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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第八章 戦略物資はテリヤキバーガー! ジャンクフードが世界をつなぐ

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第七十七話 一石三鳥

夕暮れの赤い光が中庭を斜めに刺し、並んだ魔導荷車の

影を長く伸ばしている。

風呂上がりでさっぱりした体をいつもの作業着に包み、

俺は彼らの前へと歩み出た。


視察を終えたばかりの役人たちは、

未だに荷車の足回りを指差して騒いでいる。

そのざわめきを遮るように、

俺は辺境伯の正面に立ち、声を一段落とした。


「一つ具体的な話をしよう」


俺の言葉に、辺境伯がわずかに顎を引き、周囲の役人たちも

一斉に口を閉じた。

中庭の空気が、一瞬で商談の締まったものへと切り替わる。


「この仕組みが稼働した時、メリットが一番大きいのは

あなたの国との取引です」


辺境伯は何も言わず、ただ俺の目をじっと見据えている。

俺は、現場を預かる職人としての譲れないこだわりを、

そのまま言葉に乗せた。


「こちらから商品を運ぶ。当然、あなたの国で大きな収益が出る。

普通なら、その売上金をそのまま袋に詰めて、こっちに持って

帰って終わり。だが、それじゃあ帰りの荷台が空っぽのままだ」


俺がそう言って荷車の列を振り返ると、

辺境伯は少し意外そうな顔をした。後ろに控える役人たちは、

まだ俺の言わんとする実務の意図を掴めていないようだ。


「俺は、その空荷の状態で走らせるってのが、

現場の人間として一番許せねえんだよ。ただ走るだけでも魔力は使う、

動かす連中の人件費だってタダじゃねえ。

往路だけでしか稼げねえ物流なんてのは、ただの片手落ちだ」


長年あらゆる最前線の現場を渡り歩いてきた俺にとって、

空の荷台ほど醜いものはねえ。無駄の垂れ流しを見過ごすのは、

仕事人のプライドが絶対に拒否する。


「だから、あなたの国で出た収益を使って、そっちの名産を

買い付ける。レオンハルト領の沿岸部で嫌というほど獲れる、

あの塩漬け魚卵をな」


その瞬間、辺境伯の隣にいた財務担当らしき中年の役人が、

あっと小さく声を漏らした。それまで隙のない真顔を保っていた

ゼフェルが、満足そうに口元を綻ばせる。


「金銭の流出はほとんど無い。……意味わかりますか?」


俺が直球で問いかけると、辺境伯の喉がごくりと大きく動くのが

見えた。彼らは今、俺が提示した経済の歯車が、

どれほど凄まじい勢いで回り出すかを理解したはずだ。


「……なるほど、一石三鳥、いや、それ以上というわけか」


辺境伯は深く息を吐き出し、

感嘆を隠しきれない様子で何度も首を振った。


「我が国としては、民に美味いバーガーが行き渡り、

物流ギルドで大量の雇用が生まれる。そこへ加えて、

今までは国内で行き場を失いかけていた塩漬け魚卵が、

魔王国の巨大なインフラによって

根こそぎ確実に買い取られていくというのだからな……」


隣国の沿岸部では魚卵が大量に獲れるが、保存と流通の技術が貧しいため、

現地で安値で買い叩かれるか、

塩漬けのまま倉庫で眠るのがオチだったはずだ。


「こっちとしても、空の荷台を引っ張るっていう

現場の無駄が完全に無くなる。

それに、買い付けた魚卵を城に持ち帰れば、

『たらこ』や『明太子』の新鮮な原材料がいくらでも手に入るようになる。

お互いに一切の損がねえだろ」


通貨が国境を越えてジャラジャラと移動することもない。

隣国で稼いだ金は、そのまま隣国の特産品を買うために現地で消費され、

魔王国には物資という最高の形で還元される。


「民の腹を満たし、仕事を創り、地元の産業まで買い支える……。

八起殿、貴殿は本当に、ただの何でも屋の親方を名乗るつもりなのか?」


辺境伯の顔に、すべての懸念を払拭したような、晴れやかな笑みが

浮かんだ。彼は長旅の疲れなど微塵も感じさせない確かな足取りで、

俺の前へと歩み寄る。


「素晴らしい提案だ。我が国の特産品に関する取引の権限は、

すべてこの私が預かっている。

国境の街に最初の物流拠点ができ次第、すぐにでも魚卵の

集荷体制を整えよう」


「おう、話が早くて助かる。細かい運行スケジュールは、

そっちの役人とうちのゼフェルで詰めてくれ」


俺が隣の軍師に視線を送ると、ゼフェルは完璧な一礼を返し、

すでに書類を広げ始めていた。ルナリアも、事務官としての

毅然とした態度でその横へと並ぶ。


これで、隣国進出への本当の「帰り便」までガッチリと形になった。

俺はポケットに両手を突っ込み、中庭の景色を静かに見つめた。

ブックマークありがとうございます。まだまだ頑張ります。

続き楽しみにしてください。ありがとうございました。

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