男がいいか女がいいか黙っているのがいいか
僕は夕食をとることができた。
実は回復系と攻撃系の魔法士さんたちは夕食をほとんど取れないらしい。
魔力回復薬でお腹がいっぱいになっちゃうから、なんだって。
僕と先輩は学生だから、そこまで無理しないようにと言ってくれたけれど目の前に傷ついてる人がいたら頑張っちゃうよねぇ...。
でも僕は魔力回復薬3本で済んだ。
食べながら支援系の魔法士さんにいろいろと教えてもらった。
攻撃系は朝食をたくさん取る。回復系は取れるときに取る。
回復系の魔法士さんは夜でも治癒の必要な人に少しずつ魔法を使っているので魔力回復薬の消費が一番激しい部隊なのだそう。
なんとなく攻撃系の方が魔力の消費が激しいイメージだった。
今回の魔物は統率が取れていてやりにくいそうで、そのせいで負傷者が多く魔法士養成学校から学生を派遣してもらうことになったらしい。
僕のことは既に噂になっているらしく「魔力測定棒を真っ白にできるつて本当か?」と聞かれた。
「はい」
「ふーん。前世持ちは、やっぱ違うな。将来は宮廷魔法士か?」
「そのつもりです」
「回復特化なら未来の回復系の隊長だな」
「珍しい回復系の団長もあるかもな」
「いやぁ、団長はさすがに攻撃系の隊長だろ」
「でも、こんな美人の隊長とか団長なんていいよなぁ」
「おい、にやにやし過ぎだぞ。ごめんな?こーゆー所に来ると、ちょっと、うーん、変なスイッチが入るというか、下なモードになっちゃうていうか、騎士や魔法士はちゃんと教育されてるけど入ったばっかりのヤツとか冒険者には気をつけた方がいい」
「いやいや、こんなこと言っているヤツこそ注意した方がいいんだ」
「あのー、お気遣いはありがたいですけど、僕、男ですし大丈夫かと思います」
「男?」
「なるほど?イケメンな隊長か。それもヨシ。やっぱリーダーは美形な方が恰好つくよな」
「でも男だと遠慮なくなるから男だなんて冗談でも言わない方がいいぞ」
「だなー、そんなウソすぐにバレるしやめとけやめとけ」
「顔の綺麗な男は、そっちの男にカモにされる可能性あるしな」
「魔力測定棒を真っ白にするようなヤツなら返り討ちだろ」
「でも回復特化なら、なぁ?騎士が相手ならヤられちゃうことあるみたいだし」
おや?男だと言ったのは冗談だと思われてる?
けど顔の綺麗な男の人は危険なこともありそう?不穏な気配を感じたぞ。
じゃぁ、女の子だと思われていた方がいいのかな?
いや、ルディさんは知ってるし、うーん、どうしよう?
などと考えている間に話題は他のことになっていた。
魔力測定棒を真っ白にした、ということは、あっさり信じて僕が男の子だということは冗談にしてしまうのは納得できないけれど...ま、いっか。
僕はちゃんと言ったからね、男だよ、て。
◇◇◇◇◇◇◇◇
足をくっつけて女の子は「じゃ、まだ仕事の途中ですから」と行こうとする。
え!?魔力使い過ぎてふらふらだろうに。
現場への派遣で張り切っているのかな。
が、女の子は魔力回復薬を勧めるも、自分も1本あるから、と断って行ってしまった。
その足取りはしっかりしていて、ふらふらなんてしていない。
オレは同僚と顔を見合わせた。
「あれ誰?」
「養成学校からの派遣だろ。にしても凄い美少女だったな」
「それもそうだし、こんなことしておいて魔力、全然...」
「あぁ、なんてことない感じだったな。きっと前世持ちだよ、団長みたいな」
「あぁ、そっか。そうだよな」
更に、この美少女は夜の女神と呼ばれるようになる。
夜もケガ人たちを見回って水や薬湯を飲ませたり、痛みや熱をとったりしているからだ。
ランプの灯りで見る少女は神々しさも感じる程らしい。
それが自分たちを癒してくれるのだから誰が言い出したのかわからないがオレが聞いたときには既に夜の女神と呼ばれていた。
夜の女神は癒しの神とされている。
彼女にぴったりの呼び名だ。
が、彼女たちが任務を終えて帰った後、別の噂が流れてきた。
あの美少女は実は男の子だったという話だ。
まぁ嘘だろう。
噂というのは面白おかしくなるものだ。
どうせ、女神の才能に嫉妬した誰かが流したものに違いない。
魔力測定棒を真っ白にするような女神にオレたちのような凡人が嫉妬など実にくだらない。
少女という見た目に惑わされてはいけない。
魔法士なら、よくわかっているはずなのに情けないことだ。




