6 みんなで、晩飯やから
この避難フロアをユーペリオンと名付けたのは、アヤ。
いくつかの候補の中、採用された。
そして今、人々が屯っている巨大な洞、いわば地下の広場を、オップラーガーデンと名付けたのもアヤだった。
「バーベキューでもしてるんかな」
「こんな暗い中で? もうすぐ夜だぞ」
「どうせ、昼も夜もないし」
「まあな」
狭い部屋、狭い通路。
圧迫感のある岩穴暮らし。
広い空間を求めて、人々はこのオップラーガーデンに集う。
せめてもの雰囲気づくりにと、昼は昼の、夜には夜の照明として明るさが変化する設え。
「あ、お疲れさまでした」
そう言いながら、一人の女性が公園から出てきた。
「散歩ですか?」
「ええ。ちょっと通り抜けてきました」
夕刻が近い。
まもなくオップラーガーデンは暗がりに沈む。
深夜でも街灯はぽつぽつ点灯してはいるが、野球場ほどある空間に数か所では、とても全体を照らし出すことはできない。
女性は軽く会釈して通り過ぎて行こうとする。
同じ分科会のメンバー。
「イペ」
振り返った女性は、なんでしょう、というようにほのかに笑った。
「いつもすみませんね。チョットマがお世話になって」
「いいえ。とんでもない。こちらこそ」
娘の親としては、その同僚に挨拶はしておかねば。
ただ、親しいわけではない。
チョットマからは、今日、服選びに一緒に行ったと聞いてはいるが、言わずにおこう。
なんでも親に話していると思われてはかわいそうだ。
ユウが腕を組んでくれる。
「ノブの分科会って、美人ぞろいね。イペといい、レイミといい」
「そうか? 暗がりの街じゃ、だれでも絶世の美人に見えるんやろ」
「あ、そか。じゃ、私たちも散歩する?」
「いや、やめとこ」
今日はアヤの誕生日。
「みんなで、晩飯やからな」
イコマの発案で、家族の誕生日には全員が集まると決めてある。
ンドペキは、なんやそれ、という反応だったが、とりあえず一年間はやってみようということになったのだった。
イコマとユウ。
イコマのクローンであってマトになったンドペキ、ユウのクローンで同じくマトになったスゥ。
そして娘たち。マトのアヤ、長官レイチェルのクローンであるチョットマ。
この六人が集う夜だ。