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夜の女神ってえっちぃ響き、あ、違う?



「はぁ...」

僕は学校の食堂で溜息をついてしまう。

派遣依頼を受けていた間にあった試験にルカがパスしていたのだ。

これでルカは、あと2回で3年生に進級できる。

「次もパスできるとは限らないだろ。そんな目で見られるのは心外だ」

「うん、ごめん。ルカは悪くないよ」

ルカとランチすることが多い僕は今日もルカと2人だけで食堂に来ていた。

ちぇー、いいな。

ま、次、頑張ろ。


気を取り直したところにアノン殿下がデザートを置いた。

「派遣、お疲れ様。これは御褒美だよ。うちの者も治癒してくれたらしいしね」

「ありがとうございます。いただきます」

特別優秀者のリングのお陰で何でもタダ食いできるけど奢りは気分が違うよね。

殿下は、そのまま空いていた椅子に座ると背をもたれて足を組む。

なになに、王族オーラ漂わせてると食べにくいんですけど。

ルカも落ち着かなそうだ。


「あの、何かお話でも...?」

「うん、やっぱりキミさ、卒業したら、うち来ない?」

今日、学校終わったら寄ってかない?みたいな軽いノリだな。

「それはお断りしたはずですけど」

「足、くっつけたんだって?」

「...あぁ、はい」

「すっごいね。そんなことできるのは、この国でも5人もいないでしょ。リーデルだと3人もいないかなぁ」

「.....(前世持ちならできると思うんだけど)」

「夜の女神が、うちに来てくれたらオレの大手柄になるんだけどなぁ」

アノン殿下は、にこにこしているが適当な返事をして言質取った、とか言われそうで怖いとこあるよなぁ。

ん?

「夜の、何て仰いました?」

「夜の女神だよ。もしかして知らない?自分の二つ名」


知らねーよ。

なんだよそれ、ちょっとえっちぃ響きなんですけど。

まだ子供ですけど。

変なことした記憶ないんですけど。

「夜、ランプの灯りで見るキミが自分を癒してくれるんだよ?女神にも見えるでしょ。だから夜の女神。癒しの象徴たる神だからね」

あ、そっちか。

いかんいかん、前世の響きで聞いちゃったよ。

こっちの神様ね。僕はたいした信仰心ない罰当たり者ですけど。


「アノン殿下。アルフレートが困っている。食事中にどうかと思いますよ。アルフレート、ルカ、すまなかったな。食事を続けてくれ」

助かったよ、リリーロンド殿下。

いいとこで来てくれた。

リリーロンド殿下はアノン殿下の腕を掴むと自分たちのテーブルに戻っていく。

そんなことできるのはリリーロンド殿下だけだ。ありがたや~。


「なんかごめんね、ルカ。時間なくなっちゃうから食べよ?」

「あぁ、食べるけどさ。今の何だよ、夜の女神とか足をくっつけたとかリーデルへの誘いとか」

「うーん、夜の女神なんて僕も初耳だよ。足っていうのは冒険者の人が足が切断された状態で運ばれてきたのをくっつけただけだよ。リーデルに来ないか、て言われたことはあるんだけど、あのノリだし半分冗談かもね。まぁ一応断ったんだけどさ」

「.....」

「あの人、なんか掴めないというか、にこにこしてフレンドリーだけど腹黒そうだし、他国の王族なんて面倒くさそうで、あんまり関わりたくないよね」



◇◇◇◇◇◇◇◇



何が面倒くさいだ、何が関わりたくないだ。

デザート奢ってもらって自国に勧誘されるなんて、がっつり関わっているだろう。

あれは冗談なんかじゃない。

アルが、うん、と頷いたら、すぐにでも契約書にサインさせられそうな感じだったぞ。

こいつ、危機感うっすっ!

ヤバいくらいうっすっ!薄すぎて僕が何とかしてあげなきゃ、と思っちゃうくらい危険だ。


僕の横の方のテーブルで女子生徒がざわついている。

アレだ。”虹の会”のメンバーに違いない。

僕も取材と称してアルのことを聞かれることがある。

昨日は、いつものお礼と言ってアルと僕が精巧に描かれた絵のようなものを渡された。

写真魔法というらしい。

絵は背景がぼやけて描かれているが学校の中庭で談笑している僕とアルだった。

アルは、いつものアルだったが僕がすごくいい笑顔で楽しそうで...恥ずかしくなった。

アルと話しているときの僕は、こんな顔をしているのか。

そして、それを女子に見られているんだ...。


これは、ちょっと人には見せられない。

...はっ!?

もしかして、こんな精巧な絵が出回っているのか?

僕にくれるくらいだ。

きっと他にもあるんだろう。

どんな絵があるんだろう?

出所は“虹の会”なんだから、いろんなアルフレートが描かれているものがある...?

どんな絵なんだろう。

見たい。

すっげー見たい。

邪な気持ちからではなく、アルを守るために、どんな絵が出回っているか確かめる必要がある。

けど、メンバーではない僕に見せてくれないだろうな。


じゃ、メンバーになれば...?

いやいや、僕はアルの親友だ。

メンバーになどなったらその他大勢に成り下がってしまう。

...ではなく!

どんな絵があるのか確認するためにはどうすればいい?


そうだ!

情報提供の代わりと言えばいいんだ。

何か提供できるような話(ネタ)があったかな?

あ、今の話はどうだろう?

リーデルに行くなど”虹の会”のメンバーたちも阻止したいだろうし協力してもらうこともできるだろう。

今のところは”虹の会”に動いてもらうことなどないかもしれないが協力体制を整えておくのはいいことだ。

アルは甘、優しいから、いろんな人に「行かないで」とお願いされれば楔になるだろうしな。


そうだ、そうしよう。




こうしてアルフレートの情報は拡散していくことになります。

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