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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第九章 ファンタジー世界に馴染んだおっさん――ドラゴン骨で追放勇者とラーメン作る!弟子を取ったら部屋追い出される

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第九十八話 それぞれの現場

数日後、魔王城の正門前には、それぞれの役割を胸に抱いた面々が

集まり、出発の時を待っていた。


「準備はいいか? まず、ゼフェル、すまないが引き続き政務を頼む」


俺が声をかけると、軍師ゼフェルは静かに深く頷いた。


「お任せください、八起殿。内政の差配は完璧にこなしてみせましょう。

どうぞ憂いなく、そちらの役に集中してください」


「頼む。それから、ルナリアとガルードは辺境伯領に行ってくれ。

向こうでの出店セレモニーと商業ルートの開拓は二人の手腕に

懸かっている」


秘書官ルナリアはいつもと変わらぬ凛とした微笑みを浮かべて一礼し、

ベルモンド商会会長のガルードもまた、高級な外套の襟を正しながら

不敵に笑った。


「でだ、セシリアには護衛ギルドのマスターを頼みたいんだけど

できるか? まずはルナリアとガルードの護衛だ」


俺がそう告げた瞬間、セシリアは弾かれたように背筋を伸ばし、

その漆黒の鎧をガチリと鳴らした。


「やります!」


力強く即答したセシリアだったが、すぐに言葉を詰まらせ、

申し訳なさそうに視線を泳がせた。


「ですが……。サンも一緒には……連れていけないでしょうか……?」


セシリアの視線の先には、巨体を誇る白い魔獣『サン』が、

寂しそうな顔をして伏せっていた。俺は隣に立つ、

魔獣犬をまとめるガウラを振り返った。


「ガウラ、どうする? お前の子分だ」


ガウラはサンの様子を見て、呆れたように笑いながら首を振った。


「サンも行きたがってるからいいぞ。連れてってやってくれ」


ガウラの許可が出た瞬間、サンは嬉そうに巨体を震わせた。

ここに、漆黒の暗黒聖騎士が白い巨大魔獣に跨がる、正式な

魔獣騎士が誕生したのだった。


そこへ、フラットな足取りでメルが近づいてきた。その手には、

セシリアの愛用する大剣が握られている。


「これ……セシリア……剣……柄……付けた」


セシリアはそれを受け取ると、怪訝そうな顔でメルを見た。

メルは表情を変えないまま、淡々としたトーンで首を振った。


「何も……他には……してない」


「セシリア、心配するな。きちんと俺が確認したから問題ない」


俺がメルの頭にポンと手を乗せてフォローを入れると、

セシリアはほっと胸を撫で下ろした。


「ありがとうメル、疑ってすまない」


「……べつに」


無表情に呟いたメルだったが、俺に頭を撫でられたことで

スイッチが入ったのか、急に口元を歪めて勝ち誇った。


「クックック、我が御手より生まれし魔剣が、そなたを闇より守るだろう!」


仕事のできそうな作業着をまとったボックンを伴い、

メルはビシッと怪しげな決めポーズを取る。セシリアは苦笑しながらも、

例の『柄』がしっかりと装着された愛剣を握り締めた。


「よし。そして俺たちはキャベッツァ農国でラーメンを広めてくる」


俺がコウタロウを促して歩き出そうとしたその時、

背後から独特の甘い声が響いた。


「すこしぃ、いいですかぁ、ノエルちゃん」


アラクネの使用人シオリ(しおり)に背中を押されるようにして、

聖女ノエル(のえる)がもじもじと前に出てきた。その手には、

これまでシオリの部屋で一生懸命に特訓して織り上げた、

魔糸製のエプロンが抱えられていた。


ノエルは真っ赤に染まった顔を俯かせながら、そのエプロンを差し出した。


「コウタロウ、これ着てみて」


「えっ、僕に?」


予想外のプレゼントにコウタロウが目を丸くする。顔を赤く染めた

ノエルが小さく頷くのを見て、コウタロウの顔にもパッと喜びが広がった。


「ありがとうノエル、大切に使うよ!」


手渡されたエプロンを、さっそく嬉しそうに身に着けるコウタロウ。

その姿を見て、俺はフッと笑い、コウタロウの肩に手を乗せた。


「これでコウタロウも大人の世界の仲間入りだ」


何気なく、その魔糸のエプロンを鑑定能力で覗き見てみた俺だったが、

脳内に浮かび上がる能力を見た瞬間、文字通り息が止まりかけた。


(『熱耐性、精神耐性、魔法防御、疲労軽減、耐刃、耐打、体力増加、愛情』……)


凄まじい鉄壁の防御付与の中に、明らかに一つだけおかしな、

そして執念のような重みを感じる二文字が混ざっている。


俺はすっと視線を逸らした。


(愛情??? ……よし、見なかったことにしよう……)


冷や汗を飲み込みながら、精一杯の引きつった笑顔をノエルに向けた。


「ノ、ノエル、本当に頑張ったな。コウタロウ、このエプロンの前には

怖いものなしだ」


「はい! すごく軽くて動きやすいです!」


何も知らない勇者は無邪気に笑っている。その純粋さに少しだけ

憐れみを覚えつつも、俺は全員に向かって力強く右手を掲げた。


「みんな、それぞれ頼むな。よし、行こう!」


ルナリア、ガルード、およびサンを駆る魔獣騎士セシリアを乗せた馬車が、

南のアウストラ王国・レオンハルト辺境伯領へと向かって厳かに出発していく。


それを見送りながら、俺とコウタロウもまた、新調したラーメン屋台を引いて、

最高品質の農作物を求める「キャベッツァ農国」への道を力強く歩み始めた。


それぞれのキャラクターが、それぞれの現場で新たな歴史を刻むための、

大きな内政開拓の旅が今、ここに幕を開けたのだった。

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