9 多様な人間で構成される小さな社会
本当は、少し疲れていた。
会議は、選挙方法について持たれたものだったが、なにしろ多様な人間で構成される小さな社会である。
生まれも、本当の年齢も、身体の組成までもがバラバラ。
ホメムはただ一人、レイチェルのみだが、マト、メルキト、アギ、パリサイド、アギからパリサイドになった者、そしてクローン、人造人間アンドロまでいる混成社会。
簡単に、結論が出るはずもない。
いくつもの分科会に分かれて議論しているが、今のところ、どこもむやみに紛糾するばかりで、不毛に時間を空費している。
「レイチェルはどんなことがあってもやる気やぞ」
「そうやね。彼女、自分が唯一のホメムって意識、捨て去りたいみたいやしね」
「いいねんけどな、それでも。あいつがそう思うんやったら」
「へえ? ノブは反対なん? 選挙」
「いや、やるべき。僕が言いたいのは、レイチェルの、その、なんというか」
レイチェル自身、ホメムとはいえ、ベータディメンジョンを経由して若返って戻ってきた人間である。
元は、キャリーというニューキーツ長官。
すでにかなり高齢だったキャリーが子供を産める年齢に戻るために。
「あいつも大変な、その、苦労というか、悩みというか」
「まあねえ」
ふう、とユウが溜息をついた。
イコマには、レイチェルの肩の荷を少しでも軽くしてやりたいという気持ちがあった。
レイチェルには、悔悟の念とまではいわないが、少しばかり後ろめたい気持ちがあるのだ。
子を産むために、地球の危機に乗じて自分の身体を時空移動させ、若返らせたことに。
そして、禁止された技術、クローンを作ってまで、己が子供を宿すための相手を探そうとしたことに。
いわば恋人探し、などと自分でも言っていたが、生粋の人類を残すことにもう意味がないと悟った今、自分が長官としていかに偏屈で、結果として人類の本当の危機を招いてしまったことに、責任を感じているのだ。
ことあるごとに、レイチェルは口走っている。
ねえ、ンドペキ、長官を代わって欲しい、と。




