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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第五章 おっさん達の小競り合い――最後に勝つのは腹の虫

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第三十五話 大臣??いたんだ。

ガウラが放り出した八起の手紙を、ゼフェルが食い入るように見つ

めていた、その時。


「クックック……。おやおや、高貴なる魔王城の謁見の間が、

随分と泥臭い(いも)の臭いで満ちておる。国難の折に、

呆れた醜態よな」


 静まり返った場に、ねっとりと鼓膜に張り付くような老人の声が

響いた。

豪奢な毛皮の外套を羽織り、宝石の散りばめられた杖を突いて歩み

出てきたのは、一人の老魔族だった。


 その名はバジール。

前魔王の時代から国政の隅に巣食う、魔王国の大臣(だいじん)

であった。


 バジールは、フライドポテトの山を前にして大の字に寝転がって

いるガルム将軍を、蔑みの目で見下ろす。


「これほどの大豆(だいず)の豊作を目の当たりにしながら、

ただの芋の美味さに溺れて戦意を失うとは。ガルム将軍、

なんとも情けない。人狼の老雄も、寄る年波には勝てず

ボケが始まったかえ?」


「……バジール、貴様……っ」


 ガルムが鋭い牙を剥き、低く唸るが、満腹の体は思うように

動かない。

すかさずゼフェルが、美貌に冷徹な不快感を露わにして、

大臣の前に立ちはだかった。


「おや、バジール大臣。今まで一体、どちらの穴蔵に

隠れていらしたのですか? 

国が財政破綻の危機に瀕していた間、ただの一度も

そのお姿を見かけませんでしたが?」


 皮肉を込めたゼフェルの問いに、バジールは杖をコツンと床に

鳴らし、不気味な笑みを深める。


「クックッ、相変わらず生意気な若造よな、ゼフェル。実績もない

若輩の身で軍師を気取るとはな。儂はな、この国を救うための

『大いなる策』を練るため、忙しくしておったのだ」


 バジールは、昔から自分を敬おうとしないゼフェルのことが、

反吐が出るほど気に入らなかった。

その粘着質な視線が、今度は横に控えていた秘書官へと移る。


「――おお、ルナリア。しばらく見ぬ間に、さらに肌が

輝いて美しくなったなぁ。そろそろ儂の元へ嫁ぐ気はないかえ?」


 なめ回すような好色な視線に、ルナリアは全身に鳥肌が立つのを

感じ、激しい嫌悪感をあらわにした。


「お断りします、バジール大臣。私は魔王城の秘書官です。

あなたに身を捧げるつもりは、毛頭ありません」


「ほう、手厳しい。この魔王城内で身寄りのないガキどもをコソコソ

と養っているそうだな? 儂の女になれば、そのガキどもの

命くらいは保証してやろうという、慈悲なのだがなぁ?」


 高圧的な態度でルナリアを脅しつけ、バジールは歪んだ欲望を

隠そうともしない。

彼が考えているのは、ただ一つ。


 前魔王が唐突に失踪し、混迷を極めるこの隙に、脆弱な人族ども

を文字通り蹂躙すること。そして、その圧倒的な武力と恐怖を

もって、己が次の魔王の座に君臨することであった。


 バジールは謁見の間をゆっくりと見回し、大げさにため息をつく。


「どこぞの馬の骨とも知れぬ、人間のおっさんを連れてきて崇め

奉り、挙げ句の果てには行商などという卑しい真似にうつつを

抜かす……。偉大なる魔族がここまで落ちぶれるとは、

なんとも情けない。

言葉も出んわ。今の魔王城は、文字通り腐りきっておる!」


 吐き捨てられた悪意に満ちた言葉に、その場の空気が一瞬で凍り

ついた。


「……おい、爺さん」


 最初に動いたのは、ガウラだった。

大食い対決の余韻は消え失せ、その瞳には父親譲りの正真正銘の、

狼の怒気が宿っていた。


「ボスの悪口を言う奴は、あたしが噛み殺すって決めてんだよ」


 ガルム将軍もまた、娘の殺気に呼応するように、静かに立ち

上がる。


「ほ〜う……。おやおや、おいたわしい。飼い犬の

遠吠えか。儂の私兵団を前にして、そのような大口がいつまで

叩けるかな?」


 バジールの背後の影から、漆黒の鎧をまとった不気味な兵たちが、

音もなく姿を現した。


「皆様ぁ、そこまでになさいませぇ」


 おっとりとした、しかし背筋が凍るほど冷たい声が響く。

見れば、シオリの手から伸びた極細の魔糸(マシ)が、バジールの

私兵たちの首元に、寸分の狂いもなく巻き付いていた。

少しでも動けば、その首が跳ね飛ぶのは明白だった。


 ゼフェルが静かに剣を抜き、ルナリアは魔導書を握りしめ、

ガウラが牙を剥く。


 大臣バジールと、魔王城の側近たち。

謁見の間は、文字通り一触即発の緊迫感に包まれた。

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