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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第四章 ファンタジー世界を舐めてたおっさん――ドラゴンに続き勇者現る!? 肝冷えすぎてソッコー帰る!

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第二十九話 ファンタジー世界(後編)

結局、ゼフェルの大仰な護衛軍の提案を突っぱね、

八起は二十名の精鋭を城に残すことに成功する。


今回の遠征は、以前「大試食会」で条件をクリアした

高級商人の商隊に便乗させてもらう形を取った。

商人の顔が利く国境の町へ向かう、最も目立たない方法だったからだ。


「ボス、あたしがしっかり守ってやるからな!

早くあの美味いポテトを揚げようぜ!」


同行を許されたのは、忠犬系のガウラだけだ。

鼻が利き戦闘力も抜群な彼女は、耳をピコピコと動かし、

嬉しそうに尻尾を振って八起の横を歩いている。


だが、商隊の馬車に揺られながら、八起は商人の言葉に

絶句することになった。


「……なぁ、ここから国境の町まで片道『七日間』もかかるのか?」


「ええ、八起様。順調にいってそれくらいですな」


商人は当然のように顎をなでた。

片道七日。それは東京から時速四キロの徒歩で向かうようなもので、

青森や秋田の辺りまでひたすら歩き続ける凄まじい距離だ。

新幹線や飛行機のない世界の移動が、これほど過酷だとは思わなかった。


案の定、初日の夜の野営から現実の壁が立ちはだかる。

調理設備を積んだ大荷物の移動や、テント、大量の食材の

積み下ろしは想像以上の重労働で、八起は汗を拭いながら、

前世の知識を思い出して商人に尋ねてみた。


「なぁ、この世界には……こう、外見は小さな袋なのに、

中には大荷物をいくらでも収納できるような『魔法のバッグ』

みたいな魔道具は無いのか?」


そんな便利なものがあれば、何でも屋の仕事も劇的に

楽になっただろう。だが、八起の問いを聞いた商人は、

腹を抱えて大笑いし始めた。


「ハハハ! 八起様、冗談が上手い! そんなおとぎ話のような、

都合の良い魔道具があるわけないでしょう!」


「……え、無いの?」


「あるはずがありません。もしそんな代物があれば、我ら商人が

物流を完全に支配し、今頃は世界を牛耳っていますよ」


商人の至極真っ当な経済の理屈に、深く納得するしかなかった。

やはり地道に運ぶしかないのだ。


そうして旅を続け、行程四日目の昼。

商隊の空気が一変した。


「おい、静かにして、伏せろ!」


雇われていた護衛の冒険者たちが、青ざめた顔で武器を握りしめる。

一瞬で張り詰める、強烈な緊張感。

直後、鼓膜を破らんばかりの凄まじい咆哮が天から轟いた。


「グルゥオオオオオオオオオッ!!」


巨大な影が、太陽の光を遮る。

見上げれば、前世の超大型重機すら玩具に見えるほどの巨体だった。

本物の『ドラゴン』が、翼を広げて空を滑空している。


息を呑む八起の頭上を、ドラゴンはしばらく旋回した。

幸いにも空腹ではなかったのか、興味を失ったように

遠くの山へ去って行く。


「た、助かった……。通り過ぎてくれたか」


安堵のあまり、その場にへたり込む商隊の一行。

かつて「本物のドラゴンに乗ってみたい」などと呑気に考えていた

八起は、冷や汗で作業着をびしょ濡れにしていた。


「乗ってみたいどころか……生きた心地がしねえよ……」


圧倒的な捕食者の威圧感に、自分の平和ボケを心から呪った。

冒険者のリーダーが、青い顔のまま八起に囁いた。


「今回は本当に幸運だった。奴が本気なら、俺たちは一瞬で消し炭だ」


異世界の「城壁の外」の洗礼を、八起は文字通り身をもって知った。


ハプニングはあったものの、商隊はそれ以上の襲撃を受けず、

七日目の夕方に無事、隣国との国境の町へと到着した。

町に入ると、八起はさっそく商人と明日の露店の段取りを済ませる。


「よし、ガウラ。今日はもう宿に入って明日に備えて――」


「ボス! お腹空いた! 肉だ!この街の美味いもん食いに行こう!」


八起が声をかけ終わる前に、ガウラがヨダレを垂らして詰め寄ってきた。


「おいおい……」


七日間の過酷な旅路を経て、さらにドラゴンと遭遇したのだ。

生きた心地がしなかった。八起は、もう一歩も動けないほど

疲れ果てていた。

それなのに、この獣人娘の底なしの体力と食欲は一体どうなっているんだ。


脳筋予備軍のタフさに呆れ果て、八起は財布から数枚の銀貨を取り出した。


「ガウラ、俺は長旅の疲れで死にそうだ。ベッドから動く気力もねえ。

ほら、この金をやるから、一人で美味いもんをたらふく食べてこい」


「おおっ! さすがボス、太っ腹だな! じゃあ、行ってくる!」


銀貨を引ったくるように受け取ると、ガウラは大はしゃぎで

飛び出していく。

疲れなど微塵も感じさせない、嵐のような忠犬を見送った。


八起は、ようやく簡素なベッドに横たわる。

静かになった部屋で目を閉じると、一気に深い眠りへと落ちていった。

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