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235  作者: Nora_
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08

「ふぅ」


 結局、集まってしまえば意識はこちらには向かなくなるから楽でよかった。

 なにかを刺激できるかもしれないという考えもすぐにどこかにいったけど、煽って楽しみたいわけではないからこれでいい。

 いまは朝ご飯のような早いお昼ご飯のような、曖昧な時間に飲食店でご飯を食べて休憩中だった。

 だけどこれには仕方がない面もある、何故なら三人がトイレにいってしまっているからだ。

 だから私は他の人からすれば暑い外で待っていることになる。


「待たせたな」

「おかえりなさい」

「あっちにいるから佐藤もいこうぜ」

「ええ」


 身長差が少しあって遠くから見るとあの二人は余計に姉妹みたいに見えてくる。

 そういうのもあって鈴木さんが中央を歩いていたりするとそれはそれで面白かったりもする。

 まあ、そうなると私が入る場所はなくなるものの、見るだけの方が慌てずに済むからいい。


「今日は水着を買いにきた」

「おお、早くも夏を楽しもうとしているね?」

「静でも藍でも瑠伊でもいいから僕の水着を選んでほしい」

「任せてっ」

「自信はないけどそれでもいいなら」


 少し驚いたけど夏らしい話だから全く問題はなかった。

 海辺までいくことに比べたら距離もあるわけではない、寧ろ飲食店からすぐ近くにあるからもう少し距離があってもよかったぐらいだ。

 お店の中にはそれなりに人がいる。


「待っててね、縫ちゃんの水着を選んだら瑠伊ちゃんの水着も選んであげるから」

「それなら任せるわ」


 去年までなら選んでもらうこともできていなかったから甘えようと思う。

 見るだけの方が慌てずに済むのはそうだけど拒みすぎても違う、別におすすめをされても買わなければいけないルールはないのだからそう警戒する必要もない。

 そもそもここに過激な商品がないのも影響している、あからさまに子ども向けの物が選ばれない限りは安全なのだ。


「なあ佐藤、ここにあるどれもが私に似合いそうにないんだけど……」

「そんなことはないわよ、そうね……あ、例えばこれ、あなたに似合っていると思うわ」


 明るめでも暗めでも彼女に似合うだろうからとりあえず近くで一番これだという物を手に取る。

 そのまま彼女の方を見てみたらうわあといった顔をしつつ「真っ白い水着を勧めるとか悪魔かよ……」と、まあ、似合いそうにないなんて言っていたぐらいだから予想できた反応ではあるけどね。


「必要以上に悪く考えてやめようとするのは駄目よ」

「それ、佐藤に突き刺さらないか?」

「そうよ、だから周りの子には同じようになってほしくないから言っているの」


 一瞬ドキッとしたものの、冷静に対応ができてよかった。

 彼女はたまに言葉で刺してくることがあるから尚更やめさせるつもりはなくなった、一箇所だけだともったいないから色々と見て回っては似合うと思う物を選び続けた。


「わ、わかった、わかったよ、じゃあ最初のあれにするわ……」

「そう、いいことね」

「前もそうだったけど一度スイッチが入ると佐藤ってやばいよ……」


 私はやばいらしい。

 とにかく、私も誰かのために選べたことが大きかった。

 だから一人で満足していると「待たせたね、さ、きみの水着を選ぼうか」と静子さんが来てくれた。

 でも、先輩がいなかったから探そうとしたら「疲れたみたいだから外で休憩するらしいよ」と教えてくれたので安心した。


「それより熱心に藍佳ちゃんの水着を選んでいたけどあれはどういうこと?」

「これまでできなかったことをできると思ってつい興奮してしまったのよ」


 受け入れていたのか嫌がっていたのかはわからない、それでも最後まで付き合ってくれたから感謝している。

 狙ったわけではないとわかっていても面倒くさいこちらのためにわざと言葉で刺したのではないかと考えていた。

 前々からこちらのことを考えてくれているから、ほとんどが願望であっても全てが外れているわけではないだろう。


「それだけならいいけどそれ以外の感情があったら私……嫌だな」

「それ以外の感情って?」

「それはほら、どうしても藍佳ちゃんの水着だけは選びたいみたいな……そういうのがさ」

「たまたまよ、縫先輩が遠慮をしようとしていても同じようにしていたわ」

「それも縫ちゃんから聞いたけどまさか一人でいくなんて……」


 そうか、真夜中に彼女を回収して先輩は鈴木さんのお家に泊まっていたわけだから気になるか。

 急に出ていって特定の人物とこそこそしていたら、私の場合の相手がそう動いても気にならないけど彼女は違うのだ。


「だって縫ちゃんのことも名前で呼んでいるんでしょ? それじゃあ私がいない間に急激に仲がよくなったみたいじゃん」

「自分だけ名前で呼んでいるのが気に入らなかっただけじゃない?」

「絶対に違うもん」

「とりあえずお店にいるなら商品を見ないと、ちゃんと逃げずに付き合うわよ」

「はぁ、ちゃんと守ってよね」


 十分ぐらい見て回ってもこれだという物がなかった、と言うよりも彼女が完全に選ぶ気がなくなっていたから出ることにした。

 まだまだ時間があるからそのままプールか海へとなったところで「ちょっと待った」と止めた彼女によって二人から離れることになった。

 理由を聞いてみたら私だけ水着を持っていなかったからだけらしいけど、本当かどうかはわからない。

 待たせるわけにはいかないから一人で走って戻って水着を取ってきた、話し合いをした結果、海にいくことにしたみたいだった。


「プールでは駄目だったの?」


 海にいくことを言い出したのは彼女らしいのでまた聞いてみた。


「プールはほら、入場料がかかるから。それに家に帰らなければこそこそされなくて済むし」

「その割には一人でいかせてくれたわよね?」


 必死に走っているときの顔を見られたくなかったから助かった形となる。

 あとはあれ、一緒にいっても私の運動能力が低くて距離ができてしまっていただろうからあれが一番だった。

 ポンコツさに関しては自信があるからわかるのだ、私は彼女達には追いつけない。


「だって束縛したら瑠伊ちゃんはどこかにいっちゃうもん、だからこういうことで少しずつ時間を貰うしかないんだよ」

「よくわからないわね、私達なんていつも一緒にいるじゃない」


 四人で行動をしているときは見て回る側になろうと考えていても一回も成功したことがない。

 みんな優しいから絶対にこちらにも話しかけてくれる、私は自分に甘いからそのまま甘えてしまうのだ。

 お出かけの最中、こちらに来てくれているときに〇〇さんを優先した方がいいと言うのも違う気がするのもあった、もう何回かやらかしてしまった気はするけれどね。


「静、瑠伊を取らないで、瑠伊も静とばかり話さない」

「ごめんなさい」「あっ、やっぱりっ」

「なにを勘違いしているのかはわからないけど僕はただ瑠伊に相手をしてもらいたいだけだよ、だって静と違って一緒の家に住めているわけじゃないからね」

「うっ」


 正しいから黙るしかない、少なくとも私ならそうだ。

 結局、海辺まで歩いているときは先輩と会話をしたり鈴木さんと会話をすることで終わった。

 流石にこれ以上はということで意識を向けるとこちらを睨みながら泣いている静子さんがいて……。


「はぁ……静って想像以上に子どもなのかも」

「ちょっと話せなかっただけなのになー」

「仕方がない、藍佳、二人で着替えにいこ」

「おう」


 なにをやっているのか……。

 付いていくわけにもいかなかったから近づくと急に抱きしめられた。

 水着ならそのまま海に入ることで雫も流せたけど服を着ている状態ならそうはいかない、少しずつ濡れていくのがわかる。

 キンキンと頭に響くような声を出して叫ぶようなこともせずに彼女は静かに泣いているだけだった。

 最初もそうだけど別に煽りたいわけではないのだ、だから話してくれるのをただ待つしかない。


「……ちょっと落ち着いた」

「それならよかった」


 それでも彼女はこちらにくっついたままだ。

 当然、こんなことをしていれば二人もすぐに戻ってくる、水着の方は本当によく似合っていた。

 こちらだって歩いたからには、いちいち取りにいったのなら水着を着て遊びたいと考えているから動こうとするけど……それ以上の力で彼女が抵抗をしてくるから無理だった。


「岩とフジツボ」

「そんなことを言っていないで早く剥がそうぜ、服を着ていない分、直で当たって暑いんだよ」

「了解」


 二人も加われば流石に抵抗をするべきではないと判断したのかあっさり動けるようになってお礼を言う。

 運ぶのも楽だった、着替えさせるのも疲れたりはしなかった。


「お待たせ」

「ほう、いちいち買わなくてもいい奴を持っていたみたいだな」

「瑠伊は細いね、ちゃんと食べているの?」

「食べていますよ、静子さんと違っておかわりをできる余裕はありませんけどね」


 夏なのに人がいないから落ち着く、脱げば脱ぐほど暖かく感じる。


「よしっ、準備体操終わりっ、縫先輩いこうぜ!」

「ん、いこう」


 悪い影響が出ている、鈴木さんが本当に先輩と楽しみたいだけならそれでいいけれどね。


「静子さん、私達もいきましょう」

「……瑠伊ちゃんが呼び捨てにしてくれたらいく」

「え、じゃあ静子、いきましょう?」


 求められたら別で片付けられる。

 抵抗されると考えていたのか少し驚いていたような顔をしていたものの、すぐにいつも通りの元気な彼女に戻って「いくっ、いこっ?」と。

 私は楽しそうにしていたり、嬉しそうにしてくれている彼女がやはり好きだ。


「うーん」

「どうしました?」

「藍佳の水着は瑠伊が選んだ白色、静のも白色、僕のは黒色だよね?」

「はい、そうですね」


 心配なのはこの三人がちゃんと日焼け止めを塗ってきているのかどうか、ということだ。

 焼けてしまってお風呂で後悔したことがあったから気を付けている、だから三人もそういう経験があって対策をしてくれていればと考えずにいられない。


「なのに瑠伊の水着は……これなに色?」

「え、派手じゃない緑色としか……母が買ってきてくれた物なので詳細までは……」


 中学生のときから使用している物だからつまり全く成長していないことになる。

 唯一褒められる点は無駄な肉がついていないこと、胸にもないからプラスマイナスゼロみたいな感じだけど太っているよりはいいだろう。


「お店で買わせるべきだった、これはすっきりしない」

「色なんて問題ないですよ、空気を読んでちゃんと付き合いますから許してください」

「むぅ」


 なにを言ったところでいまから変わったりはしない。

 どこに移動をしても睨まれるから鈴木さんの後ろに隠れることにしたら先程と変わって凄くいい匂いがした。


「これはどういうこと?」

「別になにもしていないぞ」

「暑い暑いと言っている割にあなたっていつもそうよね」


 もちろん、弱らない方がいいとはわかっている、それでも気にしないのは無理だ。


「前も言ったけど対策をしているだけだ。されより佐藤、いや、瑠伊は想像以上に……細いな」

「藍佳だって同じじゃない」

「心配になってくるよ」


 小さい子どっもというわけでもないのにずっとこれ、卒業まで心配されて過ごすことになるのだろうか? 冗談か本気か、あの二人が変なことを始めてしまったから私の方が彼女の心配をしているぐらいなのに。


「それよりあなた、縫先輩に興味があるのよね?」

「またそれか、ただ仲良くさせてもらっているだけだよ」

「なにもないならいいの」


 手を掴んで連れていく。

 まだ不満そうな顔をしていた先輩の手も掴んで何故か寝転んでぼうっとしていた静子のところへ移動した。


「誰も入ろうとしないのはなんで?」

「水が嫌いとかそういうのじゃないよ? ただね、試しに寝転んでみたらこれが想像以上に気持ちよくてねえ」

「僕はまだ納得がいっていないだけ」

「私は瑠伊に無理やり水の近くから離されたからだな」


 最後のそれは無視をして遊んでもらうことにした。

 私はもう水着を着られたことで満足できてしまったから座って待っておくことにする。

 その際、静子の真似をしてみたらとにかく眩しくてやめておいた。


「ふぅ、色なんかどうでもよかった、自分のせいで時間を無駄にするところだった」

「そうですよ」

「でも、正直に言ってそれよりも気になることができたからだよ。瑠伊、静と仲良くしすぎじゃない?」

「最近はずっとあんな感じなんです、静子は縫先輩や藍佳といることを気にしているみたいですが」

「朝のあれ、冗談じゃないからね」


 やたらと真剣な顔……だけど私的にできることはなにもない。

 これも言ったことだ、適当ではないからだ、ただ、先輩が自分のしたいように動くことについてはコントロールなんかできないからやっぱり変わらない。


「後で文句を言ってこないのであれば構いませんよ」

「むかついた、それって揺らがないからこその発言だよね」

「適当ではありませんからね」


 静子も争いたくないのか二人きりのときだけこういう話をしてくれるのがいい。

 私が先輩といても「なにをしているの!」と突撃をしてこないのがいい。

 これは私と先輩の問題で静子は関係ない、二人で言い争いをするようになってほしくない。

 でも、私からしたら二人が付き合うか藍佳が頑張ってくれるのが一番だからもっと上手くいかなくなるのが難しいところだった。


「覚悟しておきなよ」

「あ、あの、そんな抱き着きながら言われても……」


 口には出していないけど脱いでより暖かくなったことには変わらない、だけどそれと恥ずかしいかどうかは別なのだ。

 ほとんど着ていない状態で抱き着かれたら恥ずかしい。


「ちょちょちょっ、なにをしているの!」

「甘えているだけだよ」

「ずるいっ、藍佳ちゃんもそう思うよね!?」

「だな」

「あれ、藍佳もライバルだった?」


 集まれば大丈夫かと思えばそうではなかった。

 寧ろ人が集まったのにそのままで物凄く恥ずかしくなってしまったのだった。

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