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アクマテキ  作者: なん
五章
26/34

未知のデーモン

「お前らあのデーモンにやられたんじゃ」


 デーモンと仲間を交互に見る。


「はあ?今の今まで班長がほっぽり出したデーモンを放逐してたっつの!」


 と二刀の刹魔を携えた白髪の少年。天上才人——あまがみ さいと—―。

 小柄ながらも身体能力は機関随一で今は先頭で刹魔を掲げている。


「大丈夫ですか?ちばさ——班長。とたすらさん」


 と一刀の刹魔を天上の後ろで構えた、橙色の髪を横に結んだ少女。獣辺一土——けもべ かづち——。

 天上の同期で真面目で堅実。不器用なところもあるが伸びしろは感じる。


「初めましてー田擦さん。私班長の幼馴染の荒狼和紗——あろう かずさ——です。ご無事ですか?」


 と弓の刹魔を獣辺の後ろでさっと出している黒髪の女性。荒狼和紗。お淑やかで軟らかな雰囲気を醸す彼女は前髪で片目の上半分を隠している。

 幼馴染って情報要る?という暗黙の疑問に答えるように「挨拶は大事でしょ?幼馴染って情報は付加価値が高いんだよー?」と分かるような分からないような説明をした。


「別の班の人たちが近くにいた筈。このデーモンに襲われたのかも」


 切り替えて真剣な目で語る荒狼。

 班員が無事なことに安堵した。だが仲間の放逐官がやられたのだ。悔しさや怒りが無いわけでは無い。

 人型デーモンは頭を掻きながら


「なーんか面倒な感情だな」


 と淡々と呟く。


「つーかあれなんスか。デーモンですよね?」


 軽々しく言ってはいるが動揺が滲んでいる。


「あ、あんなの見たことないです」


「新種のデーモン?人語を操るなんて」

 今までにない事態に三人の常識も揺らいでいるようだ。

 辛うじてデーモンと認識できるが容姿は人間のそれだ。

 恐怖と興味がごちゃ混ぜに成る。

 地場は班員の揺らぎを嗅ぎとった。

 地場の思いが沸く。班員を引っ張って行かなきゃならない。こんなとこで蹲ってるワケにはいかない。

 全身が奮起し何とか立ち上がる。


「一土、才人、和紗、田擦さん。あのデーモン、必ず放逐しましょう」


 その言葉を受け全員が瞳に熱を灯す。


「あー殺す相手が増えちゃったな」


 大して表情を変えずに言葉を羅列するデーモン。

 あくまで悠々と放逐官に歩み寄る。


「争いってのは最悪だよな。そんなことみんな分かってるだろうに」


 溜息を吐く。

 その行動に感情は伴っていない。

 先刻の力の塊は連発できないのか、腕を振るう様子は無い。

 今が攻め時だと全員が直感した。


 天上と獣辺がほぼ同時に疾駆し回り込みながら距離を詰める。

 プロペラの様に脚を回し最速で懐に潜り込む。

 勢いと身体の力を乗せ刹魔を振りぬいた。


 ガィン!


 刹魔を受け止めた両腕は傷を負っていない。硬い音を生んだだけだった。


「いい力じゃん。でもそれじゃダメなんだな」


 ぐっと両腕を広げる。その圧に煽られ二人は体勢を崩した。

 隙を見逃さず天上を襲う。

 天上は類稀な運動センスを活かし崩れた体勢のままカウンターを放つ。


「へぇ」


 スイッチが入ったのか執拗に天上ばかり狙う。

 突きされる拳、振るわれる脚、生み出される衝撃。

 その尽くを避け反撃を加える。

 そのアクロバットな戦い方は予測が立たず、思わず翻弄される。


「わあ」


 デーモンは躍起になって天上を襲う。

 踏み込んで力を放出し大地が放射状に砕けた。

 天上は大きく体勢を崩した。

 放った拳が空を切る。

 突如デーモンの体勢も揺らいだのだ。

 獣辺が背後から攻撃した。

 天上に意識が行き過ぎて獣辺に不意打ちを食らってしまった。


「やる気?」


 すかさず手刀を構えたデーモンの眉間に何かが激突した。

 仰け反った身体に鋭利な何かが次々と打ち込まれる。

 破れた服から覗く皮膚は傷ついていない。


「なんだあ」


 ぎょろっと視線を動かすと奥の放逐官が弓を構えていた。

 瞬間何かが目の前に接近しぶつかる。

 眼球に当ててきた。


「すごいな。効かないけど」


 余裕な様子を感じ荒狼は次の矢を(つが)える。

 其の矢は唯の矢ではない。刹魔の矢だ。

 血液を与えることで矢を生み出す刹魔と弓の刹魔、荒狼は二つの刹魔を用いている。

 弾丸の如く発射された矢は空気を搔き分けデーモンの喉に直撃する。


「効いてない……皮膚が硬いのかな?それじゃあ……」


 獣辺と天上が刹魔を振るう中一つの影が突進する。

 その影は跳躍しデーモンの頭上で腕を展開した。

 布状に延びた腕は細かな棘を携えている。

 ドーム型刹魔から着想を得た新形態。

 棘鞭である。

 デーモンに巻き付き関節を固定する。


 ギャリリリリ。


 棘と皮膚の擦れる音が響く。

 視界を覆う其れを大して嫌がりもせず、少し動かせる足で地面を踏んづけ衝撃を放った。

 衝撃で棘鞭が離れる。

 硬い皮膚が特性か?でかい力が特性か?それとも別に特性があるのか?悔しさを滲ませながら思考する田擦。


 特性は様々あり全てを見通す眼を持つデーモンもいるらしい。

 なんにせよこのままでは埒が明かない。

 布状にした腕をゆっくり元に戻していく。

 白情の覆われていた視界が徐々に晴れていく。


「なにしてもむだなんだよなあ」


 嘲る様に云うデーモンの目の前。

 帯のカーテンを捲るように徐々に姿を現すそいつは。


「皆有難う。皆がいたからここまで来れた。」


 思うは仲間。

 思うは友人。

 思うは家族。

 思うは恋人。


 命を賭ける度思い出す。

 自分は多くに支えられているのだと。


「ここが正念場だああああああああ‼」


 壊れる程握り込んだ拳がデーモンの動揺した顔面に激突する。

 絶大な力がデーモンの身体を貫き高速で吹き飛んだ。

 衝撃の嵐が周囲を蹂躙し放逐官達は体勢を崩した。


「なんつー力だよ」


 汗を滲ませながら天上は笑った。

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