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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第六章 「ハラが減っては戦にならぬ、ハラが膨れりゃ戦はできぬ」

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第五十二話 決戦んん…??

「いらっしゃいませ! 本日の営業を開始いたします!

 最後尾の方は、こちらの看板の後ろへお並びください!」


朝の爽やかな光が差し込む宿場町に、ルナリアの

ハキハキとした声が響き渡る。

初日の大繁盛の噂が一日で広まったらしく、開店直後から

店の前には、人間の行商人や魔族が入り乱れて

凄まじい大行列を作っていた。


接客の表舞台は、美男美女で客寄せパンダとしても

完璧なゼフェルとルナリアのコンビに任せてある。

俺は店外の少し離れた場所から、黙々とお客の誘導をしつつ、

周囲の状況に鋭く目を光らせていた。

昨夜の隠密からの報告通り、人間の勇者が

この宿場町に来ているのは間違いない。


暴発を避けるため、忠犬ガウラとガルム将軍が

配してくれた護衛の隠密部隊は、あらかじめ店の裏手や

死角となる見えない場所に完全待機させてあった。


――来たな。


外で行列の様子を眺めていた俺の目に、明らかに

周囲の一般客とは違うオーラを放つ四人組が映り込んだ。

一人はどこか頼りなげな黒髪の少年。

その脇を、白銀の甲冑を纏った凛々しい女騎士、

大きな帽子を被った小柄な魔術師、そして清楚な法衣に

身を包んだ聖女が固めている。


人間の国が誇る最強戦力――勇者一行だ。

以前、国境の町で遭遇した時に面倒を避けて俺が翌朝

こっそり逃げ出した、あの地球人のガキ――

勇者の鈴木コウタロウを、俺は今度は真っ向から

迎え撃つためにここで待ち構えていた。

いつでも動けるように身体に薄く魔力を巡らせる。


だが、その黒髪の少年が俺の姿を視界に捉えた瞬間。


「あ、七転さん! やっぱり七転さんだ!

 覚えてますか、鈴木です! あの時は本当に

 お世話になりました!」


「……あ、あん? おう、鈴木か。

 元気そうでなによりだ」


殺気も敵意も皆無の、あまりにも緊張感のない

明るい声が響き、俺は拍子抜けしそうになった。

待ち構えていたこちらの気迫などどこ吹く風で、

コウタロウは無邪気に笑顔を輝かせている。


「あの翌朝、急にいなくなっちゃったんで、みんなで

 すっごく探したんですよ! 今度はここで

 お店を始めたんですね。それにしてもすごい混み方だな、

 僕たち、これ買えるかなぁ……」


「食材はたっぷりあるんで大丈夫ですよ。

 ただ、申し訳ないけど、他のお客さんと同じだから

 最後尾に並んでもらえるかな」


「あ、はい! 当然です! 並びます!」


「コウタロウ……並ぶの?」


魔法使いのメルが信じられないといった顔で叫ぶが、

コウタロウは素直に大行列の最後尾へとトコトコと

歩いていってしまった。

仲間たちも、呆れ果てながらそれに従うしかないようだ。


「ふぅ……。今はやり過ごせたか」


額の汗を拭いながら、俺は大きく息を吐き出した。

でも、気は抜けない。

人間の最高戦力が、すぐそこに並んでいるのだ。

大行列の隙間から時折こちらを見る視線に、

ひどく時間が長く感じられる。


じわり、と焦れるような時間が数十分ほど続き。

ついに、勇者一行の番だな。商品を渡され、

彼らは無事に買い終えたみたいだ。

そして、近くのベンチで一斉に食べ始めた。


……と、その直後だった。

ハンバーグを一噛みしたコウタロウが、突然ガタッと

立ち上がり、もの凄い勢いでこちらに向かって走ってきた。


「ヤバいっ……!」


その場に凄まじい緊張が走る。ゼフェルが

腰の剣に手をかけ、裏手のガウラたちに緊張が走ったのが

伝わってきた。

やはり、ここが魔王国の店だと気づいて襲撃してくる気か!?


「これ、照り焼きバーガーセット!!」


「僕の世界の……僕の故郷の味だぁぁぁぁぁぁ!」


……あ、あれ、泣き出した。

コウタロウはその場にへたり込み、子供のように大号泣を

始めてしまった。

呆気に取られる俺たちの前で、聖騎士セシリア、

魔術師メル、聖女ノエルの三人が


「コウタロウ、しっかりしなさい!」「毒でも入ってたの?」

「落ち着いて!」と慌てて彼を慰め始める。


「お、おじさん、大丈夫……!?」


ルナリアが平常を装いつつ、すっと俺の隣に並んだ。

気丈に振る舞ってはいるが、その指先はわずかに震えており、

かなり緊張しているようだ。

そりゃそうだ、泣いているとはいえ目の前には国を滅ぼせる

化け物がいるんだからな。


その時、わんわんと泣いていた勇者が、涙をゴシゴシと

拭いながら、のっそりと顔を上げた。

放置して俺の隣に寄り添うルナリアの姿を凝視した瞬間、

その動きがピタリと止まる。


「コ、コ、コウタロウです。ゆ、勇者です。

 よろしくお願いします!」


「へっ?」


突然の自己紹介と共に、コウタロウは直角に近い角度で

ルナリアに向かって深々とお辞儀をした。

あまりの脈絡のなさに、慰めていた勇者一行の三人すらも

「はあぁ!?」と声を揃えて唖然としている。


「お、お名前、聞いてもいいですかっ……!?」


ガバッと顔を上げたコウタロウは、耳まで真っ赤にしながら

ルナリアを熱い目で見つめ、上ずった声でそう乞うた。


……いや、これ、どう見ても一目惚れだろ。

ルナリアの大人びた美貌に、一発で

ハートを撃ち抜かれちまったらしい。

人間の切り札である勇者が、飯の美味さに泣かされ、

挙句の果てにうちの秘書官に骨抜きにされている。

これは、戦う前から俺たちの完勝ではないだろうか。


「ぷっ……くくく……」


想定外すぎる決戦の行方に、外の喧騒の中で

必死にニヤケを堪える俺だった。

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