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一丁目のほとり ー悪魔との対話形式による日常記ー  作者: 蘭鍾馗


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【日常の35】青臭さの価値

 この間(ていうかだいぶ前になるど)、筑波実験植物園に行ったらね。


 ◇


「行ったら?」

 カカオが実になってたんですよ。

「あの花の写真載せたやつ?」

 そう。おんなじ木に実がついてた。


<カカオの実>

挿絵(By みてみん)


「意外と大きいわね。ハヤトウリみたい。」

 さすがばばさま渋いもの知ってるね。

「でも、どっかで見たことあるわこれ。写真じゃなくて多分絵だと思うけど。」

 あれじゃない?チョコレートの箱。

「そうだあれだわガー〇チョコレート」

 赤いやつね。

「この実の果肉がチョコレートになるの?」

 いや果肉じゃなくて、種がチョコレートになる。コーヒーとおんなじだよ。

「なるほど。」

 これを果肉ごと発酵させてチョコレートにするんだって。

「ふーん。これが最近世界的に不作なのね。」

 そうらしい。最近の異常気象で熱波とか旱魃とかが来て、それで木が弱ったところにウイルス性の病気が流行ったらしい。

「熱波でやられるんだ。熱帯産なのに。」

 生育の適温が21~32℃らしいから、高すぎても駄目なんだよ。

「生育適温思ったより低めなんだね。冬さえどうにかすれば日本でも育ちそう。」

 挑戦してる所もあるみたいだよ。

「日本の夏の暑さで枯れたりしてね(笑)」


 ◇


 ところで、最近、暇なときはYTmusicで音楽聴いてるんだけどさ。


「前に自作の小説『ヘネラリーフェのほとり』のサントラ盤(笑)作ったあれね。いつも何聴いてるの?」

 バッハとか、アルベニスとか、バリオスとか、パコ・デ・ルシアとか。

「全部ギター関係だねそれは。」

 アルベニスとかはピアノも聴くけどね。

「そればっかで飽きないの?」

 いや、実際時々飽きるんですよ。

「やっぱり。で、飽きた時は何聴くの?」

 サザンとかポルノグラフィティとか。

「……意外と振れ幅大きいわね。」


 でね。

「で?」

 この間、りりィのアルバムを見つけたんですよ。

「りりィ?誰だっけ?」

 昔、『私は泣いています』がヒットしたんだけど覚えてないかな。

「あ………かすかに覚えてるわ。ハスキーな声のフォークシンガーよね。」

 それな。

「で、久しぶりに見つけて聴いてみて、どうだった?」

 歌詞がね、うわあ、って声が出そうになるくらい青臭かった。

「やっぱり(笑)」

 でもね、その青臭さがいいな、とか思ってしまった。


 ◇


 昔聞いた時も気恥ずかしい感じがしたくらい、青臭い歌詞なんだけど。

「なんだけど?」

 今聞くとね、それがなんかいいんですよ。

「そうなんだ。」

 で、おんなじ青臭い歌詞が、昔聞いたときは気恥ずかしかったのに、今はちっともそんな感じがしない。それはなんでかな、とか思ってね。

「なんでなの?」

 若い頃はさ、そういう青臭い世界にリアルタイムでいたわけですよ。

「リアルタイムで。」

 つまり、歌の内容と自分の生きてる世界が、割と近かった。

「近かった。」

 だから聴くと気恥ずかしい感じがするわけですよ。

「なるほど。」

 でもねえ、この年になると、そういう世界は自分の人生と関係ない絵空事の世界になっちゃう。

「なっちゃったかー。」

 そうするとね、この青臭い世界を、純粋にアートとして楽しめるようになるわけですよ。


「なるほどね。なんかわからないでもない。」 

 でもそれは、自分がジジイになったという証拠でもあるわけで。

「……そうね(笑)」


 ◇


 でも、普段時々聴いてるポルノグラフィティも、あれ歌詞が結構青臭いんだよね。

「うん、確かに青臭いとこあるね。」

 だから、自分でも気づかないうちに、すでに『青臭さ』をアートとして楽しんでいたんだぞ、と。

「ジジイになってたんだぞ、と。」

 そういうことです。自作品でもひとつだけ青臭いのがあるけどさ。

「あれね。『告白のロマンサ』。」

 あれ書いてる時なんか楽しかったんだよなー。

「書きながら青臭さをアートとして楽しんでいたのね。わがことじゃなくなったから。」

 多分ねえ(笑)。


 ◇


 はい、今日は青臭さについての一考察でした。

「じゃ、そんな感じで。」

 またね。


 

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