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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第六章 「ハラが減っては戦にならぬ、ハラが膨れりゃ戦はできぬ」

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第五十一話 勇者ふたたび

「こちら八起き。聞こえますかぁっと。おいルナリア、応答しろ」


作業着のポケットから取り出した、手のひらサイズの金属製の小箱。,

地球のトランシーバーにそっくりな『双方向通信機』の試作一号機に

向かって、俺は渋い声を投げかけた。


事前にルナリアには、この無線機を渡して移動中の車内でみっちりと

使用方法を説明しておいたのだ。徒歩で三日かかる距離を

リアルタイムで繋ぐなんて芸当、この世界の常識じゃあり得ねえが、

果たして……。


ザザッ……という短い雑音のあと、少し頼りなげな、だがはっきりと

聞き慣れたツンとした声が響いてきた。


『……は、え、本当におじさんの声……!? ちょっと、これ本当に

 魔王城まで届いてるの!? 信じられない……』


「少し雑音混じりだが感度良好だ。ちゃんと聞こえてるぞ、ルナリア。

 本題だが、軽トラの荷台だけじゃ次の商品が積みきれそうにねえんだ。

 ちょっと工夫して戻るから、少し時間がかかる。今日はもう店を閉めて、

 頑張った子供たちをしっかり労ってやってくれ」


『あ、ええ、わかったわ……。信じられないけど、了解よ。

 おじさんも気を付けて戻ってきなさいよね』


ブツッ、と通信が切れる。よしよし、通信機の初運用は完璧だ。

これがあれば、今後の多店舗展開や物流の管理も一気に楽になる。


そんな俺の様子を、助手席から穴が開くほどの熱視線で凝視している男が一人。

ベルモンド商会の会頭、高級商人のガルードだ。


「八起殿……! 今のは一体いかなる魔道具ですか!?

 あの距離を、一瞬で、会話を……! それ、我が商会で

 使用させていただくわけには――」


「おいおい、物欲しそうに質問攻めするなって。そんなに目を血走らせるな。

 わかったから、後でいくつか作ってお前んとこにも届けてやるよ。

 だから今は、次の作業に入らせてくれ」


「本当ですか!? さすが八起殿! 話が分かる御方だ!」


大喜びするガルードを軽トラから降ろし、俺はさっそく魔王城の裏手にある、

臨時の作業場へと向かった。今回作るのは、軽トラの積載量を

限界突破させるための『連結荷台』と、将来的な人員輸送を見据えた

『連結ワゴン車』の二つだ。


作業場に並べられたアイアンウッドの端材を見つめながら、

軽トラを眺めているガルードに釘を刺しておく。


「ガルード、すまんがな。この軽トラそのものは、ドラゴンの魔核を使って

 制御してるから、そう簡単には作れないんだ。そこは諦めてくれ」


「くっ……ドラゴンの魔核ですか。さすがにそれは、我が商会の力でも

 そうそう市場に回るものではありませんな……」


「だが、今から作るのは別だ。こいつには動力も、複雑な操作機構も

 いらねえから、構造自体は簡単なんだよ」


もともと、ジャンクフード店が大繁盛した時のために、物流の強化は

予定していたことだった。設計図は頭の中に完璧に入っている。

あとは、アイアンウッドの浮力・吸着の術式を調整し、フレームを

組み上げるだけだ。


カン、カン、と心地よい金属音が夕闇の魔王城に響い渡る。

何でも屋としての腕の見せ所だ。職人の血が騒ぎ、ものの数時間で、

頑丈な木製の連結荷台と、幌のついた人員輸送用の連結ワゴン車が完成した。


「よし、できた。これならいけるな」


完成した連結車両に、城の倉庫から運び出した『(キョ)ジャガ』、

ドラゴン肉、パン、そして炭酸水を詰めた大量の魔術樽をこれでもかと積み込む。

もちろん、助手席には相変わらず興味津々のガルードが居座っている。


男二人、夜の帳が下りた荒野を、満載の荷物を引いて宿場町へと引き返す――

当然、むさくるしいドライブだ。


だが、これだけの超重量の荷物を後ろに二台も連結しているというのに、

軽トラは何事もないように、静かに、そして颯爽と滑るように爆走していく。


「……すげぇな、我ながら。アイアンウッドの浮力のおかげで、

 引っ張る抵抗がほとんどねえや」


「本当に、恐ろしいほどの技術です。八起殿、これからのことですが……

 この『てりやきばーがー』の噂、確実に大城壁の向こうの人間の国にも

 届き始めます。さらに大勢の客が来るかもしれませんな」


「まぁ、どんなに客が来ようが、

 美味いもん食わせて胃袋掴むだけだ」


そんなこれからの展望をガルードと熱く語り合っているうちに、

軽トラはあっという間に夜の宿場町へと到着した。


店舗の裏手に軽トラを停め、さっそく明日の一番乗りに向けた仕込みを開始する。

すると、宿舎で休んでいたはずの孤児院の子供たちが、俺の帰還を

聞きつけてドタバタと戻ってきた。


「あ、八起様!おかえりなさい!」


「僕たちも手伝います!」


「おいおい、今日は休めってルナリアから言われなかったか?」


「だってみんな、明日もたくさんお肉を焼きたいんだもん!」


キラキラとした笑顔で、小さな手で『(キョ)ジャガ』の芽を

器用にくり抜き始める子供たち。自分たちの働きで店が大繁盛したのが、

よほど嬉しかったのだろう。嬉しいねぇ、こういう健気な姿を見ちまうと、

おじさん、疲れなんて一瞬で吹き飛んじまうよ。


子供たちの手を借りて、山のような仕込みも無事にすべて終了。

すっかり遅くなった夕食を、みんなで和気藹々と囲んで食べている時だった。


バタン!と、店の裏口が勢いよく開き、血相を変えた男が飛び込んできた。

見回りをしていた、ガルム将軍の部下の隠密(今は冒険者に偽装中)だ。


「八起様! 大変です! 先ほど、国境を越えて、

 宿場町の宿に到着した一団がいます!」


俺はスープをすする手を止め、隠密の男を見つめた。


「一団? ただの商人や冒険者じゃなさそうだな」


「はい……! 我々の眼は欺けません。あれは間違いなく、

 人間の国が誇る『勇者』とそのパーティーです!

 てりやきばーがーの噂を聞きつけ、やってきた模様!」


その言葉に、食卓が一瞬で静まり返る。ルナリアが息を呑み、

ゼフェルがすっと鋭い目つきになった。


だが、俺はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、残りのハンバーグを口に放り込んだ。


「勇者、ふたたび、か。上等じゃねえか。予定通りだ。

 明日がいよいよ、本当の決戦の時だな」


俺たちの目的は、人間と魔族の戦争をおっぱじめることじゃない。

地球のジャンクフードという名の暴力的な美味で、人間の最高戦力を

骨抜きにして平和をもぎ取ることだ。


「おい、ガウラ」


俺は、そんな緊迫した空気などどこ吹く風で、目の前の肉料理に

夢中になって口の周りをソースだらけにしている獣人の少女に声をかけた。


「はふっ? なに、ボス?」


「明日の朝、勇者たちが店に来ても、絶対に襲いかかるんじゃねえぞ。

 もし暴れたら、お前、向こう1ヶ月テリヤキバーガーもポテトも

 『抜き』だからな」


「――っ!?!? そ、それは絶対に嫌だ!!!

 明日はお利口にします! ボスの言うこと、絶対聞きます!!」


犬耳をこれ以上ないほど後ろに寝かせ、必死な顔でブンブンと首を振るガウラ。

よし、これで突発的な戦闘の心配はねえな。


「ゼフェル、ルナリア、子供たち。明日はいつも以上に気合入れていくぞ。

 人間の勇者の胃袋、綺麗に掴み落としてやろうじゃねえか」


「はっ!古代の叡智の恐ろしさ、思い知らせてやりましょう!」


「もう、本当におじさんは肝が据わってるんだから……。

 わかったわ、私も全力で接客するわよ」


こうして、嵐の静けさを孕んだ宿場町の夜は更けていく。


魔王軍(仮)vs勇者一行、


その世紀の決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。



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