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52 議事録にはどう書いてあったのでしょう

「では、会議での出来事をお聞きします。前回と今回の」

「どうぞ」


 レイミに関係した会話を教えてほしい。


「彼女が話したことはたくさんあります。それは議事録をご覧いただけたらよいかと」



 話を端折りたかったわけではない。

 その逆だ。

 特筆すべきことがあったのだ。


 隣に黙って座っているチョットマに目をやったが、見返してくることなくボニボニを見つめている。



「議事録はすでに入手し、ざっとですが目を通しています。実に興味深い内容が含まれていますが、それをイコマさん、あなたの判断、あるいは印象で結構です。それを含めてお聞きしたいのです」

「……ふむ」



 チョットマがいなければ、話し難いことはなにもない。

 が、レイミの悪口を言うようで気乗りはしない。



「彼女はマトです」


 ボニボニは頷くだけで、先を促している。


「選挙に立候補できる人、いわゆる被選挙人となりうる人の条件を話し合っている時でした。タァーレルがこんなことを言い出したのです。議員の定員に枠を設けることを先に議論した方がいいのではないか、と」



 元々、議員は全市民から公平に選ばれる、ことになっている。

 長官も局長クラスもその議員の中から選ばれる。

 これがレイチェルの意向。

 出自や地域に縛られるべきではない。


 しかし、それに反発する声があることも事実だった。

 タァーレルは、それをまず俎上に載せるべきだと主張したのだ。



「タァーレルはこう言いました」


 出身として少数の者にも、議員になれる道、つまり街の政治を担っていける道を開いておくべきではないか。


 ボニボニは黙ったまま、目玉を半ば閉じて聞いている。


「つまり、数の不利を受けぬよう「枠」を設けてはどうかという意見でした」



 話の先を急いだ。

 議事録を読んでいるなら、この話の行き先はボニボニも先刻承知のはず。

 まったりと話す意味はない。




「その意見に対して、反対意見が出ました。その急先鋒がレイミです。彼女はこう言いました」


 レイチェルの意向なんだし、ここでそんな枠組みを決めてしまったら、もう二度と後戻りはできなくなる。

 マトやアンドロやパリサイドといった区別が生き続けることになって、私たちの未来に禍根を残すことになるのではないか。


「つまり、出自的な少数者を優遇すべきではないという意見です」

「ふむ」

「しかし、議論は白熱しました。特にタァーレルとレイミは譲ろうとしない」



 そもそもがっぷり四つに組んだ議論に慣れている者は少ない。

 どうしても、議論の決着を模索することより、自説を通すことにのみ意識は向かってしまう。

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