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メニュー6 『あなたですよね?』


短いです。




 公式戦の日が段々と近づいている中、とうとう学校は全校での部活動の禁止を決定した。


 犯人が捕まっていない以上、生徒の安全面を優先した結果だった。大会などが近い部活は悲痛な叫びを上げている。


 犯人は捕まらず、されど被害者はどんどんと増えていっている。中には背中を刃物のようなもので切られた人もいるということだ。犯行が段々エスカレートしていっている。



 誰もが犯行逮捕を心待ちにしている。でもこれといった証言も、手掛かりとなる物証も何もない。



「そして部活動がなくなっても私の甘美な時間はやってこない……」



 悲しい、悲しすぎる! 何故こんなささやかな願いが叶わないのか……。先輩達は悔し涙を流して『お願い手塚様! 貴女だけが私達の最後の砦なの!! たとえ部活動がなくなっても私達空手部に勝利を!』なんてどこの戦場なんだろうと思ったことか。



 しかも、部長は何故か実来を様付けしていた。

 解せん。



(でも……入部した以上は皆の役に立ちたいしね………)



 仕方ないと思いながらも実来の顔はほころんでいる。何だかんだと言いながらも実来はこの生活を楽しんでいるのだ。


 でも喫茶店~彩~のスイーツと紅茶が飲めないのは本当に辛い。何のために弟に馬鹿にされながら一生懸命お小遣いを稼いだのかが分からない……。



「はぁ」



 思わずため息を吐いてしまった、まさにその時だった。未来の背後に人の気配を感じたのは。



「…………」



 自然と背中がピンと張り詰めるかのような緊張感が全身を巡った。ただの通行人相手ならば未来もこのような反応はしない。だが、実来には分かる。未来を見ているこの人には明らかに悪意のようなものを向けていることを。


 その人はゆっくりと実来の方へと近づいてくる。そして───、



「ねぇ、あなたですよね?」



 あのセリフが実来の耳に届いた瞬間、すぐさま走り出した。



(相手が余程の有段者でもない限り負ける気はしないけど、相手が何を持っているか分からないし!)



 怪我をしないとも限らないし捕まえられるとも限らない。先輩達が気合いを入れている公式戦までもう日にちもない。


 ここで下手なことをすれば最悪───実来が公式戦に出られなくなる可能性だって生まれる。



(だったらいっそ逃げた方がいいに決まってる!)



 だから最初から噂の変質者に出会うことがあったら逃げると決めていた。本当に変質者本人かどうかは分からないが少なくとも実来の知っている声ではなかった。だからそれだけで十分。


 実来の足は鍛えてある分かなり速い方だ。ノーリアクションからのスタートダッシュ。



(そう簡単に反応も出来なければ追いつくなんて─────


「見つけた見つけた………ようやく見つけたぁ!! やっぱりお前か!!」


    ──────え?)



 その声が聞こえたのはほぼ真後・・・ろから………有り得ない! 足音なんてしなかったのに!? ────いや、今も足音なんて、ない?


 この時点で、実来はようやく後ろを振り返った。



「!?」



 長い前髪で顔がよく分からないが、確かに実来の背後には女がいた。くたびれたスーツに陰鬱の空気を纏った噂通りの年配の女の人が。いや……問題はそこではない。



「っつ!! この人!」



 足音がしないわけである。

 その女性は実来の背後をぴったりと『飛んでいた』。宙に足が浮いている───!!



「うっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」



 耳障りな笑い声が辺り一面に響き渡った───。












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