第12話 気づいたらBランク昇格候補になっていました
翌朝。
市河信太は、ベッドの上でスマートフォンの画面を見つめたまま固まっていた。
表示されているのは、埼玉探索者協会から届いた正式な通知だった。
『市河信太様。探索者ランク昇格に関する推薦審査について、埼玉支部までお越しください』
信太「……昇格?」
寝起きの頭でも、書かれている意味くらいは理解できる。
だが納得できるかは別だった。
信太「俺、Cランクになったばっかりなんだけど」
正確には、昇格した直後というほどではない。
それでも本人の感覚としては、まだCランク探索者として活動を始めてからそれほど時間が経っていなかった。
しかも通知には《推薦審査》と書かれている。
自分からBランク昇格試験を申し込んだ覚えなどない。
信太「黒崎さんが言ってた連絡って、これか?」
昨日、橘沙耶から「探索者協会からの通知を見落とさないように」と言われた。
おそらく間違いない。
指定日時を見る。
今日の午後四時。
ちょうど大学の講義が終わった後に間に合う。
信太「……行けば分かるか」
深く考えても仕方がない。
信太はベッドから起き上がり、大学へ行く準備を始めた。
◇ ◇ ◇
朝食の席。
信太がトーストを食べていると、向かい側から視線を感じた。
信太「…………」
顔を上げる。
莉奈が見ている。
信太「何?」
莉奈「別に」
信太「最近そればっかりだな」
莉奈「お兄ちゃんが怪しいから」
信太「何が怪しいんだよ」
莉奈「全部」
信太「範囲広すぎない?」
隆一「朝から喧嘩するな」
莉奈「してないよ」
信太「一方的に疑われてるだけ」
美咲「信太」
信太「何?」
美咲「今日も帰り遅いの?」
信太「……ちょっと寄るところがあるから」
莉奈「どこ?」
信太「なんでお前に報告しないといけないんだ」
莉奈「大学?」
信太「違う」
莉奈「山?」
信太「今日は行かない」
莉奈「じゃあどこ?」
信太「用事」
莉奈「怪しい」
信太「何を答えても怪しいって言うだろ」
美咲は二人のやり取りを聞きながら、静かにコーヒーを飲んでいる。
信太はふと母を見る。
美咲「何?」
信太「いや……」
昨日の言葉が頭に残っていた。
『今度、ちゃんと話してね』
『あなたが私たちに隠していること』
母はどこまで知っているのだろう。
まだ確信はないのか。
それとも、もう全部分かっていて信太が話すのを待っているだけなのか。
信太には判断できなかった。
美咲「今日も気をつけてね」
信太「……うん」
隆一「大学の帰りに何かあるのか?」
信太「ちょっと友達と会うだけ」
莉奈「友達?」
信太「お前は黙ってろ」
莉奈「怪しい」
信太「ほら!」
朝から疲れる。
そんなことを思いながら、信太は家を出た。
◇ ◇ ◇
駿我代大学。
午前の講義が終わり、昼休み。
信太は学食で悠斗と向かい合っていた。
悠斗「信太」
信太「嫌だ」
悠斗「まだ何も言ってない」
信太「どうせシンタの話だろ」
悠斗「なんで分かった?」
信太「最近それしか話してないから」
悠斗「仕方ないだろ。今一番面白い新人探索者なんだから」
信太「新人って配信だけだろ」
悠斗「そうそう。そこなんだよ」
信太「何が?」
悠斗がスマートフォンを置く。
悠斗「ネットでシンタのランクについて議論になってる」
信太「ランク?」
悠斗「本当にCランクなのかって」
信太「探索者証はCだけど」
悠斗「なんで断言できる?」
信太「配信で言ってた」
悠斗「……お前、やっぱり詳しいな」
信太「お前が毎日情報を持ってくるからだよ」
悠斗「それもそうか」
悠斗は納得した。
信太は内心で息を吐く。
悠斗「でさ、Bランク説が出てる」
信太「…………」
タイムリーすぎる。
悠斗「九条さんと一緒だったとはいえ、ブラックオーガ・ジェネラル相手に普通に連携してただろ?」
信太「九条さんがほとんど削ってたけど」
悠斗「なんでシンタ本人みたいな擁護するんだよ」
信太「映像見れば分かるだろ」
悠斗「それでもCランクの動きじゃないって話」
信太「Cランクにも強い人はいるだろ」
悠斗「お前さ」
信太「何?」
悠斗「シンタのことになると妙に頑固だよな」
信太「そう?」
悠斗「本人は『普通のCランクです』って言ってるけど、お前までそれを信じてる」
信太「本人がCって言ってるならCだろ」
悠斗「ランク上はな」
信太「…………」
黒崎と同じことを言われた。
悠斗「俺は近いうちBに上がると思うね」
信太「そんな簡単に上がらないだろ」
悠斗「賭ける?」
信太「何を?」
悠斗「今月中にシンタがBランク昇格試験を受ける」
信太「受けない方に」
悠斗「即答!?」
信太「だって本人に上がる気ないかもしれないだろ」
悠斗「じゃあ俺は受ける方。昼飯一回な」
信太「いいよ」
信太は知らなかった。
数時間後、自分がその賭けに負ける可能性を大幅に高められることを。
◇ ◇ ◇
昼休みの終わり。
悠斗と別れた信太が講義棟へ向かっていると、後ろから声がした。
香澄「市河先輩」
信太「水城さん」
香澄が隣へ並ぶ。
香澄「身体、どうですか?」
信太「もうほとんど大丈夫」
香澄「肩は?」
信太「少し張ってるけど問題ないよ」
香澄「無理して訓練しないでくださいね」
信太「今日は協会に呼ばれてるから、訓練はなし」
香澄「協会?」
信太「昨日、橘さんが言ってたやつ」
香澄「ああ」
香澄は少し考える。
香澄「何の用事か分かりました?」
信太「朝、正式通知が来た」
香澄「何だったんですか?」
信太「ランク昇格の推薦審査」
香澄「…………」
香澄が止まった。
信太も数歩進んでから振り返る。
信太「どうしたの?」
香澄「先輩」
信太「うん?」
香澄「それ、Bランクですよね?」
信太「たぶん」
香澄「たぶん!?」
信太「Cの次はBだし」
香澄「そういう意味じゃありません!」
また周囲の学生が振り返る。
香澄は声を落とした。
香澄「……いつ推薦されたんですか?」
信太「知らない」
香澄「本人に黙って推薦されるものなんですか?」
信太「協会推薦ならあるらしいよ」
香澄「Cランクになってどれくらいでしたっけ?」
信太「そんなに経ってない」
香澄「ですよね?」
信太「だから俺もよく分からない」
香澄は額へ手を当てた。
香澄「また『気づいたら』ですか?」
信太「何が?」
香澄「先輩、前に言ってましたよね。『気づいたらCランクになってた』って」
信太「ああ」
香澄「今度は気づいたらBランク候補になってるじゃないですか」
信太「まだ候補だよ」
香澄「そこじゃないです」
信太「?」
香澄「……もういいです」
呆れられた。
香澄「でも、もし昇格試験を受けるなら頑張ってください」
信太「ありがとう」
香澄「Bランクになったら、お祝いします」
信太「まだ早いって」
香澄「じゃあ予約です」
信太「予約?」
香澄「はい」
香澄は笑った。
信太「分かった。受かったらお願いする」
香澄「約束ですよ」
信太「うん」
香澄は満足そうに頷く。
信太は特に深く考えなかった。
だが香澄にとっては、二人で出かける口実を一つ確保したことになる。
その違いに信太が気づくのは、まだ先だった。
◇ ◇ ◇
午後四時。
埼玉探索者協会支部。
信太は受付で探索者証を提示した。
沙耶「お待ちしていました、市河さん」
信太「やっぱり橘さん知ってましたよね?」
沙耶「何のことでしょう?」
信太「推薦審査」
沙耶「さあ?」
信太「その顔で誤魔化せると思ってます?」
沙耶「昨日の私は伝言を頼まれただけですよ」
信太「昨日の、は?」
沙耶「細かいことを気にする男性はモテませんよ」
信太「急に攻撃された」
沙耶「水城さんに嫌われないようにしてくださいね」
信太「なんで水城さんが出てくるんですか?」
沙耶「さあ?」
信太「今日の橘さん面倒くさいな……」
沙耶「黒崎課長がお待ちです」
完全に逃げられた。
信太は案内され、奥の面談室へ向かった。
ノック。
黒崎「入れ」
信太「失礼します」
室内には黒崎がいた。
テーブルの上には何枚もの書類。
黒崎「座れ」
信太「はい」
向かい側へ座る。
黒崎は一枚の書類を信太の前へ置いた。
信太「Bランク探索者昇格推薦……」
黒崎「お前のだ」
信太「本当に?」
黒崎「偽物を用意してどうする」
信太「いや、早くないですか?」
黒崎「俺もそう思う」
信太「ですよね」
黒崎「だが、実績が基準に届いた」
黒崎が別の資料を出す。
黒崎「Cランク昇格後の討伐実績。救助実績。ダンジョン探索回数。魔石及び素材納入実績。危険個体への対応記録」
信太「はい」
黒崎「武甲森林ダンジョンでEランク探索者を含む複数名を救助。オーク・ウォリアーを単独討伐」
信太「急所に当たったので」
黒崎「黙って聞け」
信太「はい」
黒崎「秩父第二鉱山ダンジョンではロックオーガを単独討伐」
信太「それはCランクでも――」
黒崎「黙って聞け」
信太「はい」
黒崎「雁坂深層洞ではAランク探索者の九条蓮司と共同でブラックオーガ・ジェネラルを討伐。さらに九条さんから戦闘技術、状況判断、撤退判断について高評価の報告が上がっている」
信太「九条さんが?」
黒崎「ああ」
信太は少し驚いた。
自分としては教えてもらってばかりだった。
黒崎「本人の希望だけでランクを上げるわけじゃない。協会側から推薦する制度もある」
信太「それは知ってます」
黒崎「お前は今回、その推薦基準を満たした」
信太「でも、Cになってまだそんなに……」
黒崎「だから実績を積む速度がおかしいんだ」
信太「おかしいって」
黒崎「市河」
黒崎が真っ直ぐ信太を見る。
黒崎「お前、FランクからCランクまでどれくらいかかった?」
信太「……あんまり覚えてません」
黒崎「俺は覚えてる」
信太「そうなんですか?」
黒崎「管理する側だからな」
黒崎はため息をつく。
黒崎「お前は最初からそうだった。Fランクの頃は剣道経験者として動きがいい程度だった。それが身体強化を覚え始めた途端、自分の剣術へ勝手に組み込み始めた」
信太「勝手にって……」
黒崎「誰にも教わってないだろ?」
信太「基本は教わりましたよ」
黒崎「魔力を脚から腰、背中、肩、腕へ移しながら使う方法を誰に教わった?」
信太「それは自分で」
黒崎「斬鉄は?」
信太「自分で」
黒崎「右片手平突きと身体強化の組み合わせは?」
信太「……自分です」
黒崎「ほらな」
信太「何がですか」
黒崎「そういうところだ」
黒崎は椅子へ背を預けた。
黒崎「ただし、勘違いするな」
信太「はい」
黒崎「推薦されたから自動的にBランクになるわけじゃない」
信太「試験ですよね?」
黒崎「ああ」
Bランク。
そこからは探索者としての扱いが大きく変わる。
Cランクまでは中級探索者。
Bランク以上は上級探索者として扱われる機会が増え、協会から高難度ダンジョンの調査や緊急討伐への協力を求められることもある。
単純に戦闘力が高ければいいわけではない。
黒崎「Bランク昇格試験では、戦闘能力だけじゃなく探索判断、救助、危険察知、撤退判断も見る」
信太「分かりました」
黒崎「特にお前の場合、戦闘能力よりそっちを重点的に見られると思え」
信太「なんでですか?」
黒崎「強い敵を見ると、とりあえず戦ってみようとするだろ」
信太「しませんよ」
黒崎「本当に?」
信太「危なかったら逃げます」
黒崎「雁坂では?」
信太「あれは九条さんがいたから」
黒崎「武甲森林では?」
信太「水城さんが危なかったから」
黒崎「つまり誰かが危険なら突っ込む」
信太「……場合によります」
黒崎「そこを試験官に見られると思え」
信太「なるほど」
黒崎「Bランクになると、自分だけ生きて帰ればいい立場じゃなくなることもある」
信太は少し表情を引き締めた。
黒崎「下位探索者を連れて動くこともある。緊急時には現場判断を任されることもある。お前の一言で他人が前へ進むか、撤退するかが決まる場合だってある」
信太「……責任が増えるんですね」
黒崎「ああ」
信太は書類を見る。
Bランク。
今までは、特に目指していなかった。
Cランクになった時も同じだ。
必要な試験を受け、探索を続け、気づけば今のランクになっていた。
だが今回は少し違う。
黒崎「嫌なら推薦を辞退してもいい」
信太「え?」
黒崎「ランクを上げない選択もある。Cランクのまま活動する探索者も珍しくない」
信太「…………」
黒崎「考えて決めろ」
信太はしばらく黙った。
九条との探索を思い出す。
自分にはなかった経験。
自分では気づかなかった戦闘の癖。
上のランクへ進めば、もっと多くのものを見ることができる。
そして。
信太「受けます」
黒崎「決めるの早いな」
信太「せっかく推薦してもらったので」
黒崎「それだけか?」
信太「自分がどこまで通用するのか知りたいです」
黒崎は少しだけ笑った。
黒崎「そう言うと思った」
信太「なら聞かなくてもよかったんじゃ?」
黒崎「本人の意思確認は必要だ」
信太「なるほど」
黒崎「試験は来週の日曜日。場所は協会指定の訓練ダンジョンだ」
信太「来週……」
黒崎「都合が悪いか?」
信太「いや」
別の問題がある。
日曜日。
また家を出なければならない。
しかもBランク昇格試験。
さすがに「山へ写真を撮りに行く」では苦しくなってきた。
黒崎「どうした?」
信太「家に何て言おうかなって」
黒崎「まだ家族に言ってないのか?」
信太「はい」
黒崎「…………」
黒崎は頭を抱えた。
黒崎「お前、Cランクになって配信まで始めて、Aランク二人に見つかって、今度はBランク昇格試験だぞ」
信太「神崎さんとは会ってませんよ」
黒崎「そこじゃない」
信太「?」
黒崎「本当にいつまで隠せると思ってるんだ?」
信太「……俺も最近ちょっと厳しいかなとは」
黒崎「ちょっと?」
信太「母さんには、ほとんどバレてるかもしれません」
黒崎「だろうな」
信太「即答ですか?」
黒崎「むしろ今まで隠せてたことが不思議だ」
信太には何も言い返せなかった。
◇ ◇ ◇
面談を終え、信太が受付へ戻る。
沙耶「どうでした?」
信太「試験受けることになりました」
沙耶「やっぱり」
信太「知ってましたよね?」
沙耶「推薦書類の処理をしましたから」
信太「やっぱり知ってた!」
沙耶「昨日は言えませんでしたから」
信太「まあ、それはそうですけど」
沙耶「頑張ってください。市河さんなら大丈夫ですよ」
信太「ありがとうございます」
沙耶「ただし」
信太「はい?」
沙耶「試験だからって無茶しないでくださいね」
信太「俺、そんな無茶してます?」
沙耶「…………」
信太「なんで黙るんですか?」
沙耶「水城さんに聞いてみたらどうです?」
信太「だからなんで水城さんが出てくるんですか」
沙耶は答えず笑った。
信太は首を傾げながら協会を出た。
◇ ◇ ◇
帰りの電車。
信太は香澄へメッセージを送った。
『推薦審査終わった。来週Bランク昇格試験受けることになった』
返信は早かった。
『やっぱり! 頑張ってください!』
続いて。
『受かったら約束のお祝いですからね』
信太「覚えてたんだ」
『了解』
送信。
すると今度は悠斗との昼の会話を思い出した。
信太「…………」
今月中にシンタがBランク昇格試験を受けるかどうか。
信太は受けない方へ賭けた。
信太「俺、負けるじゃん」
自分自身のせいで。
妙な気分だった。
◇ ◇ ◇
その夜。
市河家。
夕食後。
莉奈はリビングで《REINA Dungeon Live》を見ていた。
画面に映っているのは神崎レイナ。
レイナ「今日は通常配信の前に、最近ちょっと気になってる探索者の話をしようかな」
莉奈「え?」
信太の箸が止まった。
夕食を終えたところだったが、テレビから聞こえた言葉に反応してしまう。
レイナ「知ってる人も多いと思うけど、《シンタ》君」
莉奈「来た!」
信太「…………」
隆一「誰だ?」
莉奈「最近すごく伸びてるCランク探索者!」
隆一「ああ。この前言ってた奴か」
莉奈「そう!」
画面の中で、レイナがブラックオーガ・ジェネラル戦の一部を解説している。
レイナ「この人の面白いところは速さより判断なのよね」
スタッフ『四式じゃなくて?』
レイナ「四式もすごいけど、それだけなら私はここまで気にしてないかな」
信太「…………」
思わずテレビを見る。
レイナ「強い技を持ってる人って、その技を使いたがるの。でもシンタ君は使えない状況だとすぐ捨てて、別の手を選んでる」
ブラックオーガ・ジェネラルの戦斧を避け、懐へ潜り込む映像。
レイナ「この判断が好き」
莉奈「めっちゃ褒められてる……」
隆一「有名な人なのか?」
莉奈「超有名! Aランクで登録者百万人超えてるんだよ!」
隆一「へえ」
レイナ「機会があったら一度、一緒に潜ってみたいかな」
信太「えっ」
声が出た。
三人の視線が信太へ向く。
信太「…………」
莉奈「お兄ちゃん?」
信太「いや、有名な人が新人と潜るんだなって」
莉奈「新人って言ってもシンタCランクだよ?」
信太「そうだけど」
美咲「信太」
信太「何?」
美咲「嬉しそうね」
信太「なんで俺が?」
美咲「さあ?」
美咲は微笑んだ。
信太「…………」
まずい。
非常にまずい。
Aランク探索者の九条蓮司に続き、神崎レイナまで自分の名前を公の場で出した。
これ以上有名になれば、家族に隠し続ける難易度はさらに上がる。
莉奈はテレビと信太を交互に見る。
莉奈「ねえ、お兄ちゃん」
信太「何?」
莉奈「もしシンタがBランクになったらどう思う?」
信太「なんで俺に聞くんだよ」
莉奈「なんとなく」
信太「……すごいんじゃない?」
莉奈「受かると思う?」
信太「試験受けるかも分からないだろ」
莉奈「そうだね」
莉奈は意味ありげに笑った。
信太は視線を逸らす。
来週の日曜日。
Bランク昇格試験。
配信を始めた時、信太はただ探索の様子を映してみようと思っただけだった。
それなのに。
Aランク探索者に見つかり。
人気配信者にも注目され。
家族には正体を疑われ。
そして今度はBランクへの道まで開き始めている。
信太「……気づいたら、またランク上がりそうなんだけど」
誰にも聞こえない声で呟く。
家族に内緒でダンジョンへ潜っていた大学生の秘密は、彼自身の成長に追いつけなくなり始めていた。
そして一週間後。
市河信太は、上級探索者への入口となるBランク昇格試験へ挑むことになる。




