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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第八章 戦略物資はテリヤキバーガー! ジャンクフードが世界をつなぐ

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第七十一話 食の暴力

驚愕に目を見開く使節団を前に、重苦しい上着の襟元を

もう一度ぐっと引っ張った。

あまりの窮屈さに、いつもの作業着に着替えたい衝動に駆られる。


「道中お疲れ様でした、レオンハルト殿。

長旅で腹も減っているでしょう。よろしければ軽食を

用意していますので、中へどうぞ」


俺の言葉に、辺境伯は視線を荷馬車の列からようやく引き剥がし、

深く首を縦に振った。


「……配慮に感謝する、八起殿。では、お言葉に甘えて

案内していただこう」


ルナリアが手際よく動き、使節団の役人たちを城内の広々とした

応接室へと導いていく。

俺は歩きながら、胸元のポケットから手のひらサイズの木製の小箱を

取り出した。八起特製の、双方向通信機だ。


「――こちら八起。厨房、聞こえるか。お客さんが席に着いた。

人数分、アレを頼む」


ボソリと呟くように指示を飛ばすと、通信機から「了解ですぅ」

というシオリの間延びした声と、「了解だ、ボス!」という

ガウラの元気な返答が小さく漏れ聞こえてきた。


応接室に到着し、重厚な長机を挟んで辺境伯たちと向かい合うように

腰を下ろす。俺の左右には、ルナリアとゼフェルが毅然とした

態度で控えていた。


間もなくして、部屋の扉が静かに開く。入ってきたのは、いつもより

上質な小さな礼服に身を包んだ、テオとリナをはじめとする

城の子供たちだった。


慣れない高級な衣服に緊張しているのか、みんな頬を少しこわばらせ、

背筋をピンと伸ばしている。子供たちは手押し台車を静かに押し、

使節団の役人たちの前に、銀色のトレイを一つずつ手際よく並べた。


「……ほう。これは、何とも香ばしい」


辺境伯の鼻腔が、運ばれた料理から立ち上る濃厚な香りに、

ピクリと反応した。


トレイの上には、ふっくらとした特製バンズ。その間には、

香ばしく焼かれた極厚のパティが挟まれている。

焼きたてパンの香りと、甘辛いテリヤキソースの匂い。さらに、

マヨネーズのまろやかな酸味が混ざり合い、強烈な芳香を室内に

撒き散らしていた。


脇に添えられているのは、揚げたてに仕上げられた細切りポテトだ。

さらに、注がれたばかりの特製コーラがガラスコップの中で

シュワシュワと音を立てて泡立っている。


「手づかみで、がぶりといってくれ。それが一番美味い食い方だ」


俺がそう言って見本を示すようにバーガーを直に手に取ると、

辺境伯も躊躇なくその大きな手を伸ばし、溢れ出るソースを

気に留めることもなく料理を掴み上げた。後に続く役人たちも、

ゴクリと唾を呑み込みながらそれに倣う。


辺境伯が、思い切りよくバーガーに噛みついた。


「っ……!? これは……!」


大人の礼節を保っていた彼の身体が、一瞬で硬直した。

噛み締めた瞬間に溢れ出す、肉の旨味とソースのコク。ここまでは、

あの箱から出した物と同じだ。


だが、今回はそれだけじゃない。口の中の油を、シュワシュワと

弾ける黒い液体が一瞬で洗い流していく。そこへ間髪入れずに、

塩気の効いたカリカリのポテトを放り込む。


辺境伯の喉が、激しく上下に動いた。一言も発さぬまま、

猛烈な勢いで交互に口へ運んでいく。完璧な組み合わせがもたらす

破壊力に、完全に圧倒されているのが見て取れた。


「な、なんだこの味は……! 肉が、口の中でほどけていく……!」


「この、冷たくて弾ける飲み物は一体!? 喉が、喉が歓喜しているぞ!」


初めて口にする役人たちは、卓上に用意されたナプキンに

手を伸ばすことすら忘れ、すでに貴族としての品格を失ったように、

一心不乱にトレイの上を貪り尽くしている。


辺境伯は、ふう、と大きく息を吐き、指先と口元を厚手の布で拭うと、

未だ興奮の冷めやらぬ役人たちを鋭い目で見据えた。

商談の気配を察し、俺は黙って背もたれに体重を預けて顎を引いた。


ゼフェルがスッと一歩前に出た。完璧な微笑を浮かべ、

その澄んだ声を響かせる。先ほどのポンコツさは微塵もない。


「レオンハルト殿、我が主の意図は極めて明確、かつ平和的なものです」


ゼフェルは卓上の空になったトレイを指差し、辺境伯を真っ直ぐに

見つめた。


「我々が提示しているのは、軍事的な脅威ではなく、国境を越えた

富と雇用の創出です。あの車両は貴国へ物流インフラを貸し出すための

もの。そしてこの料理は――」


軍師の瞳が、鋭く細められる。


「貴国の領地で、仕事にあぶれた民を雇い、

現地で大規模に展開するための武器なのです。これほどの価値を生む事業を、

貴国の王が拒む理由がどこにありましょうか?」


辺境伯は、ゼフェルの言葉を咀嚼するようにじっと目を閉じ、

再び手元のコップを見つめた。室内に、張り詰めた沈黙が流れる。

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