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再編の針と失われた縁  作者: 神田長十郎
第一章 再編の針
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第十七話 訓練場

廊下に出ると、ひんやりとした空気が頬を撫でた。


白と青を基調とした内装は落ち着いていて、天井は高く、

頭上のステンドグラスから差し込む光が床に淡い模様を描いている。

どこか神殿のような神々しさと静けさがあった。


(……昨日も思ったけど……ここ、相当広い建物だよな……)


紡は思わず足を止め、周囲を見回した。


先を歩いていたネロが振り向き、

呆れたようにハァ、とため息をつく。


「おい、何をもたもたしている。早く来い」


「あぁ……すまん。すぐ行く」

紡は慌ててネロたちに駆け寄る。


ネロは再び歩き出しながら説明を始めた。

「“再編のリ・ウィーヴ”は、戦闘部門・研究部門・生活支援部門の三つに分かれている。

今いるのは中央棟で、主に生活支援部門の職員が働いている」


フィーロが続ける。

「中央棟には客室や会議室のほかに、資料室とか食堂もあるよ。

まずは食堂から案内するね」


フィーロに手を引かれ、廊下を進むと、

その先には広々とした食堂が広がっていた。


木製のテーブルが整然と並び、窓からは中庭の緑が見える。

昼時を過ぎているのか、人はまばらで静かだった。


その中で――

ひときわ明るい声が響いた。


「おーい、アマノ君!」


金髪の青年、レオンが手を振りながら近づいてくる。

「昨日ぶりだな。もう体は大丈夫か?」

「あ、はい……なんとか」


レオンは安心したように笑い、手を差し出しながら自己紹介をする。

「改めて。俺はレオン・アッシュフィールド。

再編の針(リ・ウィーヴ)”戦闘部門の副隊長をしている。よろしくな、アマノ君」


紡も慌てて手を差し出し、握手を交わす。

「こちらこそ、よろしくお願いします」


レオンは気さくに笑い、紡の肩を軽く叩いた。

「ところで、今から食事かい?」


フィーロが首を横に振る。

「今は施設内を案内してるところなんです。

アマノさん、まだ何も知らないから」


「あぁ、なるほどな」


レオンは納得したように頷き、

何かを思い出したように手を叩いた。


「そうだ、アマノ君に会わせたい人たちがいるんだ。

よければ、このあと訓練場に来てくれないか?」


「訓練場?」

紡は思わず聞き返した。


レオンの提案に、ネロが眉をひそめた。

「……こいつを訓練場に連れて行って、何の意味があるんだ?

必要ないだろ。しばらく”滞在”するだけなんだから。」

そう言いながら、ネロは紡を横目でにらんでくる。


(これ……余計なことはするなって意味か……?)


レオンは困ったように頬をかき、苦笑いを浮かべる。

「いや、その……うちの隊長がアマノ君に会ってみたいらしくてね」


「……なるほどな」

ネロは一瞬で状況を理解したように、納得した顔になる。


レオンはさらに肩をすくめ、ため息まじりに続けた。

「このままだと、隊長が“自分でアマノ君のところに行く”って言いかねないんだよ。

あの人、興味を持つと一直線だからさ……」


「……」


紡は思わず固まる。


レオンは苦笑しながら言った。

「そんなことになるくらいなら、こっちから連れていったほうが安全だしね」


(……安全って……どういう意味だよ……)


紡は心の中でツッコミを入れつつも、

隊長とやらの人物像がどんどん不安な方向に膨らんでいくのを感じていた。


―――

――

レオンに案内され、食堂を抜けて廊下を進み

中央棟から渡り廊下を通って別の棟へ移動した。


こちらも白と青を基調とした内装に変わりはないが、

さっきまでの中央棟の静けさとはまるで違う、

張りつめた熱気と緊張が肌に触れるようだった。


「ここ東棟は、戦闘部門と研究部門の施設がある。

基本的には一般人は立ち入り禁止だ。一人でこの辺りをふらつくなよ」

ネロは紡に釘を刺す。


(一人でこんなところ誰が来るか……)

紡は心の中でツッコミを入れる。


廊下を歩いていると遠くから金属がぶつかり合う音や、鋭い掛け声が聞こえてきた。


(……なんだ、この音……)


近づくにつれ、空気が変わっていく。


ネロが前を歩きながら言う。

「この辺りは戦闘部門の訓練施設だ。

普段は戦闘員たちがここで鍛錬している」


「さぁ、着いたぞ」

レオンが重厚な扉を押し開けた。


――途端に、熱気が押し寄せてきた。


広いホールには複数の戦闘員がいて、

武器を構え、魔力を纏い、

それぞれが真剣な表情で訓練に励んでいる。

床には焦げ跡、壁には衝撃の痕。

空気そのものが“戦い”の匂いを帯びていた。


(……すごい……)


圧倒されて立ち尽くす紡の前で、

紡の背筋がわずかに強張る。

レオンが振り返り、気楽そうに笑った。


「まぁまぁ、そんなに身構えるなよ。

今日は挨拶だけだろうしさ。」


(……嫌な予感はするんだよな……)

紡は一抹の不安を感じていると、

遠くで見知った顔の二人組と目が合った。


―あの夜、追跡者として紡を追いかけてきた

カティアとエイラだった。


彼女らも紡に気づいたのか、駆け寄ってきたかと思うと

紡の前に立ち、カティアとエイラが勢いよく頭を下げた。


「「申し訳ありませんでした!」」


紡はあっけにとられたまま二人を見つめる。

カティアが顔を上げずに、震える声で続けた。


「……あの夜…あなたを“逃亡者”だと決めつけて……

本当に、すみませんでした」


エイラも小さく頷きながら言葉を重ねる。


「わ、私たち……あの時、すごく緊張してて……

でも、それでも……あんなふうに追いかけたり、

攻撃したり……本当に……ごめんなさい……」


二人の肩は小さく震えていた。

紡は思わず言葉を失う。


(……そんな……俺の方こそ……)


胸の奥がじんわりと温かくなる。

この前の恐怖や混乱が、少しずつ溶けていくようだった。


レオンが二人の肩にそっと手を置き、紡に向き直る。


「彼女たちは任務に忠実すぎるところがあってね。

でも、悪気があったわけじゃないんだ。許してやってくれると嬉しい」


紡はゆっくりと息を吸い、二人に向き直った。


「……大丈夫です。

俺も……あの時は逃げるしかなくて……

お互い、状況が悪かっただけだと思います」


カティアが顔を上げる。

その瞳には、安堵と申し訳なさが入り混じっていた。


「……ありがとうございます」


エイラも小さく微笑んだ。

部屋の空気が、ほんの少しだけ柔らかくなる。


「改めまして。私はカティア・エンバーフォージ」

「……わ、私はエイラ・ウィスプエア……よろしくね」


「……はい。よろしくお願いいたします」

そういって互いに握手を交わし、

ほっとしたのも束の間。


地響きのような足音が近づいてきたかと思うと、

急に空気が張り詰めたようなプレッシャーを感じた。


「お前が……アマノか」


そこには、大柄な男がそびえ立つように立っていた。


天野君は感が鋭いので多分この後の展開に対して

訓練所に入ったあたりから嫌な予感を感じているって感じです。


良ければ明日また読んでいただければ幸いです。

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