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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第四章 ファンタジー世界を舐めてたおっさん――ドラゴンに続き勇者現る!? 肝冷えすぎてソッコー帰る!

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第二十六話 新たなる挑戦

高級商人を見送り、調理場には再び静けさが戻っていた。

だが八起の頭の中には、すでに次の一手が組み上がっていた。

マヨネーズの成功を起点とした、高速の事業計画である。


「よし、いい勢いがついてきたな。シオリ、ちょっと手伝え。

これから『いいこと』するぞ」


「は、はいぃっ!? おじ様と、ふたりきりで、

いいこと……ですかぁっ!?」


八起が突然放った不穏な言葉に、シオリの妄想の回路が

パチパチと音を立てて火花を散らす。


「ルナリアさん、ゼフェル。悪いが、俺たちが終わるまで

誰も調理場に入れないでくれ。気合を入れて集中したいんだ」


「え……。だ、誰も入れない、ですか?」


「はっ! 了解いたしました八起殿! お二人の神聖な儀式、

このゼフェルが命に代えても邪魔者を遮断いたします!」


ゼフェルが美しい顔をキリッと引き締め、調理場の外へ

ルナリアを促す。扉が重々しく閉まる中、残された側近たちの

間には、思い思いの複雑な空気が漂っていた。


(誰も来るな、だなんて……。シオリと二人きりで、一体何を……。

いえ、私は秘書官として、不適切な行いを監視する義務があります……っ!)


お肌がツヤツヤになったばかりのルナリアは、胸のざわつきを

抑えられず、扉の前に立ち尽くして静かにヤキモチを焼いていた。


そんな外の不穏な空気を置き去りにし、地下調理場では

おじさんとアラクネによる新たなる料理が始まっていた。


「シオリ、まずはこの(キョ)ジャガの皮を剥いて、

鉛筆くらいの太さで細長く切ってくれ。長さは均等にな」


「はいぃっ! お任せくださいぃ!」


シオリが指先を宙に踊らせると、彼女の指先から極細の蜘蛛の糸が

十数本、同時に伸びて空間を交差した。

まな板の上に置かれた(キョ)ジャガをめがけて、

その頑丈な糸が超高速で縦横に振り下ろされる。


シュシュシュシュシュッ!

風を切り裂くような鋭い音が響き、次の瞬間には、美しく

形を揃えられた細長い(キョ)ジャガが、調理台の上へと

一瞬で綺麗に積み上がっていた。


(相変わらず恐ろしい技だな……。もし俺が気合(マリョク)を忘れたら、一瞬で細切れにされそうだぜ)


包丁すら使わないその超絶技巧を前に、八起は内心で

冷や汗を流して恐怖する。


「よし、でかした。次はこれだ」


八起は、子供たちが魔改造圧搾機で一生懸命に搾り取ってくれた、

あの黄金色に輝く『純正黄金油』を特大の鉄鍋へと並々と注ぎ込んだ。


竈に薪をくべ、火力を最大にする。しばらくして油から微かに

煙が立ち上り、温度が上がったのを確認すると、

八起は細切りの(キョ)ジャガを一つ、油の中へと落とした。


シュワァァァッ!

美しい音と共に、白い泡が弾ける。それを見た八起の目が、職人のそれに変わる。


「よし、温度はバッチリだ。残りの(キョ)ジャガも一気に投入するぞ!」


ザザーッ、と大量の(キョ)ジャガが油の中へ滑り込んでいく。

調理場を満たしていくのは、これまでの異世界には存在しなかった、

香ばしく油が爆ぜる魅惑の音。


八起は油の中で(キョ)ジャガがくっつかないよう、長箸で優しく、

しかし手際よくかき混ぜていく。

じっくりと火を通し、仕上げに火力を上げ、表面が綺麗な

きつね色に色づいた瞬間、一気にザルへと引き上げた。


カラカラ、と小気味よい音が響き、湯気と共に現れたのは、

表面がカリッと揚がった大量の『フライドポテト』だ。


「はわわわ……! おじ様、これ、もの凄く美味しそうな

匂いがしますぅ!」


「これが『揚げる』っていう調理法だ。熱いうちに塩を

パラパラと振って……よし、これを全部大食堂へ運ぶぞ、シオリ!」


二人は大盛りのポテトが入った大皿を抱え、期待に胸を膨らませて

大食堂へと移動した。


「ルナリアさん、みんなを呼んできてくれ! ガウラも、

テオとリナ、子供たちも全員だ!」


八起の声に、扉の外で悶々としていたルナリアはハッと我に返った。

調理場から漂ってきた、暴力的とも言える香ばしい油の匂いに、

彼女の胃袋はすでに白旗を上げていた。


「わ、分かりましたわ! すぐに!」


数分後。大食堂には、魔王城にいる側近二人、ガウラ、

テオとリナの兄妹、そしてお腹を空かせた孤児の子供たちが

一堂に会していた。


長いテーブルの中央には、山のように積まれた黄金色の

フライドポテト。その脇には、先ほど完成したばかりの

たらこマヨ、(とう)がらしマヨ、

メンタイ風マヨ、わさびマヨの

4大マヨソースが美しく並べられている。


「よし、みんな集まったな! 大豆の収穫とマヨネーズの

初出荷を祝して、今日は『フライドポテトパーティー』だ!

この熱々のポテトに、好きなマヨソースをたっぷりつけて

食ってみろ!」


八起の乾杯の音頭と共に、子供たちが一斉に歓声を上げて

ポテトへと手を伸ばした。


「いただきまーす!」


テオとリナがメンタイ風マヨをつけて口へ放り込む。

ガウラは唐辛子マヨをたっぷりと纏わせ、大きな口で一気に

数本を収穫した。


カリッ、ホクッ。


「んんんーっ! なにこれ、外側がサクサクで、

中は(キョ)ジャガがとろけるみたい!」


「うぅぅぅぅっ、辛いっ。

でもマヨネーズと、このアブラのコクが合わさって、

ボスの作るものは何でも旨い!」


子供たちが目を輝かせ、ガウラが尻尾をちぎれんばかりに

振り回して貪り食う。


「な、なんて贅沢な……! ただでさえ貴重で高級な油を、

おじさんはこんなに大量に使うなんて……!

ですが、このサクサクした食感と溢れる旨味は、

完全に罪悪感の味ですわ!」


ルナリアもわさびマヨのツンとした上品な辛みと、

ポテトの相性に感動している。

ゼフェルはたらこマヨをつけながら、

「油と魔調和の奇跡の具現化です!」とやはり涙ぐんでいた。


賑やかな笑顔と、「美味しい!」の声が大食堂を優しく

包み込んでいく。子供たちの手が油で光り、側近たちの

頬が美味さで緩んでいく。


その光景を、八起は自分の分のポテトを齧りながら、

目を細めて眺めていた。


おじさんの作った優しいインフラと新しい美食が、

魔王城の絆をさらに深く、強固に結びつけていく。

経済の立て直しに、確かな手応えを掴んだ夜だった。


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