105 墓荒らし?
結局、女の口から意味のある言葉は発せられなかった。
女を部屋に残し、チョットマはスミソと部屋の前に設えられたベンチに並んで座った。
ボニボニは、男の方の部屋に入っていった。
「スミソ、この人……」
チョットマは女の顔に恐怖があると感じていた。
捕えられ、椅子に縛り付けられて小部屋に監禁されては無理もないが、少し違うニュアンスの恐怖が。
「ん? なんだ?」
「本当に盗んだのかな」
落ちていた物を拾っただけなら、それは罪になるのだろうか。
結局、ポケットの金貨のことは誰にも話せていない。
居心地は悪いが、今のところしかたがない。
「さあな。それはコリネルスが判断することだろう」
「でも、あそこで捕まったということは、罪にはなるんでしょうね」
部屋の扉から目を離さないスミソ。
目の隅で見ると、今まで見たこともない厳しい顔をしている。
「当然だろ。現在、レイチェルの指示を守らないことは重罪に値する。この状況下で、市民が勝手な真似をし始めたら、収拾がつかなくなる」
「だよね」
こんな脆弱な社会構造の中で、統制のとれた市民の行動だけが、未来に繋がる希望だ。
「だんまりを決め込んでいる態度自体、気にくわない」
「男の方はどうだった? 何か話した?」
「少しだけな」
「教えて。駄目?」
スミソが、チラリとだけ目を向けてきた。
「いいよ。チョットマはボニボニに気に入られてここにいるんだから」
男は傲然とした態度で、こう言ったという。
「この墓荒らし共め!」
「墓荒らし?」
「ああ。俺達に指を突き付けてな」
「そっちが墓荒らしじゃない、って言ってやった?」
「いいや。ボニボニの方針は違うようだ。相手を興奮させない。穏便ムードだ」
「ふうん」
さっき見たボニボニの震えは何だったのだろう。
そうか。
必死で怒りを抑えてたのね。




