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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第六章 「ハラが減っては戦にならぬ、ハラが膨れりゃ戦はできぬ」

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第五十話 勝負だ!

魔王城からわずか四時間。


荒野の街道を音もなく、滑るように爆走してきた軽トラの登場は、

宿場町の住民や旅の冒険者たちの度肝を抜くには十分すぎた。


「な、なんだあの箱は……!?」

「魔王城から何かとんでもない塊が飛んできたぞ!」


風を切る音だけを響かせ、颯爽と店舗の前に滑り込んできた未知のマシーン。

その物珍しさと、見たこともない外観への好奇心から、店舗の前には

あっという間に大勢の群衆が集まってきた。


人だかりができるのは商売において最高のスパイスだ。集まった客たちの

視線が集中する中、八起は大きく息を吸い込んだ。


「よし、お前ら! 魔王国の新時代、開店だ!」


「「「いらっしゃいませーーーっ!!」」」


八起の合図とともに、子供たちの年長者たちが声を揃えて開店を告げる。

その瑞々しくも力強い声が、宿場町の青空に響き渡った。


今回の目玉は、認知度を一気に高めるための「開店初日半額セール」だ。

ただでさえ未知の料理だ、まずは安さでハードルを下げて一人でも多くの

人間に食わせる。それがジャンクフードの必勝法だ。


だが、集まった群衆は美味そうな匂いに鼻をひくつかせつつも、

見たことのない『照り焼きバーガー』に足踏みしていた。


「おい、そこでお前たちの出番だ。頼んだぞ」


「はっ! このゼフェル、王の智慧を広める伝道師となりましょう!」


「もう……本当に人使いが荒いんだから、このおじさんは……」


八起の後ろから、一歩前に出たのはゼフェルとルナリアだ。二人が店頭に

立ち、集まった群衆へ向かって商品の説明と呼び込みを始めた瞬間、

劇的な変化が起きた。


「な、なんて爽やかなお方……!」


「きゃあ! あそこのお姉さん、すごく綺麗……!」


街の女性たちがゼフェルへと群がり、逆に男性たちがルナリアの周りを

取り囲んで、むさくるしいほどに商品の説明を熱心に聞き始めたのだ。


ゼフェルが笑みを浮かべてバーガーの魅力を語れば、ルナリアが

少し照れくさそうにツンとした態度で注文を促す。その破壊力は凄まじく、

客たちは吸い込まれるように財布を開いていく。


この世界でも美男美女の集客力は恐るべきものだと、八起は調理場の奥で

ただただ感心するしかなかった。


「お、おい……じゃあ、その、てりやきばーがーを1つくれ」


「俺は、こっちの黄金色の、ふらいどぽてとってやつを!」


最初は恐る恐る、単品でのみ購入していく人々。だが、その購入者たちが

店頭のベンチに座り、八起の教えた「作法」の通りに一口かじりついた瞬間、

勝負は決した。


「――ッ!? う、美味すぎるッ!!」


「なんだこのパンの柔らかさは! 肉汁が止まらないぞ!」


「この細い芋もサクサクで手が止まらん! 塩気が最高だ!」


様子を見ていた周囲の人々が、そのあまりの衝撃に狂喜乱舞する購入者たち

の表情を見て、一斉に色めき立った。


「おい! 俺にもその、てりやきばーがーの『せっと』をくれ!」


「私にも、てりやきばーがーを! あと黒い飲み物も!」


口コミの波は一瞬で広がり、セットでの購入者が爆発的に増えていく。

注文の嵐が吹き荒れ、調理場は一気に大忙しとなった。


「お肉の焼き加減、火力を落とすなよ!」


「ポテト、油から上げます! 塩を振って!」


「コーラとジンジャーエール、注ぎます!」


子供たちは汗を流しながら、必死に手を動かしていた。

アイアン・ロースターの前で真剣に肉をひっくり返す少年。

手際よくポテトを袋に詰めていく少女。彼らの誰もが、生き生きとした目で

自分の仕事に向き合っている。


孤児として城に集まり、先行きのみえない日々を送っていた

彼らの生い立ちを考えると、こうして自分の力で未来を切り拓こうと

頑張っている姿に、八起の胸は熱くなった。

何でも屋として、こいつらに職を繋げてやれて本当に良かった。


「よぉし、お前らその調子だ! ジャンジャンいくぞ!」


「「「はいっ!!」」」


怒涛の勢いで押し寄せた客波は途切れることなく、初日は用意していた食材

がすべて綺麗に大入り完売。異世界初のファストフード店は、

文句なしの大成功を収めた。


「みんな、本当によく頑張ったな! 最高の初日だ!」


ひとしきり、疲れ果てつつも達成感に満ちた笑顔を浮かべる子供たちに熱い

声援と労いの言葉を送ったあと、八起は空になった商品やシロップの

補充のため一度城に戻ることにした。


「八起殿! ぜひ、その帰路の道中、この軽トラという驚異の魔導車に、

私を同乗させてください!」


出発しようとした八起の前に、目をギラギラと輝かせたガルードが

息を荒くして立ちはだかった。この驚異の物流インフラに、

商人の血が黙っていなかったらしい。


「ああ、いいぞ。乗れよ」


ルナリアは店の手伝いや子供たちのケアで居残るため、助手席には、

興味津々で鼻息の荒いガルードが滑り込んってきた。


行きは、隣からルナリアのいつも以上にいい匂いが漂う、

ちょっと緊張感のある華やかなドライブだったというのに。

帰り道は、五十男の作業着の匂いと、高級商人の熱苦しい質問攻めが

車内に充満する、ひどくむさくるしい帰路になった。


「八起殿! この速度、一体どういう術式で!?」

「あー、前魔王のガラクタをちょっとな……。おい、ガルード、あんまり

顔を近づけるな、狭いだろ」


夕暮れの荒野を、軽トラはむさくるしさを乗せて静かに、

だが圧倒的な速度で爆走する。八起の仕掛けた食糧テロの第一歩は、

これ以上ないほどの最高のロケットスタートを切ったのだった。

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