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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第三章 現代知識はチート級! 決戦の場は策謀で――おっさん策士は旨み産む

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第二十四話 マヨネーズと乙女

「これでようやく、マヨネーズの本格的な量産体制に入れるな」


黄金の大豆から抽出した『純正黄金油』を樽に詰めながら、

八起は満足げに呟いた。


調味料の王様、マヨネーズの量産に向けた準備は着実に整いつつあった。

主原料の油が確保できた今、残る問題は「卵」と「酢」である。


だが、それらも魔改造インフラの敵ではなかった。


まず卵だが、これは城の周辺を荒らす害鳥のデカい卵を使うことにした。


「ボス、今日の分の卵を取ってきたぞ!」


ガウラが散歩がてらに森へ出かけ、

ダチョウ並みに巨大で濃厚な卵を毎日ゴロゴロと抱えて帰ってくるのだ。


もう一つの要である「酢」は、城の地下ワイン庫で

完全に酸化して酸っぱくなった古いワインから抽出に成功した。

いわゆる、極上のワインビネガーである。


さらに、今回の量産を技術的に支える偶然の大発見があった。


それは、八起がこの異世界に全裸で転移してきた直後、

玉座でとっさに股間を隠すために使った、あのいわくつきの壺だった。


能力鑑定で調べ直したところ、あの壺は「中に入れた液体を、

一定の魔力を与えることで無限に増やし続ける」という

とんでもない隠し性能を持っていたのだ。


(あの時はただの調度品だと思ってたが……まさか、

酢を無限に増やすための魔法具(デバイス)だったとはな)


世が世なら国宝級のアイテムを「マヨネーズ専用の酢製造タンク」として

あっさり実戦投入。


今後の魔王国の経済を頭の中で計算しつつ、八起は一仕事終えて

自分の拠点であるガラクタ部屋へ帰ってきた。


「ふう、ひとまずこれでインフラは落ち着いたか……ん?」


部屋のドアを開けた瞬間、八起の鼻腔を微かに甘く、

どこか気品のあるとても良い香りがかすめた。


オイルや土の臭いが染みついたむさ苦しいガラクタ部屋には、

およそ似つかわしくない、洗練された花のような芳香だ。


「どこからだ……?」


八起は耳の鉛筆を抜き、香りの元を探して隅のガラクタの山をひっくり返した。


古ぼけた塊や出所不明の魔導具の破片をかき分けると、山の一番奥から、

淡い桜色に優しく発光する不思議な鉱石が一つ、転がり出てきた。


手にとって能力鑑定を試みる。


芳香美肌石ビューティー・クォーツ魔力を通すことで、

肌を劇的に若返らせる高純度の美容エキスと至高の香りを分泌する希少な鉱石』


「美肌石、ねえ……。おいおい、こんなところにとんでもないお宝が

眠ってたもんだな」


その瞬間、おじさんの脳裏に秘書官ルナリアの顔が浮かんだ。


最初の試作マヨネーズを作る際、彼女は自室に隠し持っていた

貴重な高級美容オイルを、泣きながら分けてくれたのだ。


しかも、さっき大豆の乾燥魔法を頼んだ時、彼女は何故か不機嫌だった。

ゼフェルとばかり話していたのが気に入らなかったのか、棘のある態度だった。


(あの時は随分と悪いことをしちまったし、今日もなんか怒らせちまったからな。

……よし、これを使って、あいつにちょっとしたプレゼントでも作ってやるか)


おじさんの職人気質と、「受けた恩は必ず返す」という

何でも屋としての義理堅さが同時に火を噴いた。


八起はすぐに、自ら改造した多機能調理錬金釜の前に立った。


釜の内部に先ほど見つけた不思議な鉱石をセットし、

大豆から抽出したばかりの純正黄金油をたっぷりと注ぎ込んだ。


さらに、元の世界の知識にある「ハチミツの成分」や

「アロエに似た保湿効果のある薬草」など、倉庫の美肌素材を次々と放り込む。


「よし、気合を入れて……一気に混ぜ合わせるぞ!」


八起が釜の取手を握り、自覚なき膨大な魔力を『気合』として一気に流し込んだ。


ゴゴゴゴ、と錬金釜が激しく振動し、黄金の油と美肌石のエキスが、

八起の規格外の魔力によって原子レベルで超高速攪拌されていく。


数分後。

キィンと美しい音が響いて釜が止まった。


爆発的な甘く美しい香りが広がり、中からは

真珠のように上品にきらめく純白の液体が完成していた。


異世界初、そして魔王国の最高技術が結集した『超高級美容液』の誕生である。


「よし、出来栄えはバッチリだな」


八起はそれを綺麗なガラスの小瓶へと丁寧に小分けした。

その足で、ルナリアのいる執務室へと向かう。


そこでは彼女が相変わらず不機嫌そうな顔で、

山積みの書類をバサバサと冷徹に処理していた。


「ルナリアさん、ちょっといいか?」


「何でしょうか、おじさん。私は今、ゼフェル様のように『古代の叡智』を

語る暇などありません。非常に忙しいのだけど……」


あからさまにツンツンとした態度で、ルナリアは視線すら合わせようとしない。


「いや、これ。最初の試作の時にさ、大事な油を分けてくれたろ?

その時のお礼と、さっき魔法を手伝ってくれたお礼だ。受け取ってくれ」


八起は、真珠色に輝く美容液の小瓶を机の上にコト、と置いた。


「え……? これ、は……?」


ルナリアが驚いて手を止め、小瓶を見つめる。

蓋の隙間から漂う至高の甘い香りと、神秘的な輝き。


「乾燥魔法のおかげで、最高の黄金油が搾れたんだ。

それと、ガラクタから見つけた美肌石を組み合わせて、

お前さんのために特製の美容液を作ってみたんだよ。

いつも苦労かけてるしな」


白髪混じりの頭をポリポリと掻きながら、照れくさそうに笑う八起。


「わ、私の、ために……? おじさんが自ら、調合を……?」


ルナリアのツンとした仮面が、一瞬で崩壊した。

彼女の頬は、大豆のサヤよりも鮮やかな夕焼け色へと染まっていく。


ゼフェルへの嫉妬も、日頃の疲れも、おじさんのあまりにも

直球で優しいサプライズの前に、一瞬で消し飛んでしまった。


「あ、ありがたく、頂戴いたしますわ……っ!」


小瓶を両手で大事そうに胸に抱きしめ、蚊の鳴くような声で呟くルナリア。

その瞳は、完全に恋する乙女のそれに変わっていた。


マヨネーズの量産という経済インフラの裏側で、

おじさんの無自覚な女心への特効薬が、


またしても城のヒロインを深い沼へと沈めていくのだった。

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