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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第二章 予算ゼロから始める食糧改革! 男子のロマン・ゴーレム改が農地をゆく!

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第九話 気づけなければ無と等しい

「――というわけだ。ゼフェルさん、ルナリアさん。

人集めと広報はあんたら、プロの事務方に任せる。

俺は現場の次の段取りを練ってくるからな」


八起はそう言い残すと、早々にガラクタ部屋へと

引きこもった。


実食会の成功は、ルナリアの仕切りとゼフェルの

イケメンな交渉術があれば間違いない。現場監督の

仕事とは、常に一歩先、二歩先の「仕掛け」を

孤独に積み上げていく作業だ。


とはいえ、連日の突貫工事と魔改造の疲れは隠せない。

八起は思案を巡らせるため、床に敷いた特製の布の上に

体を投げ出した。


「……ふぅ。やっぱり日本人はこれに限るな。

シオリさんに頼んで正解だったぜ」


それは魔王城にあった豪華なベッドとは全く違う。

八起がシオリに構造を説明して作らせた、

綿の詰まった「敷布団」だ。石造りの冷たい床の上に

厚手の布を敷き、その上に布団を広げる。


この適度な硬さが、現場上がりの八起の腰には

何よりも馴染むのだ。


ゴロゴロと寝返りを打ちながら、次のインフラ整備の

図面を頭の中で組み立てていた、その時だった。


「ボス! 見つけたぞー!」


轟音と共に扉が蹴り開けられ、ガウラが弾丸のような

勢いで飛び込んできた。彼女は八起を見つけるなり、

言葉より先に体で挨拶してきた。


人狼の怪力と野生のテンションそのままに、布団の上の

八起にのしかかり、じゃれついてくる。


「お、おい! やめろ、ガウラ! 重い、重いって!

俺は今、神聖な独り脳内会議の最中なんだよ!」


「いいから構え! ボスの匂いは安心するんだ!」


尻尾を激しく振り回し、顔を舐め回そうとするガウラと、

必死にそれを押し返す八起。布団の上で格闘が続き、

二人の体が枕に激しく激突した。


――ビリッ、という不吉な音が響く。


「……あ」

「あ」


八起が頭の下に敷いていた枕が、見るも無残に裂けていた。

中から飛び出してきたのは、一般的な綿や羽毛ではなかった。

バラバラと床に散らばったのは、丸くて硬い、

乾燥した大豆のような粒だった。


「……なんだこれ? 蕎麦殻枕じゃねぇよな」


八起はガウラをどかし、床に落ちた粒を一つ拾い上げた。

いつものように能力カタログスペックを読み取ろうと

意識を集中させるが、脳内に響く声はない。


どうやら八起の能力は、ギガントや変転の棒のような

「魔導具的な魔力」を帯びた物にしか反応しないらしい。

目の前のこれは、ただの「植物の種」なのだ。


だが、八起には別の武器があった。五〇年に及ぶ、

「何でも屋」としての泥臭い観察眼と経験だ。


「……この色、この質感。それにこの独特の溝。

……間違いない、大豆だ。それも、かなり品質の良い

『改良種』だぜ」


八起の脳内で、かつて手伝った農家の記憶や、

現場で食べた非常食のデータが繋がっていく。


巨ジャガだけでは足りないのは、良質なタンパク質と油分。

これが大豆とするなら、醤油、味噌、そして何より

貴重な「食用油」が手に入る。


前魔王がどこかから奪ってきたものの価値を理解できず、

ただ枕に詰め込んで放置していたのだろう。


八起は床に散らばった豆をじっと見つめた後、

傍らで首を傾げている狼娘に向かって不敵に口角を上げた。


「ガウラ、お前暇そうだな」


「あ? ……なんだよその顔、ニヤリとするな」


八起は笑みを深めながら、豆を一粒つまみ上げて見せた。


「こいつは内緒シークレットの仕込みにする。

ガウラ、お前にも手伝ってもらうぞ。

……なに、現場の新しい特別任務だ」

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