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家族に内緒でダンジョンに潜っていたら、いつの間にかCランク探索者になっていた件  作者: バモス
第一章 家族に内緒のダンジョン配信

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第34話 岩鱗の巨獣、斬鉄剣の威力

《秩父西部渓谷ダンジョン》第二階層の岩場に、低い咆哮が響き渡った。


信太とレイナの前に現れた大型ロックリザードは、全長四メートルを超える巨体を持ち、背中から尾にかけて岩のように硬い鱗で覆われていた。太い四肢には鋭い爪が生え、その重量を支えるだけの強靭な筋肉が備わっている。


信太は刀を構えながら、相手の動きを慎重に観察した。


ロックリザードは頭を低く下げ、二人を威嚇するように尾を左右へ振っている。単純な突進だけでなく、尾による薙ぎ払いにも注意が必要そうだった。


隣に立つレイナが双剣を構え、落ち着いた声で尋ねた。


「シンタさん、予定どおり私が注意を引きつけますね?」


信太は頷いた。


「お願いします。ただ、尾の攻撃範囲が広そうなので、無理に近づかないでください」


レイナは笑みを浮かべた。


「了解です。シンタさんも気をつけてくださいね!」


その直後、ロックリザードが地面を蹴った。


巨体からは想像できないほどの速度で突進してくる。


レイナは素早く左へ跳び、信太も反対方向へ移動した。


ロックリザードの巨体が二人の間を通過し、岩壁へ激突する。


鈍い衝撃音とともに、細かな岩片が周囲へ飛び散った。


レイナは着地すると、すぐに側面へ回り込んだ。


「まずは動きを見ます!」


左手の剣で相手の注意を引き、右手の剣で後脚を斬りつける。


しかし、硬い鱗に刃が弾かれ、金属音が響いた。


レイナはすぐに距離を取った。


「やっぱり硬いですね!」


信太はその様子を見ながら、静かに頷いた。


「鱗そのものを斬るのは難しそうですね。関節を狙いましょう」


ロックリザードが再び咆哮し、太い尾を振り回した。


レイナは後方へ跳んで回避する。


信太も尾の軌道を見極め、地面を蹴った。


身体を低く沈め、尾の下をくぐるように移動する。


そのまま後脚の付け根へ刀を突き出した。


「右片手平突き・壱式」


鋭い突きが鱗の隙間へ入り込み、ロックリザードの脚を傷つけた。


巨獣が苦痛の声を上げ、身体を大きく揺らす。


信太はすぐに刀を引き、距離を取った。


レイナはその動きを見て、感心したように声を上げた。


「すごい! あの隙間を正確に狙えるんですね!」


信太は落ち着いて答えた。


「動きが大きいので、狙う場所は分かりやすいです。ただ、無理に攻めると危険ですね」


その間にも、配信用ドローンは二人の戦闘を撮影していた。


コメント欄には、驚きの声が次々と流れている。


『でかすぎるだろ!』


『第二階層で大型ロックリザード!?』


『レイナさんの剣が弾かれたぞ!』


『シンタさん、普通に鱗の隙間を突いてるんだが』


『あの精度どうなってるの!?』


信太はコメントを確認する余裕もなく、ロックリザードの動きに集中していた。


◇ ◇ ◇


ロックリザードは傷ついた後脚をかばうように身体を低くした。


しかし、戦意を失った様子はない。


むしろ、先ほどよりも激しく尾を振り回し、周囲の岩を砕き始めた。


レイナは双剣を構え直しながら、信太へ声をかけた。


「シンタさん、このまま関節を狙っていきますか?」


信太は少し考えた。


関節を狙えば確実にダメージを与えられるが、相手の巨体が暴れ続ければ、周囲への被害も大きくなる。


それならば、できるだけ短時間で決着をつけた方が安全だろう。


信太は静かに答えた。


「いえ。少し試したいことがあります」


レイナは興味深そうに目を輝かせた。


「もしかして、あの技ですか?」


信太は苦笑した。


「斬鉄剣ですね」


その言葉に、コメント欄が一気に盛り上がった。


『斬鉄剣きたああ!』


『待ってました!』


『岩みたいな鱗を斬るのか!?』


『これ本当にBランクの技なの?』


レイナは少しだけ真剣な表情になった。


「分かりました。私が相手の注意を引きつけます!」


信太は頷いた。


「お願いします。無理に攻撃せず、距離を保ってください」


「了解です!」


レイナは地面を蹴り、ロックリザードの正面へ回り込んだ。


双剣を交互に振るい、相手の注意を引きつける。


ロックリザードが大きく口を開き、レイナへ噛みつこうとした。


しかし、レイナは軽やかな足運びで攻撃をかわし、すぐに側面へ移動する。


巨獣の視線がレイナを追った。


その瞬間、信太は静かに呼吸を整えた。


刀を両手で握り、余計な力を抜く。


足裏から伝わる地面の感触を確かめ、股関節と骨盤の動きを連動させる。


斬鉄剣。


それは単純に力任せで硬いものを斬る技ではない。


刃筋を正確に合わせ、身体全体の力を無駄なく刀身へ伝えることで、対象を斬り裂く技術だ。


信太はロックリザードの側面へ踏み込んだ。


狙うのは、肩から背中へ続く硬い鱗。


通常の剣では弾かれる場所だった。


しかし、信太の動きには迷いがなかった。


「……斬鉄剣」


短い呟きとともに、刀が振り抜かれた。


次の瞬間、鋭い金属音が岩場に響いた。


硬い鱗が割れ、ロックリザードの肩口に深い傷が刻まれる。


巨獣は苦痛の咆哮を上げ、身体を大きくよろめかせた。


レイナは思わず目を見開いた。


「えっ……本当に斬った!?」


信太は刀を構え直しながら答えた。


「少し抵抗はありましたけど、何とかなりました」


レイナは驚いたように信太を見つめた。


「いやいや、何とかなったって……!」


コメント欄も大騒ぎになっていた。


『斬ったあああ!』


『あの鱗を普通に斬ったぞ!?』


『レイナさんでも弾かれたのに!』


『斬鉄剣って本当に存在するんだな』


『シンタさん、絶対Bランクの実力じゃないだろ!』


しかし、戦闘はまだ終わっていなかった。


◇ ◇ ◇


傷を負ったロックリザードは、最後の抵抗とばかりに尾を大きく振り上げた。


信太はその動きを見逃さなかった。


「レイナさん、下がってください!」


信太の声に、レイナは即座に後方へ跳んだ。


直後、巨大な尾が地面を叩きつけ、岩片が飛び散る。


信太は身体を低く沈め、飛来する破片をかわした。


ロックリザードが再び頭を持ち上げる。


その瞬間、信太は地面を蹴った。


余計な予備動作を省き、一気に間合いを詰める。


右手一本で刀を水平に構え、鋭い突きを放った。


「右片手平突き・四式」


ほとんど予備動作のない突きが、ロックリザードの首元にある鱗の隙間へ突き刺さった。


四式は威力よりも速度と正確性を重視した技だ。


しかし、すでに深い傷を負っていたロックリザードにとって、その一撃は決定的だった。


巨獣は大きく身体を震わせ、やがて地面へ崩れ落ちた。


信太は刀を引き抜き、周囲の安全を確認してから静かに息を吐いた。


「……終わりましたね」


レイナは双剣を下ろし、信太へ駆け寄った。


「シンタさん! 今の、本当にすごかったです!」


信太は少し照れくさそうに笑った。


「ありがとうございます。でも、レイナさんが注意を引きつけてくれたおかげですよ」


レイナは嬉しそうに笑った。


「そう言ってもらえると嬉しいです! でも、あの斬鉄剣は本当に驚きました!」


信太は刀身を確認しながら答えた。


「刃筋が合えば、硬いものでも斬れることがありますから」


その言葉に、レイナは思わず苦笑した。


「……それ、普通の人にはできませんよ?」


◇ ◇ ◇


戦闘終了後、二人は大型ロックリザードの素材を回収した。


硬い鱗や魔石は高値で取引されるため、協会へ持ち帰ればそれなりの報酬になるだろう。


レイナは素材を確認しながら、楽しそうに話しかけた。


「シンタさん、今日の配信、すごいことになってますよ」


「そうなんですか?」


信太が配信画面を確認すると、同時視聴者数が大きく増えていた。


レイナのチャンネルでは十万人を超え、信太のチャンネルでも数万人が視聴している。


コメント欄には、斬鉄剣への驚きが次々と書き込まれていた。


『今日の名場面確定!』


『斬鉄剣の切り抜き絶対伸びる』


『シンタさん、Aランク昇格待ったなし!』


『レイナさんとの相性も抜群だな』


信太は少し困ったように笑った。


「……何だか、大変なことになってますね」


レイナは楽しそうに頷いた。


「ふふっ、これからもっと人気が出ると思いますよ!」


信太は苦笑しながら刀を鞘へ納めた。


人気が出るのはありがたいが、今は探索を無事に終えることが先決だ。


信太は周囲を確認し、レイナへ声をかけた。


「それじゃあ、少し休憩してから第三階層へ向かいましょうか」


レイナは笑顔で頷いた。


「はい! でも、無理はしないでくださいね!」


「もちろんです」


二人は安全な場所を探し、休憩を取ることにした。


大型ロックリザードとの戦闘を終えたことで、合同配信はさらに盛り上がっていた。


しかし、信太にとって大切なのは、視聴者数でも登録者数でもない。


無事に探索を終え、家族の待つ家へ帰ること。


その思いだけは、これからも変わることがなかった。


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