魔法検体03《鑑定》
冒険者ギルドには、冒険者の能力値を測るサービスがある。「鑑定」という魔法で、水晶玉のような物を使う職員もいれば、小さなクリスタルを媒介にして、数値を読み解く熟練職員もいるらしい。
ちなみに俺は特にレベルや能力とはほとんど無縁の生活を送っているため、古代魔法を使える者としか認識されていないと思う。特に何も仕事がない時は、冒険者ギルドの掲示板を眺めているため、しばしばこの「鑑定」という魔法を見る。
能力など、その日、その時の体調も含まれるから、果たして正しく測れているのか甚だ疑問だった。
「いつから『鑑定』というサービスは始まったんですか」
「私が知っているように見える?」
前に俺がいた田舎町から猫耳職員が、出張しに来ている。職員にも昇給試験のようなものがあるらしく、まもなく試験を受けるのだそうだ。
「で、『鑑定』するなら、銀貨一枚だよ。やってく。やってかないの。やればいいじゃない。どうして」
「まぁ、落ち着いてください。そんなに慌てていたら、試験も通りませんよ」
「練習したいのよ」
「でも、以前と変わりませんよ。魔物を倒しているわけじゃないので。見てください。武器も防具も持っていない。持っているのはメモ用紙と木炭くらいです」
俺は鞄の中身を見せた。
「そんな冒険者は特殊なのよ。森に入って、魔物と対峙しないと!」
「大丈夫ですよ。冒険者は十分にいますから。別の冒険をしているだけです」
俺は、愛想笑いで流して、とっとと魔法図書館へ向かった。
普通の冒険者が未知の場所へ地図を広げるように、俺は古代魔法と現代魔法の途切れた糸を結ぶように、時代の流れの中で冒険をしている。詭弁と言われても、わからないことをそのままの状態で進むと、断絶してしまう怖さを前世で嫌というほど見てきた。
魔法は誰かに作られ、名付けられ、語り継がれていくから残るものだ。分岐し、まとまり、派生魔法が増えていくこともあるだろう。その時代にはその時代の道理があり、魔法使いたちは改良を重ねて、社会に合わせていったはずだ。
であるとすれば、冒険者ギルドの「鑑定」に歴史がないはずがない。
魔法図書館でエルフ司書に「鑑定」について聞いてみた。
「識別系の魔法書はかなりありますからね。冒険者ギルドの職員さんも多く見に来ますから、あまりいつものようにたくさん本を取らずに、お静かにお願いしますよ」
「わかりました」
試験も近いということで、若いギルド職員たちがたくさんいた。この世界では当たり前だが、獣耳を付けた人やエルフ、ドワーフ、角が生えた人たちなど人種は様々だ。差別があるのかも知れないが、未だ俺は見ていない。
受け継がれ続けた魔法が「鑑定」だとも言える。ただ、『初級鑑定大全』を読むと、「鑑定」には上級、中級、初級と分かれていて、階級ごとに調べられる能力が変わるらしい。ちなみに俺が知っている古代魔法の「鑑定」は使うと色が付く程度だ。その色を通してクリスタルを読み解く能力が足りないのだろう。
そう思いながら、若いギルド職員たちと本を読み進めていると、いつしか夕方になっていて、周囲の読書家が消えていた。
「あれ、試験とかないのか」
「朝早いのでしょう」
「ああ、なるほど。あ、エルフ司書さん」
「シルヴァです。何度もお会いしているでしょ。セイチさん」
エルフ司書が自己紹介してくれた。
「シルヴァさんは『鑑定』という魔法を使えますか?」
「一応、使えると思いますよ。本の状態を鑑定するのにも使いますし」
「状態変化を鑑定しているという感じですかね。実は、古代魔法の『鑑定』は着色される程度で、どういう能力や状態なのか、よくわからないんですよね。クリスタルを補助道具として使いながら、読み解いていくものなのでしょうか」
「いや、そんなこともないはずですけど……」
「なにか入口にすら立てていないと言うか、同じ魔法とも思えなくて……」
「今の『鑑定』という魔法は歴代の冒険者ギルドが育ててきたから、古代からかけ離れているのでしょう」
「本来はどこで生まれたかわかりますか?」
「いえ、そもそもステータスの数値を魔法で判別するような技術は、どこの種族でもないと思いますよ」
確かに、人を見て数字が見える方がおかしい。冒険者ギルドが魔法を特化させていったと考えるのが妥当だろう。
「つまり、どこの種族でもない人が開発したということですか。魔物が開発したとか」
「いや、勇者や魔王がいた時代まで遡らないとわからないということです」
勇者と魔王ってこの時代にいないってことか。
「それってどれくらい前なんですかね」
「4000年くらい前、それから12000年前にもいましたね」
「現代にはいないと」
「いえ。ええと、役職自体はあるけど、勇者や魔王の能力の者は出ていないということです。ちらほら、歴史上には『我こそは魔王』と言う人語を喋る魔物もいたんですけど、近場の魔物に滅ぼされたりしています。勇者も各地のコロシアムにはいますし、死地に赴いて帰ってきた者を勇者と呼ぶ民族もいますから」
「なるほど……。そりゃそうか」
これだけ知識の伝達も発達して、超自然能力の魔力ですら体系化しているわけだから、かなり深い歴史がある。もしかして教育水準も高いのかな。田舎の村ですら魔物研究所があるくらいだ。
「学校って世界にいくつもありますか」
「それはどの学校にもよりますけど、ベーシックな教育機関は、それこそ無数にあると思いますし、転生者や賢者と呼ばれる人たちが、何人も現れていて、知識の分布図はかなり混在していますよ」
異世界の知識も貪欲に取りにいった結果が今だ。「鑑定」だけでなく識別系の魔法がこの世界に与えた影響は、俺が思っている以上に大きいのではないか。パソコンもAIもないというのに、この世界には凄まじい知的体系が埋まっている。
「記録としてどこかに残っていないんですか。『上級鑑定大全』だと揺らぎによる数値化可能領域について、みたいなかなり難しいんですよね」
「であれば、僧侶に聞くといいかもしれません。古くはレベルについて教会が研究していましたし、勇者の発掘についてもかなり長い間研究していましたから」
「教会ですね」
とりあえず机に出ている本をきれいに拭いてから本棚に戻し、急いで教会に向かった。
途中、屋台で俺の夕飯と甘いお菓子を持っていく。女性に甘いものを持っていって怒られるのはダイエットなどという悪しき習慣がある前世だけだろう。
教会に行き、扉を叩くとシスターが開けてくれた。
「セイチさん。またお腹が空いて来たんですか」
「いえ。夕飯はこのように買ってきております。伺いたいことがありまして、こちら食後のデザートになります」
「随分、魅惑的な単語を話しますね。食後のデザートですか。身体作りは心の癒し。いいでしょう。夕飯は一緒に食べたほうが美味しいですからね」
どうやら夕食の直前だったらしい。肉のいい匂いがしている。
「すみません。食事前でしたか」
「いいんです。デザートは食後のお茶とともにいただきましょう。その時に、質問は受け付けます」
俺の夕食は鶏の串焼き盛り合わせと平たい塩パンで、教会ではキーマカレーのようなひき肉料理だった。当然のように串焼きをシスターたちにも振る舞い、キーマカレーに似たものを少しだけいただく。食事を分け与えるという教義はどの世界にもあるのかもしれない。
「それで、私たちに聞きたいことというのはなんですか」
シュークリームと饅頭と杏のはちみつ漬けを組み合わせたようなデザートを渋めのお茶といっしょに食べながら、シスターが聞いてきた。教会の牧師や他のシスターもいる。
「今『鑑定』について調べていて、勇者や魔王がいた頃にはできていた魔法のようなんですね」
「そうでしょうね」
「それで、教会の僧侶の方たちはずっとレベルや勇者について研究していたと聞きました。『鑑定』についても、実は冒険者ギルドより先に研究していたのではありませんか」
「ああ、そうかもしれませんね」
「たぶん、体力と魔力に分けたのは教会だと思いますよ」
牧師もデザートを食べながら教えてくれた。
「そうなんですか」
「ええ。食べ終えたら説明しますから少々お待ちください」
教会の人たちは、甘いものを食べるとどうしても動きが遅くなってしまうと言っていた。
食べ終えると皆食器を洗い、締付けの少ない服に着替えてから、小さな丸いガラス玉がはめ込まれた厚紙を持ってきた。学ぶ時はあまり苦しくない服装をしたいとのこと。いい文化なので、受け継がれてほしい。
「これなんだかわかりますか」
「あ、フォールドスコープですか。いや、こちらではなんというか知りませんが、葉脈や細胞みたいな小さいものを見るための装置ですよね」
「知ってたんですね。驚きです。そう。これは、かつての異世界人がこの世界に持ち込んだ。えっと、フォールドスコープというのですか」
「ああ、顕微鏡とかでもいいですけど……」
「我々はエフスコープと呼んでいます」
シスターが教えてくれた。名前はなんでもいいと、この時は思っていた。
「実はこれで何が見えるかと言うと……」
部屋を暗くして、「灯火」の光をエフスコープに近づけていくと、壁に丸く、葉の細胞が見え始めた。暗くてよく見えないが、エフスコープの前には鉢植えの植物の葉っぱを持ったシスターがいるようだ。
葉脈があり、細胞が見える。葉脈の中では水が流れているのが見え、小さい粒のようなものも見えた。
「これが魔力を運ぶ細胞ですね。実は歴代賢者の中には魔力が色で見えるという人たちが何人かいたんです」
「それは、共感覚とは違うんですか。例えば、数字に色がついているという人がいたり、臭いを視覚で見えたりするような人って稀に出てくるじゃないですか」
「ああ、たぶんそんな感じです。で、その人たちが色の種類や明度によって、魔力や体力がどれくらい内包しているのか見えるようにする魔法を作ったらしいんですね」
「要は自分たちと同じような感覚を他人に渡すってことですか」
「その通りです。よくわかりますね」
「感覚の譲渡って相当すごい魔法じゃないですか」
「でも、元々はもっと別の魔法の儀式だったという説もあるんですよ」
「どんな……?」
「それは、我々にも定かではありません」
教会には教会側の知識の領域があるらしい。
「その起源の魔法を使って譲渡したんじゃないかというのが『鑑定』です」
「では、初期の『鑑定』は結構アバウトと言うかあやふやだったんですか」
「そうです。でも、賢者が亡くなり研究している内に、魔力のスピードが一定じゃないということに気づいた僧侶がいます。その彼が、素早さと賢さのステータスを測る方法を見つけたんです」
「え! ステータスは体力と魔力の次に、素早さと賢さが付いてきたんですか。じゃあ、攻撃力や防御力みたいなものは……?」
「それは冒険者ギルドの発明なんですよ。つまり、速筋と遅筋という筋肉の種類によって単純に分けていた能力を、魔力の出力や留めようとする魔力に注目して、発展させていったと聞いています」
「なるほど、面白い発展の仕方をしていってますね。魔力の色というのはどうなったんですか」
「今、おそらく冒険者ギルドでは丸いグラフでステータスを教えてくれると思うんですけど……」
レーダーチャートというやつだ。体力、魔力を縦軸に、左側に素早さと賢さがあり、右側に攻撃力と防御力という分け方をした六角形のチャートを用いるのが一般的なようだ。
「色に寄って、偏りがわかるんですよね。つまり赤に近ければ攻撃力に魔力が使われていて、黄色に見えたら、素早さに特化しているなどがわかるとされています」
きれいな六角形だと白なのだそうだ。
「色は偏りか。なるほど、つまり、色の濃淡によって、数値を出しているということなんですか」
「そうなんですけど、999も色の濃淡を見分けられるわけないじゃないですか」
ステータスのカウントって999までだったのか。
「そうですね。どうやってるんですか」
「水晶を使って、細かい濃淡を測っていると言われています。ここら辺は冒険者ギルドの専売特許なんじゃないですかね。お金を取っているし……」
「確かに。上級鑑定大全には揺らぎの識別とか書いてあったんで、魔力を水晶に通すことで共振を起こしているのかもしれないですね」
クオーツ時計みたいだと思っていたが、この世界のクリスタルも振動するのだろうか。
「でも、よくわかりました。現在の『鑑定』には、歴史上の複数の天才や異才がいないと完成してないですよね」
「そうだね。でも、かなり重要視されているよ。単純に、魔物が大発生したときなんかは、その数値によって行く場所が決まるわけだから」
「命がかかってますもんね。識別系の魔法が広がるわけだ」
俺はお茶を飲みながら、納得していた。
「だとしたら、なおさら、原点の『鑑定』儀式が気になってきましたよ」
おそらく俺が持っている古代魔法「鑑定」は儀式に使っていたものだろう。人間だけでなく、物体にも使えたから、魔力を測るようなものではない。
「教会でも儀式はするんですよね」
「します。ただ、『鑑定』に繋がるような儀式なのかどうか。我々にはわかりませんよ」
牧師がデザートを平らげて満足そうに言った。そろそろ夜が更けてきた。
「聞きたいことが聞けました。ご協力感謝します」
「いえ、また美味しそうなデザートを屋台で発見したら、来てください」
「わかりました」
シスターたちに「おやすみなさい」と言って、冒険者ギルドに併設されている宿に帰った。
銀貨一枚で当たり前のようにやっていることなのに、ここまで深いとは思わなかった。歴史上何人も深堀りして、「鑑定」について研究を重ね、さらに誰でも使えるように冒険者ギルドが標準化したと考えると、膨大な数の人間が人種を問わず関わっている。冒険者ギルドに種族の貴賤などがない理由がわかった気がした。
古代魔法「鑑定」は殺されたと言うよりも、部分的に特化され続け、他を削ぎ落としたように見える。もしかしたら現代魔法「鑑定」は、これ以上削ぎ落とせない冒険者ギルドの権威そのものなのかもしれない。
翌日、冒険者ギルドには職員が少なかった。魔法図書館でギルド職員の試験をしているのだとか。図書館は試験会場にもなるのか。冒険者も少なく、暇なようだ。
せっかくなので現代の「鑑定」をやってもらおうと、銀貨一枚を持って受付に行くと、中年職員が俺の顔を見て手を叩いた。
「いいところに来た! セイチ。悪いんだけど、魔法図書館の場所はわかるだろう」
「わかりますけど、なにかあったんですか」
「試験管理委員をやってくれ」
「え、なぜですか。俺は古代魔法の『鑑定』しか知りませんよ」
「いや、不正をしているかどうかを見ればいいだけだから。緊急依頼として報酬を出してもいい。当てにしていた魔法使いが風邪を引いて来れなくなってしまってね。頼むよ」
「わかりました」
魔物の討伐依頼以外にも案外仕事はあるものだ。
魔法図書館に行き、入口で冒険者ギルド職員の試験会場を教えてもらう。二階の呪物、毒関連の図書コーナーで試験をしているらしい。
二階に上がると、若いギルド職員たちが時計を見ながら筆記用具を揃えている。皆、大小さまざまなクリスタルをペンの脇においていた。
「冒険者ギルドから試験官の依頼を請けてきました」
「あ、代わりの人」
ローブ姿の壮年女性が、メガネを外して挨拶をしてくれた。
「変なことをしないように監視するだけだから」
「はい」
部屋の端に椅子があり、座って試験を受けている職員を見ていればいいだけ、とのことだが、これは睡魔との戦いになるのではないか。そう思っていたが、冊子が配られ、教会の鐘と共に試験が始まると、唐突に職員が立ち上がって本棚から本を取り出したり、隣の職員と相談をしたりしていた。
「いいんですか。あれは」
「別に不正ではなく議論ですし、現地に行かない調査なら、許可はされています」
壮年試験官が教えてくれた。むしろ俺たち試験官のほうがじっと動かず監視している。
「この場合の不正って例えば、なんですかね。誰かに毒や呪いをかけたり、文字や記憶を改ざんする魔法を使ったりすると不正になりますよね。後は詐欺行為とか。筆記用具を高く売ろうとする者もいますから」
試験を受ける者で、そんな人がいるとは思えないが、前世の常識で判断してはいけない。
「こんな試験、なんのためにあるんだと思いますか」
壮年試験官が俺の隣に座って、職員たちを見ながら聞いてきた。大きな声を出さなければ、俺たちも話していいのか。
「いえ、昇級のためであれば、別にギルド内と同じ条件で試験を行うのもいいのではないですか」
「本当にそう思いますか。中級、上級の『鑑定』や現地調査から依頼内容を読み取れれば誰でもいいじゃないですか」
「そこが冒険者ギルドの専門性なんじゃないですか。俺なんかクリスタルを見ても、揺らぎなんて見えませんし」
「いえいえ、何度もやっていれば誰でも見えるようになります。そうやって標準化してきたんですから」
自嘲気味に壮年試験官は語る。彼女には専門分野があるのだろうか。
「冒険者ギルドは嫌いですか」
「嫌いで辞めたんですけどね。家にいても暇なので、時々こうして街に繰り出して稼いでいるというわけです」
引退した冒険者ギルド職員だったのか。
「どんな会議も試験も儀式に見えてしまいましてね」
「儀式ですか。ちなみに、なんの儀式に見えます?」
「はい?」
「いえ、実は古代魔法の『鑑定』について調べていまして、勇者や魔王がいた時代まで遡り、とある儀式から派生し、特化させたものが現代の『鑑定』という魔法に繋がっているのではないかという仮説にたどりつきましてね」
「随分、不思議なことをやっている冒険者ですね」
「そうかもしれません。今のところ魔物を倒したこともありませんから」
「変わっていらっしゃる」
「それで、儀式なんですけど、なんだと思います? もしかして知っていたりしませんか」
「いえ、知りません。でも、先代の真正勇者が冒険者ギルドに見出されたと考えると、先々代の頃の勇者と魔王の時代なのでしょうね。だとすると、千年単位で遡らないといけなくなります。であれば、精霊や悪魔との契約のための儀式だったのではないでしょうか」
「契約の儀式ですか」
「人ならざる者を呼び出し、その力を借りる儀式ですから、かなり強力な儀式ですよ」
そんな強力な儀式的な魔法を、俺はあっさりやってのけてしまっているんですけど、大丈夫なのかな。
「それこそ、悪魔が不正をして、力は与えるけど、魂を貰っちゃうぞ、みたいなことって起きなかったんですか」
「起きる可能性はありますよね。であれば、偽造を看破する儀式だったのかもしれませんね。いや、そもそもなりすましの可能性だってあったと思いますよ」
「なるほど、確かに戦の悪魔を呼び出したのに、恋の悪魔がやってきたら溜まったものじゃないですよね」
「そう考えると真名を判定する儀式だったのかもしれません」
本当の名前を判定してからじゃないと、精霊や悪魔と契約なんてできない。そこから派生して、見た目の偽造された力ではなく本当の実力を測る「鑑定」になっていったとすると筋が通る。
「面白い。たぶん、それ正解だと思います。ちなみに俺は古代魔法の『鑑定』しか使えませんが、現段階で、緑の人と赤く光る人がいて、冊子にも色がついているんですけど……」
「あ、それメモをしておいてください」
結果的に、古代魔法の『鑑定』はかなり精度が高い魔法だったことがわかった。赤く光っていた人たちはすべて替え玉受験と当てずっぽうで解答をしていた実力のないギルド職員だったことが判明した。
古代魔法の「鑑定」は真名を判定し、偽造された契約を看破できるようだ。精霊や悪魔に会えたら使ってみようか。
「あ、いた!」
冒険者ギルドで掲示板を眺めていたら、猫耳職員に見つかった。
「セイチは試験官だったのね」
「ああ、緊急依頼を請けただけです。でも、お陰で死んだ古代魔法の謎が一つ解けました」
「こちらもどうにか試験に受かったわ。ミラよ。ここで働くと思うから、よろしくね」
猫耳職員は自己紹介して握手を求めてきた。
「よろしく。誠実第一と書いて、セイイチと申します。地図の上では冒険しませんが、死んだ古代魔法の犯人を探すことを冒険と呼んでいます」
「変な冒険者」
「よく言われます」
ミラは笑って、依頼書を差し出してきた。
「まぁ、つべこべ言わずに薬草採取くらいできるようになってください」
「極めて難しいことを言いますね」
俺は渋々、依頼書を受け取った。




