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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーはじめました~  作者: おっさん5963
第六章 「ハラが減っては戦にならぬ、ハラが膨れりゃ戦はできぬ」

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第四十九話 異世界ドライブ

「よし、追加物資の積み込みは完了だな」


八起は完成したばかりの「軽トラ」の荷台を見つめ、満足げに首を縦に

振った。荷台には、ガルードの商会と独占販売権を締結した、

あの四大マヨソースをぎっしり詰め込んだコンテナが並んでいる。


さらにその横には、鳴地湧水の炭酸ガスが抜けないよう空間固定の術式を

施した「専用の魔術樽」がいくつも積まれていた。どれも、今日から始まる

店舗の運営に欠かせない重要物資だ。


今日は、記念すべき宿場町のファストフード店の開店日。魔王城から

宿場町までは、大人の足で徒歩だと丸三日はかかる。だが、ドラゴンの魔核

とアイアンウッドの浮力を組み合わせたこの軽トラなら、一体どれくらいの

時間で着くのか。


職人として、その性能を試す絶好の機会でもあった。


「ルナリア、出発するぞ!」


八起は城の勝手口に向かって、大きな声を張り上げた。


「……どこへ行くんですか、こんな朝早くから……」


しばらくして、大きなあくびを噛み殺しながら、ひどく眠そうに目を

こすってルナリアが現れた。まだ頭が働いていないのか、いつもより少し

足元がおぼつかない。


「どこへって、宿場町の店舗の開店に決まってるだろ。お前も秘書官なら、

記念すべき初日を見届けなきゃな」


「はぁ??」


ルナリアは一瞬で眠気を吹き飛ばし、完全に目が点になっていた。そして、

「何言ってるんだ、このおっさん……」とでも言いたげな、冷ややかで

底冷えのする蔑む目で俺を睨みつけてきた。普段のツンデレな態度を

通り越したその視線に、俺はなぜか背中にちょっとゾクゾクするものを

感じてしまった。


「丸三日かかる距離なのに、今から行くなんて正気!? お店は今日の

お昼前には開く予定なのよ!?」


「まあまあ、いいから乗れよ。ほら、助手席が空いてるぞ」


軽トラの扉を開け、助手席のシートをポンポンと叩いた。


「……もう、しかたないわね。着替えてくるから、少しそこで待って

ください」


ルナリアは深い溜め息をつき、呆れ果てた雰囲気のまま一度城の中へ

戻り、すぐに動きやすい旅装へと着替えて戻ってきた。そして、今なお

疑わしげな視線を八起に向けながら、しぶしぶといった様子で助手席へと

乗り込んできた。


ガチャリと扉が閉まる。


狭い車内、隣に座ったルナリアから、心なしかいつも以上にいい匂いが

漂ってくる気がした。少し高級な石鹸のような、あるいは彼女自身の香り

だろうか。無骨な五十男の作業着の匂いとは大違いだ。


「それで、どうなるんですかこれ。こんな箱に座って、

どうやって宿場町まで行くのよ」


不満げにシートの感触を確かめるルナリアを横目に、

俺はニコリと笑みを浮かべ、ドラゴンの魔核に魔力を繋いだ。


「いくぞ。出発だ」


にやけながらレバーを引くと、軽トラは静かに、そしてゆっくりと地面から

数センチほど浮き上がり、動き出した。


「なっ……ええええっ!? 浮いてる!? 動いてるわよ!?」


ルナリアが驚愕の声を上げ、助手席の取っ手にしがみつく。


「おいおい、驚くのはまだ早いぞ。しっかり掴まってろ。――全開でいくぞ!」


ペダルを一気に踏み込むと、軽トラは凄まじい加速で魔王城の門を

飛び出し、荒野へと続く街道を突き進んだ。ビュウウウウッ!と、風を

切り裂く音が窓の外で激しく鳴り響く。だが、車内は驚くほどに静かだった。


「な、なによこれぇぇぇ! 速い! 速すぎるわよおじさん!」


ルナリアが引きつった悲鳴を上げるが、俺はハンドルを握りながら

「最高だな!」と心の中で叫んでいた。


これだけ大量の荷物を荷台に満載しているというのに、アイアンウッドの

強力な吸着力と浮力のバランスのおかげで、路面の凹凸による揺れが

まったく無い。実にスムーズだ。自分の計算通り、完璧に組み上がった

機械の挙動を体感するのは、職人としてこの上なく気持ちがいい。

最高の仕事だ。


「凄いだろルナリア! 揺れも反動も一切なしだ!」


「あ……ひ、ひぃっ……! ま、ま、ま……っ!」


ルナリアは尋常ではない速度で流れていく景色に圧倒され、完全に恐怖で

顔を引きつらせ、言葉にならない声を漏らして硬直していた。

大きく見開かれた目からは涙がにじみ、激しくガタガタと震えながら、

白くなるほど助手席の取っ手を握りしめている。


だが、鈍感で現場主義の俺は、彼女のそんな様子にはこれっぽっちも気づかず、

ただドライブの快適さに満足していた。


やがて一時間も走ると、ルナリアもこの驚異的な乗り物の安全性に慣れて

きたのか、徐々に体の力を抜いていった。


「本当に……全然揺れないのね。不思議な感覚だわ」


「だろ? これが元いた世界の誇る軽トラってやつよ」


八起の軽口を聞いて、ルナリアは先ほどまでの恐怖が嘘だったかのように、

ふっと肩の力を抜いた。窓の外に広がる魔王国の景色は、

彼女にとっても見慣れた風景だろう。だが、この速度で駆け抜ける

車窓からの景色は、まるで別世界のようだったはずだ。


そこからは、窓の外に広がる広大な魔王国の景色を眺めながら、

二人で他愛のない世間話を交わした。他国の貧しい食事情のこと、

これから売り出すバーガーの売れ行き予測、そして、子供たちの

今後の生活について。


徒歩なら絶望的な道のりも、こうして話しているとあっという間だ。

出発してから、およそ四時間ほどが経過した頃。街道の向こうに、

活気あふれる宿場町の街並みが見えてきた。


「本当に……本当に着いちゃった……。信じられない、四時間足らずで

三日分の距離を移動するなんて」


ルナリアが呆然と呟く中、八起は軽トラの速度を落とし、

まさに今、開店の最終準備をしようとしていた店舗の前へと滑り込ませた。

静かに浮力を切り、軽トラが地面にカツンと着地する。


車の扉を開けて外へ出ると、そこには、ゼフェル、ガウラ、ガルード、

そして子供たちの年長者たち、そこにいる全員が、開いた口が

塞がらないといった様子で唖然とした表情を浮かべ、

こちらを凝視している姿があった。


「よぉ、みんな。物資の追加を持ってきたぞ」


八起はいつもの作業着の襟を正し、度肝を抜かれた配下たちに向かって、

豪快に手を挙げてみせた。

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