

どこから情報が洩れるかわからないからね」


(だから昨日、訓練場でカティアさんが何か聞こうとしたとき……

レオンさん、怒ってたのか)

納得したのも束の間、紡はふと疑問を口にした。


「でも……異世界人でも街で普通に暮らしてる人はいるんですよね。

昨日の話だと街の住居を紹介されるって」


鈴木が説明を引き継ぐ。

「そうだね。

能力によっては、あえて公表して“自分には利用価値がない”と示すことで

狙われるリスクを減らす人もいる」


レオンは肩をすくめた。

「まぁ、そもそも異世界人に手を出したら、その場で即処刑だからね。

手を出す奴なんてそうそういないけど」


紡は息をのむ。

「処刑……? 物騒ですね……」

レオンはやれやれといった風に手を上げ

「それだけ異世界人は貴重ってことさ」

と笑って見せる。


(異世界人は貴重……?)

胸に引っかかるものを感じたが、レオンは話を続けた。

「そんな中で、異世界人をサポートしてる“再編の針”のリーダー――

つまりグウェンが、アマノ君に特別待遇しているって噂が出たんだ。

相当すごい能力を持ってると思われてるんじゃないかな」


「俺、自分でも分かってないのに……?」

「グウェンはこの世界じゃ有名人だからね」

紡は頭を抱えた。

「じゃあ……俺、この世界で生きてくって決めても……

どうやって自立すればいいんですか……」


(そんな噂があったら、狙われるにきまってる……

というか俺の場合絶対トラブルが向こうからやって来る気がする……)


鈴木が静かに答える。

「能力がわかるまでは国も保護対象にはしないし……

護衛をつけるか、まあ……正直現状通り、

グウェンさんのお世話になっているのが一番安全かな」


「その“保護されているだけ”っていうのが嫌なんです!

お金だって……今は完全にグウェンさんに頼りっぱなしみたいだし……」

レオンが笑う

「心配ないでしょ。あの人、公爵だし、お金もあるし」


(ん?いまさらっと公爵って言った???

侯爵って一番上の爵位じゃなかったか?!そんなすごい人だったのか…)

紡は今更ながら今までの接し方を思い出し顔が青ざめる。


(いや……それよりも……!)

「俺は!誰かの迷惑になるのは嫌なんですよ!

自立して、一人で生きていけるようになりたい……」

少し声を荒げて苦しげに言う紡の姿を見て、

レオンが優しく尋ねる。

「……なんかあったのかい?」


紡は視線を落とした。

「いえ……。一人が好きなだけです」

その言い方には、何かを隠している気配があった。


鈴木がまとめるように言った。

「……まぁ、とにかく。

今天野さんを一人で出歩かせるのはリスクが高い。

街に出たいなら、戦闘部門のメンバーを護衛につけるしかないね」


紡は露骨に嫌そうな顔をした。

「嫌そうな顔してもダメだよ。

天野さんの身を守るためだ。

我慢してもらわないと外には出られないよ」


紡はしぶしぶといった様子で

「……わかりました。

では、誰か一緒に来てもらえるようお願いできますか」


とレオンに尋ねると、レオンが手を挙げた

「いいよ。というか、俺がついてくよ」

さらりととんでもないことを言い出す。


「え? レオンさんって戦闘部門の副リーダーですよね?

そんな人がついてきて大丈夫なんですか?」

「大丈夫大丈夫。今は任務もないし……正直暇なんだよねー」

鈴木が呆れたように言う。

「レオンさん。また叱られますよ」

「大丈夫だって、あーほら!

ちょうど今から三人で見回りに行くところだったんだから。ね?」

レオンがカティアとエイラに視線を送ると、

二人は「え?」と固まったが、すぐに無言の圧力に負けて、

「そ、そうです!」

と慌てて肯定した。


鈴木は大きなため息をつき、

「……私は知りませんからね」

と食器を片付けながら忠告した。

「あ、そうだ。天野君街に出るならこれ渡しておくよ」

鈴木が袋を渡してくる。

なかでじゃらじゃらと細かい金属が入ってそうな音が鳴る。

「……?これなんですか」

「お財布だよ。中には生活費が入っているから好きに使って大丈夫だよ」

そういうと鈴木は懐から自分の財布を取り出して

一枚づつ硬貨を出す

「この国の通貨単位はルーン。

この銅貨が1ルーン。一番小さい単位で日本円で言うと大体10円くらいの価値かな。

次にこの銀貨がハイ・ルーン。100ルーンで“ハイ・ルーン”になる

最後に僕は持っていないけど金貨で“クラウン”がある。1000ルーンで1クラウンになるって感じかな。

天野君の財布にはとりあえず5000ルーン。5万円くらい入ってるから」


「5万……」

(思ったより入ってるな……)


レオンが立ち上がる。

「じゃあ、さっそく行こうか!」

紡は肩を落としながらも頷いた。

「……はぁ。じゃあお願いします。」

こうして紡は、レオン・カティア・エイラと共に

街へ出かけることになった。

基本的な単位として

1ルーン 銅貨

100ルーン=1ハイ・ルーン 銀貨

1000ルーン=1クラウン 金貨


パン1個=5ルーン (日本円で言うと50円くらい)


って感じの世界観で通貨の設定してます。


ではまた明日7時によろしければご覧いただければ幸いです

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