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【第一章:初手ダイス「72」:失敗から始まる執念の愛】

【第一章:初手ダイス「72」:失敗から始まる執念の愛】


目の前に立つのは、太陽そのものを衣としたような絶世の美女。

日本の最高神、天照大御神だ。


「目覚めたか、異邦の魂よ。

 そなたには、この『戦国』という名の残酷な盤面を、泰平へと導く役割を担ってもらう。

 ……安心せよ、そなたには転生者としての知恵と、わらわが授ける**【徳の源泉】**という加護がある」


彼女が指先を鳴らすと、脳内にTRPGのようなステータス画面が浮かび上がる。


名前: 松平元康(のちの徳川家康)


志: 太平の導き手(誰もが枕を高くして眠れる世を作る)


初期スキル: [徳の源泉](誠実な対話による成功率補正)


「さあ、盤上に降りるがよい。

 最初の試練は、そなたの『心』を縛る、美しき鎖の物語じゃ」




1557年、駿府。


私は今川家の人質として、牙を隠し、忍耐の日々を過ごしていた。

幼い頃から織田と今川を転々とし、命のやり取りを肌で感じてきたこの身体は、野生動物のように鋭敏な感覚を備えている。


そんな私に、主君・今川義元から下された命。

それは、今川の重臣・関口親永の娘、**瀬名(築山殿)**との婚姻であった。


婚礼の夜。

蝋燭の炎が揺れる静謐な部屋で、私は彼女と対面した。


(――……言葉を失う、とはこのことか)


現代の記憶を持つ私ですら、目の前の光景には息を呑んだ。

彼女は、単に顔立ちが整っているという次元を超越していた。

名門・今川の血筋が、何代にもわたる「秀でた婚姻」によって積み上げてきた遺伝子の結晶。

そして、幼少から一挙手一投足に至るまで徹底的に叩き込まれた「所作」の習練。


白無垢を纏った彼女が、微かな衣擦れの音を立てて深く頭を下げる。

そのうなじの白さ、指先のしなやかさ。


すべてが計算された芸術品のように美しく、

それでいて、その奥には決して折れない「誇り」という名の刃が隠されていることを、

私の研ぎ澄まされた感性が告げていた。


彼女がゆっくりと顔を上げた。


月の雫を湛えたような瞳が、真っ直ぐに私を射抜く。


「松平殿。私は、父より『今川の目』として、あなたを監視せよと命じられております……。

 私は、あなたの自由を奪う鎖に過ぎませぬ。

 それでも、この私を娶ってくださるのですか?」


その声は、冷たく透き通っていながらも、どこか助けを求めるような震えを含んでいた。


転生者である私は知っている。


彼女が後に、信長の命によって悲劇的な最期を遂げることを。


(鎖だと? 冗談ではない。

 これほどの美しさが、悲劇で終わるなどあってはならぬ。

 この『美』を守り、笑顔に変えることこそ、泰平への第一歩だ)


「瀬名殿。

 鎖であれば、私が解いてみせよう。

 私は今日、今川の目ではなく、私と共に歩む『この世の光』を妻としたのだ」


私の言葉に、彼女の瞳が驚きに揺れる。


その瞬間、私の胸の中に、単なる義務ではない、熱く重い「守るべきもの」が生まれた。




1560年。運命の日がやってきた。


桶狭間の戦い。今川義元、討死。

前線の大高城で、兵糧を運び終えたばかりの私は、衝撃の報を受ける。


「殿! 今こそ三河へ戻り、独立を! 今川はもう終わりです!」

家臣の酒井忠次らが、血走った目で私に迫る。

だが、私の心象風景に映るのは、駿府で帰りを待つ瀬名と、幼い子供たちの姿だ。


(今ここで私が勝手に岡崎へ戻れば、人質の家族は皆殺しだ。

 だが、この混乱に乗じて救い出せれば……!)


天照大御神(GM):

「ほう、面白い!

 史実を曲げてでも愛を貫くか。

 ならば判定じゃ。

 【試練:大高城からの脱出と家族救出】!

 難易度は高いぞ。

 織田の追撃軍がすぐそこまで来ているからな。

 さあ、運命を決めよ!」


私は天に祈るように叫んだ。

「私は、誰も見捨てない泰平を創ると決めたのだ! 駿府へ向かう! 瀬名を救い出すぞ!」




判定: 退却の知略




基本成功率: 40%


スキル[徳の源泉]補正: +10%


合計成功率: 50%(1〜50で成功)


女神の手から放たれた光のダイスが、盤上を転がる。




ダイスロール……「72」!!




「あああっ……! 失敗じゃ!」

女神の無情な声が響く。


織田の追撃軍、水野信元の部隊が想像を超える速さで退路を断った。

さらに「元康が信長と内通した」という誤報が今川軍の敗残兵の間に広まり、

味方であったはずの兵たちが私に刃を向ける。


「殿! これ以上は無理です!

 駿府へは行けませぬ!

 まずは岡崎へ、岡崎へお逃げください!」


忠次が叫び、私の馬のくつわを強引に引く。


(……瀬名! すまない、今は……今は……!)


私は奥歯が折れるほど噛み締め、燃え上がる戦場を後にした。

背後の駿府には、取り残された愛しき妻。

目の前には、父祖の地・岡崎。


不本意な独立。

そして、家族を救えなかったという痛恨の「負債」。

だが、この失敗こそが、私という「家康」を、ただの模範的な主君から、

泥を啜ってでも愛を貫こうとする「執念の男」へと変えたのだ。




天照大御神(GM):

「ふむ……運命は非情じゃな。じゃが、そなたの瞳に宿るその火は、まだ消えてはおらぬ。

 家族を見捨てたという『業』を背負いながら、そなたは三河をどう導く?

 次は、三河一向一揆の最中、かつての親友や家臣が敵となって立ち塞がるシーンから描こうかの。

 準備はよいか?」

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