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家族に内緒でダンジョンに潜っていたら、いつの間にかCランク探索者になっていた件  作者: バモス
第一章 家族に内緒のダンジョン配信

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第33話 第二階層の強敵、双剣と日本刀の真価

《秩父西部渓谷ダンジョン》第二階層へ足を踏み入れた市河信太は、前方から響いてくる重い足音に意識を集中させた。


第一階層とは異なり、第二階層には切り立った岩壁と大小の岩が点在している。道幅も場所によって大きく変わるため、周囲の状況を確認しながら進む必要があった。


隣を歩いていた神崎レイナも足を止め、双剣の柄に手を添えた。


「シンタさん、前方に複数の反応がありますね」


信太は静かに頷いた。


「はい。足音からすると四体……いや、五体でしょうか」


レイナは少し驚いたように信太を見た。


「そこまで分かるんですか?」


「正確ではありませんけど、足音の間隔が違うので」


信太が答えた直後、岩陰から五体のモンスターが姿を現した。


灰色の皮膚に硬い外皮を持つアーマーオーク。そのうち三体は棍棒を、残る二体は錆びた斧を手にしていた。


通常のオークよりも頑丈な身体を持ち、力も強い。数で押し込まれれば、Bランク探索者でも油断できない相手だ。


レイナは双剣を抜きながら、信太へ声をかけた。


「五体ですね。どうします?」


信太は周囲の地形を確認した。


右側には大きな岩があり、左側は比較的開けている。正面から五体を相手にするより、地形を利用して敵の動きを制限した方が安全だろう。


「俺が右側の岩を使って二体を引きつけます。レイナさんは左から回り込んでください」


レイナは笑顔で頷いた。


「了解です! それじゃあ、行きましょう!」


二人が動き出すと、アーマーオークたちも雄叫びを上げて突進してきた。


◇ ◇ ◇


最初に仕掛けたのは信太だった。


右側へ踏み込み、岩壁を背にしない位置へ移動する。すると、棍棒を持った二体のアーマーオークが信太を追ってきた。


一体目が棍棒を振り上げる。


信太は相手の肩と腰の動きを見極め、わずかに身体を沈めた。


次の瞬間、棍棒が頭上を通過する。


信太はその隙を逃さなかった。


「右片手平突き・壱式」


右手一本で放たれた鋭い突きが、アーマーオークの喉元を正確に捉えた。


硬い外皮に覆われていない急所を貫かれ、モンスターはその場に崩れ落ちる。


しかし、もう一体が横から棍棒を振り下ろしてきた。


信太は刀を引き戻しながら、左足を軸に身体を回転させた。


余計な力を抜いた滑らかな動きで攻撃をかわし、そのまま相手の側面へ回り込む。


「そこだ」


短く呟き、刀を斜めに突き出す。


右片手平突き・弐式。


上方から斜め下へ放たれた突きが、アーマーオークの肩口を貫いた。


相手が体勢を崩したところへ、信太は素早く刀を引き、首元へ追撃を加える。


二体目も地面へ倒れた。


一方、レイナは残る三体を相手にしていた。


双剣を構えた彼女は、正面から迫るアーマーオークの攻撃を左手の剣で受け流し、右手の剣で腕を斬りつける。


「まずは一体!」


レイナは軽く地面を蹴り、敵の側面へ回り込んだ。


続けて左右の剣を交互に振るい、相手の防御を崩していく。


その動きは非常に速く、まるで舞うようだった。


信太は自分の担当した二体を倒すと、すぐにレイナの状況を確認した。


「レイナさん、右後方から一体来ます!」


信太の声に、レイナは即座に反応した。


「了解です!」


レイナは身体を低く沈め、背後から振り下ろされた斧をかわした。


そのまま右足を踏み込み、左手の剣で相手の膝を斬りつける。


体勢を崩したアーマーオークへ、右手の剣が鋭く閃いた。


残る二体も、レイナの連続攻撃によって次々と倒されていく。


最後の一体が崩れ落ちたところで、二人は周囲の安全を確認した。


戦闘開始から一分も経っていなかった。


レイナは双剣を下ろし、嬉しそうに笑った。


「シンタさん、今の声かけ、助かりました!」


信太も刀を下ろして頷いた。


「いえ。レイナさんの反応が速かったので、こちらも動きやすかったです」


レイナは楽しそうに笑った。


「やっぱり、シンタさんと組むと戦いやすいですね!」


◇ ◇ ◇


その間にも、配信用ドローンが二人の戦闘を撮影していた。


コメント欄には、驚きの声が次々と流れている。


『五体相手に余裕すぎる!』


『シンタさん、二体を一瞬で倒してない?』


『レイナさんの双剣、相変わらず綺麗だな』


『お互いの位置を把握してるのがすごい』


『これがAランクとBランクの連携か!』


信太はコメントを確認し、少し苦笑した。


「皆さん、ありがとうございます。でも、相手の動きをよく見れば対応できますよ」


その言葉に、コメント欄がさらに盛り上がった。


『それができないんだよ!』


『さらっと難しいこと言うな!』


『シンタさん、やっぱり無自覚系だな』


レイナはコメントを見て笑いながら、信太へ声をかけた。


「シンタさん、それは普通の探索者には難しいですよ?」


「そうなんですか?」


「そうなんです!」


レイナが笑顔で断言すると、視聴者からも同意するコメントが大量に流れた。


信太は少し困ったように肩をすくめた。


◇ ◇ ◇


素材の回収を終えた二人は、第二階層の奥へ進んでいた。


岩場の間を抜けると、少し開けた場所に出た。


そこには小さな水場があり、周囲には背の低い草が生えている。


レイナは周囲を見回しながら言った。


「ここ、休憩にちょうどよさそうですね」


信太は頷いた。


「そうですね。ただ、先に周囲を確認しましょう」


二人は手分けして周囲の安全を確かめた。


近くにモンスターの気配がないことを確認すると、岩の上に腰を下ろした。


レイナは水筒を取り出し、一口飲んでから信太へ視線を向けた。


「シンタさん、さっきの戦闘で気になったことがあるんですけど」


「何でしょう?」


「二体目のアーマーオークを倒したとき、身体を回転させながら突きを出しましたよね?」


信太は少し考えてから頷いた。


「ああ、弐式ですね」


レイナは興味深そうに身を乗り出した。


「あれって、回転の力をそのまま突きに乗せてるんですか?」


「そうですね。ただ、無理に回転させているわけじゃなくて、重心移動の流れを利用しています」


信太は立ち上がり、ゆっくりと動きを再現した。


左足を軸に身体を回し、骨盤と背骨の連動によって肩を動かす。


最後に右腕が自然に前へ伸びる。


レイナは真剣な表情でその動きを見つめていた。


「なるほど……。腕だけで突いてるわけじゃないんですね」


「はい。腕は最後に力を伝える部分なので、最初から力を入れすぎないようにしています」


レイナは感心したように頷いた。


「すごく勉強になります。私の双剣にも応用できそうです」


信太は笑みを浮かべた。


「それならよかったです」


◇ ◇ ◇


休憩を終えた二人は、第三階層へ向かう通路を目指して歩き始めた。


しかし、しばらく進んだところで、信太は足を止めた。


前方の岩場から、低い唸り声が聞こえてきたのだ。


レイナもすぐに気づき、双剣へ手を伸ばした。


「……シンタさん、何かいますね」


信太は静かに頷いた。


「はい。さっきのアーマーオークとは違う気配です」


二人は慎重に前へ進んだ。


やがて、岩陰から巨大な影が姿を現した。


全身を岩のように硬い鱗で覆われた、大型のトカゲ型モンスター。


ロックリザードだった。


通常個体よりも一回り大きく、鋭い爪と太い尾を持っている。


レイナは少しだけ表情を引き締めた。


「大型個体ですね。第二階層にも出ることはありますけど、ここまで大きいのは珍しいかもしれません」


信太は相手の動きを観察しながら答えた。


「硬そうですね。正面から斬るより、関節や鱗の隙間を狙った方がよさそうです」


レイナは頷いた。


「それじゃあ、私が注意を引きつけます。シンタさんは隙を見て攻撃してください」


「分かりました。ただ、無理はしないでくださいね」


レイナは笑顔を浮かべた。


「もちろんです!」


ロックリザードが低い咆哮を上げた。


その巨体が動き出し、岩場に重い足音が響く。


信太は刀を構え、静かに呼吸を整えた。


硬い外皮を持つ大型モンスター。


その相手に、どこまで自分の剣術が通用するのか。


信太はわずかに口元を緩めた。


「……さて、どう攻めようか」


Aランク探索者とBランク探索者による合同探索は、いよいよ本格的な戦闘へと突入しようとしていた。


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