↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家族に内緒でダンジョンに潜っていたら、いつの間にかCランク探索者になっていた件  作者: バモス
第一章 家族に内緒のダンジョン配信

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/33

第29話 東草原の激戦と、帰還勇者が見抜いた違和感

西街道の荷馬車護衛を終えた俺――《ミナト》たちは、冒険者ギルドの受付で報酬を受け取ったところだった。


商人バルクの荷馬車を無事に農場まで送り届け、農作物を積んで街へ戻る。途中でホーンラットに襲われる場面もあったが、三人の連携で撃退することができた。


経験値も獲得したものの、レベルアップには至らず、俺、シルフィー、ユウキの三人は現在もLv3だ。


「ねえ、ミナト。あそこ、すごい人だかりだよ?」


ユウキが指さした先では、冒険者たちがギルドの休憩スペースに集まっていた。


どうやら誰かのLIVE配信を見ているらしい。


「何かあったのかな?」


俺がそう呟くと、受付のリーナが教えてくれた。


「東草原へ向かった討伐隊の戦闘が始まったようです。参加している冒険者の方が配信されているそうですよ」


「なるほど。少し見ていくか」


俺たちは休憩スペースへ向かった。


そこでは一人のプレイヤーが共有画面を開き、大勢の冒険者たちと配信を見ていた。


画面に表示されているタイトルは《東草原ゴブリン討伐LIVE》。


映像には、東草原の奥に築かれたゴブリンの拠点が映っていた。


木製の柵で囲まれた拠点の周囲には、数十匹のゴブリンが集まっている。


「うわ……本当に多いね」


ユウキが驚いた声を上げた。


「ああ。三十匹以上いるって話だったけど、実際に見るとなかなかの数だな」


シルフィーも画面を注意深く見つめている。


「通常のゴブリンだけではありませんね。鎧を身につけた個体もいます」


「あれが《ゴブリンソルジャー Lv4》だろうな」


さらに拠点の中央には、ひときわ大きなゴブリンが立っていた。


『《ホブゴブリン Lv7》』


その個体は粗末ながらも金属製の鎧を身につけ、大きな剣を肩に担いでいる。


周囲のゴブリンたちは、ホブゴブリンの動きに合わせて配置を変えていた。


「……なるほど。やっぱり指揮しているのか」


俺が呟くと、ユウキが首を傾げた。


「どういうこと?」


「普通のゴブリンなら、敵を見つけたら勝手に突っ込んでくることが多い。でも、あの群れは前衛と後衛を分けている。ホブゴブリンが指示を出しているんだろう」


異世界でも、知能の高い魔物が群れを統率することは珍しくなかった。


ただし、ゲーム内でここまで組織的な行動を取るとは少し意外だった。


画面の向こうでは、討伐隊が陣形を整えていた。


前衛には盾を持った戦士と剣士が並び、その後方に魔法使いと僧侶が配置されている。


指揮役のプレイヤーが大きな声を上げた。


「前衛、盾を構えろ! 魔法使いは合図まで待機! 後衛は距離を保て!」


次の瞬間、ゴブリンたちが一斉に動き出した。


「来るぞ!」


盾を構えた戦士たちが最初の突撃を受け止める。


金属音が響き、ゴブリンの粗末な武器が盾へ叩きつけられた。


その隙に、後衛の魔法使いたちが詠唱を始める。


「《ファイアボール》!」


「《ウィンドカッター》!」


火球と風の刃が次々と放たれ、ゴブリンたちのHPを削っていく。


しかし、ゴブリン側も簡単には崩れなかった。


ホブゴブリンが大きな声で吠えると、左右に控えていたゴブリンソルジャーが動き出したのだ。


「……側面を狙っているな」


俺が呟くと、シルフィーも頷いた。


「はい。正面に注意を引きつけている間に、後衛へ回り込むつもりでしょう」


画面の中では、指揮役のプレイヤーもその動きに気づいたらしい。


「左右に敵が回るぞ! 第二前衛、迎撃しろ!」


待機していた剣士たちが左右へ展開し、ゴブリンソルジャーを迎え撃った。


その判断は的確だった。


討伐隊は多少のダメージを受けながらも、徐々にゴブリンの数を減らしていく。


配信コメントも大いに盛り上がっていた。


『すげえ! 大規模戦闘だ!』


『ゴブリン側もちゃんと戦術使ってる』


『ホブゴブリン強そうだな』


『これ、普通の初心者じゃ絶対無理だろ』


ユウキは画面に釘づけになっていた。


「みんな、すごいね……」


「ああ。ちゃんと連携が取れている」


俺は素直に感心していた。


どれほど個人の戦闘技術が優れていても、多数の敵を相手にする場合は仲間との連携が欠かせない。


その点、今回の討伐隊はよく訓練されているようだった。


やがて、ゴブリンの数が半分以下になったところで、ホブゴブリンが前へ出てきた。


大剣を振り上げ、前衛へ向かって突進する。


「ボスが来たぞ!」


盾役の戦士が攻撃を受け止める。


しかし、ホブゴブリンの一撃は重く、戦士のHPが大きく減少した。


「回復を頼む!」


「《ヒール》!」


僧侶の魔法が飛び、戦士のHPが回復する。


ホブゴブリンは続けて大剣を振り回したが、前衛の剣士たちが左右へ散り、攻撃を分散させた。


「今だ! 魔法部隊、集中攻撃!」


複数の魔法がホブゴブリンへ直撃する。


大きなダメージ表示が現れ、HPが一気に減少した。


しかし、ホブゴブリンはまだ倒れない。


怒りの咆哮を上げ、再び前衛へ突進する。


「……あのタイミング、少し気になるな」


俺が呟くと、ユウキがこちらを見た。


「何が?」


「魔法攻撃を受けた直後じゃなく、魔法使いたちが次の攻撃を準備する瞬間を狙っている。偶然かもしれないけど、相手の隙を見ているように感じるんだ」


シルフィーも真剣な表情になった。


「確かに、普通のホブゴブリンより判断が鋭いように見えますね」


とはいえ、討伐隊も負けてはいなかった。


指揮役のプレイヤーが冷静に指示を出し、前衛がホブゴブリンの動きを封じる。


そして、最後は複数の剣士による連続攻撃が決まった。


『《ホブゴブリン Lv7》を討伐しました』


画面の向こうで歓声が上がった。


ギルドの休憩スペースでも、冒険者たちが拍手を送っている。


「やった! 倒した!」


ユウキも嬉しそうに声を上げた。


「ああ。見事な討伐だったな」


その後、残っていたゴブリンたちも次々と倒され、戦闘は終結した。


討伐隊は周囲の安全を確認しながら、拠点の内部へ進んでいく。


木製の柵や粗末な小屋が並ぶ中、数人の冒険者が拠点の奥で足を止めた。


「おい、こっちに何かあるぞ!」


配信者がそちらへ向かうと、地面に大きな穴が開いているのが見えた。


穴の周囲には木材が組まれ、地下へ続く通路のようになっている。


「……地下通路?」


ユウキが呟いた。


俺も画面を凝視する。


通路の入口付近には、黒ずんだ石がいくつも置かれていた。


さらに、奥の方からは薄紫色の光が漏れている。


「妙だな……」


俺が呟くと、シルフィーがこちらを見た。


「隼人も気づきましたか?」


「ああ。ゴブリンがただ住み着いていただけなら、あんな場所を作る必要があるのかと思ってな」


シルフィーも頷いた。


「それに、あの石……普通の岩とは少し違うように見えます」


画面の向こうでは、討伐隊の指揮役が地下通路を確認していた。


「ここは不用意に入るべきじゃないな。ギルドへ報告して、専門の調査隊を待とう」


その判断に、俺は小さく頷いた。


未知の地下通路へ踏み込むのは危険だ。討伐で消耗した状態ならなおさらだろう。


やがて、ギルドの掲示板にも新しい情報が表示された。


『《緊急討伐:東草原ゴブリン拠点》』


『主要討伐対象の撃破を確認』


『拠点内部に未確認の地下通路を発見』


『安全確認のため調査を一時中断』


ユウキが俺を見る。


「ミナト、これって……」


「ああ。まだ何かありそうだな」


俺は画面に映る地下通路の入口を見つめた。


東のゴブリン、西のホーンラット、南のスライム、北のウルフ。


それぞれの異変が偶然なのか、それとも何かにつながっているのかは分からない。


だが、少なくとも東草原のゴブリンたちは、ただ群れを作っていただけではなかったらしい。


俺たちが見守る中、討伐隊は地下通路の入口を封鎖し、冒険者ギルドへ帰還する準備を始めていた。


そして俺は、二十年間の冒険で培った勘が、久しぶりに小さな警鐘を鳴らしているのを感じていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
話が別作品ですよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。