第42話:のこりもの
空の向こうからやって来たお二人が去った次の日、いい天気のお昼前。
私と彼は、お客さんが帰った後の家の片付けをしにいった。
「もう。今日は朝からお掃除って言ったのになんで遅れてくるの」
「これからどうするか考えてたんだよ。頂上のこととか、あいつらのこととか」
「それは考えないといけないけど……今じゃなくてもいいでしょ」
「ここの片づけこそ今日じゃなくていいだろ。どうせしばらく空いてんだからよ」
いつものように言い合いをしながら、本当に人が住んでいたのかわからないくらい前と違わない部屋を眺めた。
しばらく部屋にこもってなにかしていたのに。不思議だった。
「なんだ、片づいてんじゃねーか」
「そうだね、これなら軽くでいいかも。……あれ?」
部屋を眺めていて、隅に見覚えのない大きな箱があることに気づいた。
箱の雰囲気はお二人が持っていた不思議な道具に似ていた。
なにかと思っていると、彼もそれが気になったみたいだった。
「これ、前からあったか?」
「ううん」
「……なら、あいつらが置いていったのか」
しばらくの間、二人でその箱を見つめていた。
なぜかはわからないけど、この箱は私と彼の二人が開けるべきだと感じた。
「開けるぞ。反対側をたのむ」
「うん。落とさないようにね」
二人で慎重に、箱のふたを取り外した。
あの人たちが置いていったものなら危ないはずがない……そう思った。
けれど……どうしてか。これを開けると、すべてが変わる予感がした。
―――箱の中には未来を描いた宝物があった。
訪れる災害への警鐘と、終末に対する備え方。
それは私たちに知識を授けた標という贈り物。
その内の一頁には、二つの名が記されていた。
決して忘れない、忘れてはならない二人の名。
蒼い魔女の名はアニエス・サンライト。
輝く御子の名はフィーネ=ノヴァ・コスモス。
永久の伝承に名を遺す、宙を廻る二人の旅人。
魔女と御子の『遺り物の星』での物語は、これでおしまい。
当初は2万文字くらいで終わるだろうと思っていたらまるで収まらず。
最終的な文字数は約9万文字以上の大事故と相成り、更新頻度の少なさと合わさって異次元の時間がかかりました。
だからというわけではありませんが、次回更新からしばらくは短編~中編区切りで更新していく予定です。
基本的には一つのところにとどまらず、二人が色々な星を旅する事となります。
また、この小説は全編通しで読まずとも一つの章(星)ごとになるべく楽しめるようにするつもりでいます。
が、物語の時系列は基本的に掲載順通りなのと、アニエスとフィーネの物語や世界そのものの物語については全体を通じて描いていく事になりますので、あしからず。
次の物語は『星を渡る舟』。
二人の旅の道中の話で、更新は数日後(の予定)。
それでは、今後とも二人の旅をよろしくお願いします。




