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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第五章 おっさん達の小競り合い――最後に勝つのは腹の虫

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第四十話 こ、これがイノベーション…。

ドォォォォンッ! という、大地を揺るがす大音響がようやく鼓膜を

離れる。

魔王城の畑の中央にそびえ立つのは、白煙を上げる巨大な二足歩行重機

――『ギガント(カイ)』であった。


「うわっとっと……っ!」


遠隔で操作するために、ありったけの魔力を一気に放出した反動だろうか。

八起は急激な脱力感に襲われ、その場にへなへなと腰を抜かした。

作業着のズボンが土に汚れるのも構わず、ただ呆然と愛機を見上げる。


一方、あまりの衝撃映像に思考がフリーズしていた側近の五人も、

ようやく放心状態から回復しつつあった。

最初に口を開いたのはガルム将軍だ。

信じがたいものを見たと言わんばかりに、冷や汗を流しながら小声で

もらす。


「……凄まじいな。この圧倒的な力。これほどの兵器があれば、

世界征服など容易いものを……」


その呟きを聞き咎めた軍師ゼフェルが、静かに首を振って異を唱えた。


「ガルム殿、それは違います。力による現状変更は、あらゆるものを

疲弊させる元だと八起殿は考えておられるのです」


ゼフェルは涙を浮かべて熱弁を振るう。


「貧しさを克服するための侵略行為が、さらなる戦争を生み、

結果として貧しさを増長させる。八起殿が目指すのは、武力に頼らぬ

真の救済。この鉄の巨神は、あくまで害悪を退けるための盾なのです!」


「な、なるほど……。我が主の深謀遠慮、恐れ入るばかりだ……!」


またも始まった超解釈を背中で聞きながら、八起はルナリアたちに

抱えられ、なんとか上体を起こした。

当の八起は、自分がしでかした事の重大さに、今更ながら驚いている。


「ド、ドラゴンに勝った……ふはぁ……。本当に勝っちまったよ。

いやぁ、備えあれば憂いなしって言うが、準備しといて良かったな、

ハハハ……」


白髪交じりの頭を掻きながら笑うが、内心は興奮でバクバクだった。

ドラゴンとロボ(ロボ???)が戦ったのだ。

男なら誰しも一度は夢見る大ロマン。

その余韻に浸っていると、ルナリアが高級美容液の台無しな呆れ顔で

迫る。


「ちょっとおじさん! 何に浸ってんのよ! そもそも農機具を

改造して、なんてもの作ってんのよぉ!」


「いや、これはただの重機だって……。そういえば、バジール大臣は

どこだ?」


「ふふ、ご安心くださいぃ。しっかり捕まえておきましたよぉ」


シオリがおっとりとした平常運転の口調で微笑む。

いつの間にかその『魔糸(マシ)』で、気絶した大臣をミノムシの

ようにグルグル巻きにして転がしていた。


ひとまず、気絶した大臣を回収して、一同は魔王城へ戻ることにした。

城の謁見の間に戻ると、ガルム将軍が大鎌のような鋭い牙を剥いて

進言する。


「八起殿、バジールは我が国を揺るがそうとした卑劣極まる大逆人。

即刻、重罪人として処するべきです!」


(おいおい、ちょっと前まで他国侵略しろって俺を脅してたあんたが

言うか!)


八起が心の中で猛烈にツッコミを入れていると、ゼフェルが提案した。


「ならば、『封印の柩』を使いましょう。その方が確実です」


「封印の柩……? なんだそりゃ」


首を傾げる八起に、ゼフェルが丁寧に解説を加えてくれる。


「はい。便宜上『柩』と呼んでおりますが……強力な魔力を持つ高位の

魔族は、肉体を処しても、いずれどこかで復活する可能性が捨て

きれません。

そのため、過去の凶悪犯用に、何人もの高位魔道士が魔力を練り上げ、

強固な『空間固定の付与』を施した特殊な箱なのです。八起殿ほどの

魔力があれば、さらに頑丈なものを簡単に作れるかと」


「へぇ、そんなものがあったのか……」


慢性的人手不足の魔王国では見張りを割く余裕もないため、

大臣は、城の地下深くにある最深部で厳重に封印されるという。


だが、八起の職人としてのアンテナがビンビンに反応していた。


(空間固定の付与……? 聞いてる話から想像すると、それって

要するに、中に入れた物の『時間』が止まってるってことだよな……?)


もしそうなら、とんでもない道具だ。


「よし、バジールの封印はみんなに任せる。俺はその『柩』ってやつを、

ちょっと詳しく調べさせてもらうわ」


八起はゼフェルたちに大臣を託すと、さっそく地下の保管庫へと

向かった。

埃を被った重厚な鉄の柩に手を触れ、固有スキル『接触鑑定』を発動

する。

脳内に流れ込んできたのは、驚くべき原理と構造だった。


(……やっぱりだ! 俺の想像通り、中に入れた物の時間を完全に

止めるための魔道具だ。これ、構造さえ分かれば……別の用途に使える

ぞ!)


八起の脳裏に、現場主義の職人として、そして食文化のイノベーションを

起こす者としての、新たな閃きが爆発した。


時間を止める箱。それはつまり――生肉だろうが、出来立て熱々の料理

だろうが、鮮度も温度も一切変えずに『いつまでも保存できる』のだ。

しかも、ゼフェル曰く俺の魔力なら新しく作り出せる。


「これがあれば、素材の長期保存も、大量調理の作り置きも全部解決

じゃねえか! よーし、そうと決まれば、後日ゼフェルを呼んで新しく

作るかっ!」


バジール大臣の脅威が去った魔王城で、50歳の何でも屋は、またしても

とんでもないインフラ革命の種を見つけてしまい、目を輝かせるのだった。

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