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第二次サイバー世界大戦  作者: 柏倉


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終章 ~児玉孝一VS量子計算情報処理省~(5)

 少し離れた場所で、聞くとはなしに話を聞いていた香奈は唖然呆然の後、愕然としていた。

 孝ちゃんの窓口になる?

 しかも私的な?

 もうトラブルまっしぐらだよ~。

 それにしても、アタシだけじゃ無理だなんて・・・よく分かってるじゃないの。アタシが担当したら監視だけして、孝ちゃんに案件なんて絶対紹介しないし、危険には近づけさせないようにする。それがアタシの安全に繋がるしね~。

 案件なんてボカした言い方してるけど、トラブルの言い換えに過ぎないし。真田さんが担当なんかしたら絶対、絶対、絶対にトラブルと友達になる。しかも奸智に長け、組織の動かし方を熟知している門倉さんに、逐次トラブル報告が上がるようになるよね~。

 官僚としては、ちょっとしたトラブルで終わりにしようと、臭い物に蓋をするが如き処理する案件。それが絶対、絶対、絶対に大事へと発展するに決まってる。

 はぁ~~~・・・アタシの普通のらくらく公務員ライフが・・・。

「里見さん、確か児玉君に協力する予定だったね」

「はい、手が欲しいって言われてますね~。今からでも断りましょうか?」

 香奈は「アタシは自分から、危険トラブル事故事件には近づかない主義なので!」と、心の中で呟きながら答えた。

「いや、真田君も協力者として連れて行ってもらいたい」

 断りたい一心で、無駄と知りながらも抵抗を試みる。

「ん~。要らないって言われてるんですよねぇ~」

「さあ、一緒に行こうぜ。何かしらヤル事はあるだろ? 別に、買い出しでも何でも対応する。ハッキングセンターとの折衝もあるかもしれないしな」

 相変わらず、なんで無駄に余計なヤル気を出しますかね~。

 今、そんなヤル気は要らないんです!

 ヤル気はアタシを守る時とか、食事とかを奢る時だけにしてもらいたいんですけど!

「それじゃあ、二人ともよろしく頼むね。特に真田君、ハッキングが終了した時刻から2時間後以降なら、何時でも再開して構わないから。まあ、児玉君の準備もあるから、2時間後からの再開は無理だろうけどね。まあ、攻略方法を検討もせず、すぐに再挑戦するようなら、いくら何でも子供に過ぎる。ん? 高校生はまだ子供か・・・」

「ははは、門倉さん。孝一君は、接頭辞に《生意気な》が付く子供だぜ」

 あぁー、誰もアタシの意見は聞いてくれないんですねぇ~。

 知ってましたよ。

 ヤレば良いんですよね! やれば!!

「門倉さん、部下は必ず守ってくださいね!」

「管理職になったらね」

「言質とりましたから。真田先輩は、物理的に守ってくださいね! アタシの肉壁として!!」

「・・・守りたくなくなる依頼の仕方だぜ。せめて肉壁はやめろ」

「すみません。本音がでちゃいました。建前としては・・・」

 香奈は栗色セミロングの髪をふわりとさせ、右手人差し指を頤にあて言葉を継ぐ。

「アタシの騎士として活躍してくださいね~」

 わざとらしく、あざとい仕草で真田にお願いしたのだった。


 真田と里見の二人がハッキングセンターへと向かった後、サイバー作戦隊の活躍動画を見ながら門倉は考えていた。

 ボクに足りないのは三枚堂さんのような大胆さだった。閣下は発生した問題を、バカバカしいと感じさせる程の大きな事件にして解決したのだ。

 大事件にするから、全員が知ることになる。

 発生した問題を隠したいヤツ等は、解決した者を組織の中心から遠ざける。それ以上の問題を発見されないために。

 しかし、全員に知られてしまったら、解決した者を不遇に扱う訳にはいかない。そんなことをすれば、その人物と解決した問題に注目が集まり、更なる問題が発見される。そして問題が発見されたら、隠蔽工作した者は裁かれるだろう。

 ボクが財務省にケンカを売った時、極一部の関係者以外に知られず省の中心から外された。しかし三枚堂さんは、第一次サイバー世界大戦で量子コンピューター研究開発機構が攻撃を受けていた時、霞ヶ関向けの通信を物理的に遮断した。

 その結果、行政は滞り、国会の日程にすら影響を与えた。そして、自らが通信を遮断の指示を出したと、正々堂々と各省庁へ公表したのだ。

 ボクが中途半端だったのか・・・。

 ヤルんだったら、三枚堂さんのように徹底的に大事へと発展させる。もしくは繊細かつ周到に準備し、素早く実施し、決して気づかれないように対処を完了させる。

 門倉が思考に耽る間に、動画は終了に近づいていた。

 砲塔の曲がった高出力指向性電磁波照射装置“指電”を搭載した大型EVが大写しになる。その大型EVを前にして、第4電磁波班の全班員が整列し敬礼した。

 そして班長の渡辺が厳かに明言する。

「ソルジャーは後ろに倒れない。前に倒れた」

 第4電磁波班の大型EVが大型トラクターに特攻した。大型トラクターの車体とタイヤの隙間に、指向性電磁波を照射する砲塔を突き刺さった。

 そこから動画はエンドロールに移った。

 エンドロールでは、大型トラクターを阻止する前後の映像を流し、参加メンバーの役職と氏名が流された。そして最後に“ソルジャーは後ろに倒れない。前に倒れた”の文字だけが画面中央に表示され、終了したのだった。

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