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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第四章 ファンタジー世界を舐めてたおっさん――ドラゴンに続き勇者現る!? 肝冷えすぎてソッコー帰る!

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第三十三話 一難去ってふたたび

勇者コウタロウたちに正体がバレる前に、八起たちは国境の町から

日の出前の暗闇に乗じて、ひっそりと抜け出すことに成功した。

外貨を稼ぐための華々しい出撃のはずが、まさかの一日撤退。

仕事の現場では予期せぬトラブルが付き物だが、

この出会いのリスクはさすがに命がけだった。


「ボス、もう帰るのか? せっかくの美味いポテト、

もっとあそこの奴らに食わせてやりたかったんだぜ……」


荷馬車の荷台に揺られながら、ガウラが長い耳をペタンと寝かせて

残念そうに呟いた。


「仕方がねえよ。あいつらは本物の勇者パーティーだ。

俺たちの素性が割れたら、国境どころか魔王国全体が

戦火に包まれかねないからな」


八起はため息をつきながら、ガタガタ揺れる木製の床板に背中を預けた。

急な方針転換で、十分な休息も取れないまま町を引き返したため、

商隊の足取りは行きよりも明らかに重かった。

片道七日の過酷な道のりだ。行きでドラゴンに遭遇した恐怖の記憶も新しく、

全員が極度の緊張と旅の疲れを癒せないまま進まざるを得ない。


「八起様、申し訳ありません。強行軍のせいで馬たちも疲弊しております。

魔王城に戻るには、行きよりもさらに日数がかかることになりそうですな……」


商人が申し訳なさそうに髭を揺らす。


「気にするな、商人。安全が第一だ。じっくり確実に進めてくれ」


作業着のポケットから鉛筆を取り出し、耳の裏に挟み直した。

何でも屋の現場なら、納期が遅れるのは致命傷だが、命あっての物種だ。

八起たちは警戒を怠らず、地道に魔王城への帰路を急ぐしかなかった。


――その頃、主を欠いた魔王城では。

玉座の間に、重苦しい足音がドスンドスンと響き渡っていた。


「おい、ゼフェル! 八起はいるか!?」


咆哮のような声を上げたのは、軍部の重鎮である|ガルム将軍だった。

超脳筋の侵略主義者である彼は、普段なら病的に溺愛している娘ガウラが

いない寂しさで弱腰になるはずだが、今日ばかりはしびれを切らしたのか、

約束の期限を前に早々と城へ怒鳴り込んできていた。


「ガルム将軍、控えなされ。八起殿は我が魔王国の未来を築くため、

重要な『知見の獲得』へ赴かれているのだ」


玉座の前で一人、毅然とした態度で対応に当たっていたのは、

軍師のゼフェルだ。


「知見だと!? そんな曖昧な言葉で誤魔化されると思うな!

我らが交わした財政立て直しの猶予は、残り二ヶ月を切っているのだぞ!」


「約束の方はどうなった! 主食の普及やマヨネーズとやらの噂は聞いておるが、

軍を維持し、人族を打倒するだけの実質的な『外貨』と『成果』は

上がっているのか!? それを証明できねば、我ら軍部はこれ以上の静観はできん!」


軍部を代表する老雄の圧迫感は、並の魔族なら失神しかねないほどのものだった。

だが、過剰崇拝と超解釈の天才であるゼフェルは、

不敵な笑みすら浮かべてガルム将軍を真っ向から見据えた。


「ふっ、相変わらず視野が狭いな、ガルム将軍。

八起殿の『古代の叡智』が、そのような目先の成果だけで終わると

本気でお思いか?」


「何だと……!?」


「今頃、八起殿は隣国の喉元にて、他国の経済を根底から揺るがす

壮大なインフラ戦略を完遂されておられるはず。

貴公はただ、その偉大なる結果を待っていれば良いのだ」


ゼフェルは完璧な顔で胸を張った。

まさか当の八起が、勇者から這々の体で逃げ出し、

大遅延の強行軍でへろへろになりながら帰還中だとは、

この有能なポンコツ軍師は夢にも思っていなかったのである。


魔王城に残された側近たちと、帰路を急ぐおじさんの間に、

新たな不穏な空気が流れ始めていた。

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