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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第九章 ファンタジー世界に馴染んだおっさん――ドラゴン骨で追放勇者とラーメン作る!弟子を取ったら部屋追い出される

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第九十四話 世の中には不思議がいっぱい

「メル、その足元のちっこいの、なんなんだ」


俺は床に膝をつき、視線を低くしてその妙な造形の

人形をじっと見つめた。

布きれを不器用に繋ぎ合わせたようなその塊は、八起の無骨な

視線から逃れるように、メルの細い足の後ろへと素早く

回り込んで身を隠す。


「師匠……ボックンが……怖がってる」


メルはいつもの起伏のない声のまま、俺をまっすぐに見下ろした。


「師匠……魔王……だって」


「魔王じゃないぞ。立場上、魔王の代行みたいなものをやってるだけだ」


俺は苦笑しながら、メルの影からのぞく小さな頭に意識を向けた。


「って、お前、その人形と会話ができるのか?」


「人形……違う……ボックン」


「ああ、ボックンな。なんで俺が魔王なんだ?」


「魔王の魔力……ボックン……魔力……形で……見てる?」


メルの言葉を頭の中で咀嚼しながら、俺は己の手のひらを

見つめた。


「じゃあ、俺はボックンには魔王に見えると?」


メルの足の隙間から、その小さな布製の人形が、小刻みに

上下に動いて小さく頷いた。


そういえば、この世界に最初に放り出された時、

ゼフェルも魔王の波長がどうのと言って涙を流していた。

その奇妙な一致に内心で首を傾げつつ、俺は本題へと話を戻した。


「ところで、そのボックンってのは一体なんなんだ?」


「ボックン……精霊……魔王に……器……取られた」


メルは変わらない淡々とした口調で、部屋の隅にあるガラクタの山を

指差した。


「器……無いと……精霊……消える。ボックン……今の器……

見つけて……入った……セーフ」


「で、この少し不細工な人形がその器なのかい?」


「違う……メル……作った。器……体」


「じゃあ、その拾ってきた胴体に、メルが手足と頭を付け足したってことか?」


「そう……私……天才」


小さな胸を誇らしげに張るメルに対し、俺はその手足の縫い目の

荒さに、ちょっと不細工だなという感想を抱いたが、

大人の配慮として口には出さなかった。


「それで、ボックンとそのツカ、あれは何か関係があるのか?」


「……忘れてた」


メルは表情を変えないまま、持っていた奇妙な金属片を

再び俺の目の前に突き出した。


「『(ツカ)っ!』」


「うん、それはもうさっき聞いたから分かったよ」


俺はため息混じりに手を伸ばし、メルの持つその金属製の

持ち手をしっかりと掴んだ。

触れた瞬間に頭の中に流れ込んでくる直感的な効果に、

俺の指先がピクリと硬直した。


(……おいおい、あらゆる付与効果を無効、だと?)


背筋を冷たいものが通り抜ける感覚に耐えながら、

俺は何とか声を絞り出した。


「な、なんてもんをまた作りやがったんだ、お前は……。

どうやって使うんだ、これ?」


「呪文……唱える……10秒……無効」


メルの短い説明を聞いた瞬間、俺の脳裏に放牧地で

白いモフモフに埋まっていた前衛の姿が浮かび上がった。


「こ、これがあれば、セシリアのあの漆黒の鎧の効果を一時的に

止めて、回復魔法を通せるようになるんだな!すごいぞ、メル!」


興奮気味にメルの肩を揺さぶる俺だったが、ふと嫌な予感が

よぎり、動きを止めた。


「で、その肝心の呪文ってのは、どんなやつなんだ?」


「白き波動と黒き破動……」


「待て待て待て、戦闘中にそんな長い詠唱をしてたら間に合わねえだろ。

もっと短くできねえのか?」


俺の遮る声に、メルは瞬きを一つした。


「じゃ……『シャット』」


あっさりと短縮された指示に、俺は最初からそれでいけるんじゃ

ねえかと心の中で盛大に突っ込んだ。


「師匠が見つけた……曲げるやつと……ボックンが……見つけた……

魔力……干渉する……筒……合体……ボックンが……調整」


淡々と語られる開発経緯を聞きながら、俺の額から

冷や汗が止まらなくなっていた。

これ、今回はセシリアの救済措置として完璧なタイミングで

出来上がったが、使い方を一歩間違えれば、この世界のあらゆる

付与効果や結界を紙切れ同然に変えてしまう、

とんでもなくヤバい代物ではないだろうか。


俺は足元でドヤ顔を崩さない不気味な人形を見つめ、

この世界の底知れなさに静かに戦慄していた。

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