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アクマテキ  作者: なん
四章
24/34

絶叫

 ぐちゅ。椅子の脚が鼻筋にめり込み血を吹き出す。また一人倒れる黒服の男。それでも廊下を埋め尽くすほどの黒の集団。異常を感知した田擦殺すマンの部下達が次々と押し寄せる。初めに数人の黒服達を椅子に縛られたまま制圧し椅子に縛られたまま監禁部屋を出た。

                  すると先刻の倍の人数が

                  廊下に待ち構えていたので

                  椅子に縛られたままこれを撃沈。

                  一人また一人と増える黒服を

                  ボコボコにしていたら

                  廊下を埋め尽くすほどの

                  黒服達がやってきた。

                  伊達寺の思考と身体は多くの人のそれとかけ離れてい る。並 

                  の人間ならば椅子に縛られたままでも撃退できる。だが目の前

                  の黒服達は並み以上の強さを持ち数も多い。果たして伊達寺は

                  窮地をこえられるか。伊達寺はため息を吐いた。椅子に縛られ

                  たまま。


 +++


 労割朗子は自宅で読書をしていた。

 ピンクと焦げ茶色の二層のチョコレートを手に取る。

 小さな三角錐の形に好感を持ちつつ潤った唇に運ぶ。

 指をティッシュで拭いて(ページ)(めく)る。

 優しい甘みと小さな幸福がおとずれた。


 二階建ての一軒家に労割は住んでいる。

 恋人と同棲中だが今は仕事中だ。

 時計を見ると20:05。

 少し伸びをすると緩むような気持ち良さを感じた。

 水を飲もうとキッチンへ足を運ぶ。

 ステンレス製のマグカップに水道水を注ぎ口に含んで喉に流す。


 ふぅ。


「念正大丈夫かな」


 労割は念正から言われた言葉を思い出していた。


「俺は朗子を幸せにしたい。でも俺の周囲の人にも幸せに成って欲しい。手が届くなら助けたい。今の俺にはそれだけの力がある。でも今は周りの人を助けることに精一杯で朗子を幸せにする力はない。結婚とか子供とか一緒にいるとか、朗子を幸せにすることが今の俺には出来ない。ごめんな。無力な俺をどうか許して欲しい」


 その言葉に私はなんて返したっけ。

 半ば云い合いのように成りながら必死に言葉をかけた。

 最後はお互い泣きながらもどこかすっきりした。

 念正も何か吹っ切れた様だった。


 ふと目線の先の物を見詰める。

 二人で行ったチューリップ畑の写真。

 一面を覆う色とりどりのチューリップをバックに自分と恋人が写っている。

 少ない休日を縫って付き合ってくれた大切な写真。

 隣には近くの花屋で買ったチューリップが置いてあった。

 一際目を引いた白いチューリップ。


 よく見ると焼き付く様な白い花弁が一枚落ちていた。

 その一枚を指先で拾う。

 思い出を頭に流しながらそれを見詰める。

 飲んだ水はやけに冷たかった気がした。


 +++


 地場と田擦は住宅街を縫って仲間の元へと向かう。

 田代の家はこの近くだったな。

 デーモンによって瓦解した住宅街の一部。

 その中に田代の家も含まれる。

 臭いを誤魔化すために芳香剤を用意したとか言っていた。

 では田代が殺害した両親の遺体はあの家にあるのだろうか。

 流石に警察が対応したか。


 そんなことを考えていると丁度田代の家の側を通りかかった。

 溢れる瓦礫の中のそれに不思議と目が行った。

 なんてことない白い表札。

 刻まれた田代の二字。


 違和感を覚えてふらつきつつも近寄る。

 心配する地場を他所に表札を拾い上げる。

 其れは二層構造になっていて剝がれそうに成っていた。

 違和感の正体はこれかと思いながら気になって剝がしてみる。


 土溺──つちおぼれ──。


 その二字を掲げた表札が姿を現した。


 は?

 なんだこれ?

 田代の表札を重ねて見えなくしていた?

 じゃあここは誰の家なんだ?


 目の前の家だった物を見て得体のしれない気持ち悪さを覚える。

 ここは田代の家じゃない。

 じゃあ田代は親を殺してない。


 関りのない夫婦を殺してその家の家族に成りすました?


 表札まで変えて。

 恐怖の沼に足を取られて動けない。

 背筋が冷たくなる。


「田擦さん」


 はっとして呼ばれたほうを見る。

 地場はこちらを見ておらず目の前の瓦礫の山を見ていた。

 田擦も釣られてそちらを見る。


 目線の先に奴は居た。

 しくしくと顔に両手を当てている純白の異形。

 デーモン。


「こんな時にか……!」


 臨戦態勢に入ろうと担いでいた田代をそっと降ろす。

 田代と触れていた地場の右腕。

 其れが一瞬のうちに消滅した。

 一瞬遅れてぱあん!と轟音が鳴る。

 地場は片腕を失い田代は両足以外を失った。

 その事実と痛みを脳がにんしきし


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 絶叫が響いた。

 吹き出す鮮血が地面を濡らす。

 田擦は熱くなる全身と速くなる心臓の鼓動を唯感じることしか許されなかった。

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